堤防に付着するイガイなどを食べにやってきたチヌ(クロダイ)を、シンプルな仕掛けでエサを落として狙う、落とし込み釣りとヘチ釣り。独特な釣趣と、チヌの強烈な引きをダイレクトに楽しめることが魅力の人気の釣りです。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター大田徹)
チヌ(クロダイ)の落とし込み釣りとは?
チヌ釣りは人気が高く、様々な釣法が確立されていますが、その中でもタックル、仕掛け、エサが最もシンプルな釣法が、落とし込み釣りとヘチ釣りでしょう。

チヌは堤防に付着するイガイを好んで食べており、その他にイガイの層に潜んでいるカニやエビ、ゴカイ類を捕食しています。また、イガイの付着していない時期にもフジツボやカキなど堤防の護岸にはチヌのエサが豊富です。その捕食行動を最大限に生かした釣法が、落とし込み釣りとヘチ釣りになります。
落とし込み釣りとヘチ釣りの違い
どちらもガン玉と針を使用してエサを落とし込むスタイルは変わりませんが、一般的に目印を使用しアタリを取る釣法を落とし込み釣りといいます。目印を使うためアタリが取りやすいのが特徴で、ある程度の長さの目印を扱いやすいように長い竿を使用します。
目印に浮力がある分あまり底のタナを攻めるのには向いていませんが、上層でもチヌが釣れる時期や、オーバーハング型の堤防際にエサを滑り込ませて狙う「スライダー釣法」(詳細は後述)などに向いています。
ヘチ釣りの特徴
ヘチ釣りは短竿を使ってライン(ミチイト)の変化を見てアタリを取る釣法です。短竿を使うことで取り回しがよくなるほか、目印は付けないので上層から底層まで幅広く狙えます。
ただ、糸フケが出るような微妙なアタリを読み取るのにコツがいります。最近はシーバスロッドなどルアーロッドを使用したスタイルも流行の兆しを見せています。
前打ち釣りも似たスタイル
落とし込みよりも長い竿と、目印を使用しないスタイルの前打ち釣りも同じような釣り方になります。こちらはテトラ周りや堤防の少し沖にある沈み根などの障害物を探っていく場合に有効です。
落とし込みに最適な時期
落とし込み釣りの時期を四季ごとに解説していきます。
春からシーズンイン
基本的には深場から産卵期で浅場に差してくるチヌを狙うシーズンです。春は水温の変動も大きく、産卵前後でもチヌの活性が変わるため、それに応じて有効なエサやタナなども変わりやすくなります。状況に応じて最適な釣り方を探るのが楽しい季節ともいえるでしょう。
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夏は最盛期
夏は堤防にイガイが多く付着するため非常に狙いやすい時期となります。特に狙いやすい時期は6月~8月ごろ。お盆を過ぎて水温が高くなるとイガイが堤防から落ち始めるほか、大雨などの水質変化によって落ちることもあるので、状況に応じてイガイエサが有効なのかを判断するのが夏の攻略のコツとなります。
秋はタナが浮く
秋も活性が高く狙い目の時期です。9月頃には堤防に付着したイガイが少なくなってくるので、フジツボや牡蠣、カニなどをメインに捕食するようになり反応するエサが変わってきます。また、表層の水温が適水温になるのでタナが浮きやすいのも特徴で、澄み潮のときなどは捕食する姿が見えることもあります。秋が深まり表層の水温が下がってくると底狙いに推移していきます。
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冬は難易度が上がる
冬になり水温が下がり切るとチヌは水温の安定する深場に落ちてしまうほか、堤防に残っているチヌも活性が低いため狙いにくくなります。狙う場合にはポイント選びが鍵になり、温排水の影響があるポイントや、水深のあるポイントを狙うといいでしょう。またエサ選びも堤防に付着するエサが少なくなるので、匂いでアピールする虫エサやパイプ虫、動きでアピールするモエビなどが有効になる場面が多いです。
落とし込みに向いた時間帯
ラインや目印が見える日中に狙うのが基本となります。他魚と同じくマヅメ時や潮の動く時間帯で活性が上がるので、絡めて釣行するのがベストです。
とはいえチヌは夜行性で夜に警戒心が下がる魚なので、ケミホタルなどを道糸につけてアタリをわかりやすくし、夜釣りで狙うのもありです。
落とし込み釣りのタックルと仕掛け
竿はUガイドの落とし込み専用竿(3.6~4m)を使います。リールは専用のタイコリールで、ロッド捌きを優先してドラグ付きのものを使用する人が多いです。
仕掛け図(作図:TSURINEWSライター大田徹)ラインはナイロンライン2号程度を巻き、その先に目印仕掛け(市販品でOK。慣れてくると自作も)とハリス。ハリスは1~1.5号を使いましょう。針はチヌ針の2~4号で、オモリはガン玉かイトオモリを使用します。
ヘチ釣りのタックルと仕掛け
ヘチ釣りのタックルは、ヘチ専用竿(2.4~3.0m)に専用リール。落とし込みとヘチ釣りでは、ヘチ釣り用のほうがリールの径が若干大きいので注意しましょう。ラインは専用のものがナイロンライン、フロロカーボンライン、PEラインとさまざまな材質で発売されています。
使い勝手が変わるため好みで選ぶといいですが、大事なのは視認性のいい物を選ぶこと。釣り場や潮色、天候によっては見にくい色もあります。一般的には濃いオレンジが見やすいといわれています。また、道糸には極小サルカンでハリス1~2号を連結しましょう。
ルアーロッドの流用も可
近年ではルアーロッドにスピニングロッドを使用したヘチ釣りスタイルも流行中です。ルアーロッドはシーバスロッドやメバリングロッド、エギングロッドなどが使えますが、スタンダードなヘチ釣りのようにラインを出しながら釣るよりも、ハイシーズンの浅ダナで狙える時期に竿の長さを探るスタイルの方が向くので9ftぐらいあるロッドがオススメです。
スピニングリールは2500~3000番クラスを使用。ラインはPEラインを使用しますが、視認性を考慮して1.5~2号程度の太いものを使うとやりやすいでしょう。リーダーはフロロカーボンラインの2号程度で、その先の仕掛けはヘチ釣り同様、ガン玉とチヌ針になります。
このタックルでの利点は高性能なドラグが付いたスピニングリールを使うためやり取りが楽な点。また、投げて探ることも可能なので、少し離れた障害物周りも狙うことが出来ます。キューブ状の落とし込み専用ルアーも販売されており、シーバスゲームの合間に狙うなどの楽しみ方も面白いでしょう。
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その他の道具
その他のアイテムではタモが必要になります。腰に差すスタイルで小継ぎの物を使用し、柄の長さは釣り場の足場の高さに合わせて5~7mあれば安心でしょう。後はフィッシングベストにラインカッターやハサミ、ペンチ、ストリンガーなど、使用する小物類を忍ばせておけばOKです。
ちなみに私は救命具にエアベストを使用しているので、小物類は落とし込みベルトにポーチを装着し、すべてそれに仕舞っています。
チヌの落とし込み釣りで使うエサ
落とし込み釣りでのエサは、堤防に何が付着しているかを確認してチヌが食べているものに合わせたエサを選択するのが重要になります。ここでは落とし込み釣りで使う主なエサを紹介していきます。
貝類(イガイ、ミジ貝)
夏の定番エサのイガイをはじめ、イガイが堤防からいなくなる時期にも採取可能なミジ貝(ヒバリガイ)やミドリイガイ、サクラガイなども使用されます。特に堤防に貝類が多く付着している時期はメインで使用してみましょう。
イガイの付け方(提供:TSURINEWSライター大田徹)付け方は画像のように外側の繊維部分に縫うように刺す足糸掛けをよく使いますが、蝶番へのチョン掛けや、貝の中へ針を通す通し刺しなどもあります。
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カニ
岸壁に普段から生息している小型のカニはオールシーズン使えるエサで、夏にイガイで食い渋る時にも有効です。
カニの付け方(提供:TSURINEWSライター伴野慶幸)付け方は足の付け根部分から針を入れて、甲羅にハリ先を出す方法や、お腹から甲羅に出す「尻掛け」が一般的です。
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フジツボ
時期によってはメインのエサになっていることも多く、特に秋~春にチヌが上層に浮いて捕食している時は効力を発揮します。付け方は口の部分から刺して、胴の部分に針先を抜きます。
上層に付着するフジツボメインの状況もよくある(提供:TSURINEWSライター大田徹)パイプ虫
パイプ虫とはゴカイ類の仲間で、パイプ状の殻を形成して堤防に付着して生活しています。このパイプ虫が多く付着している状況ではこのエサばかりアタるというケースも多く、逆に付着が少ない場合は反応が薄いこともあります。特に冬~春に有効なことが多いエサです。
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フナムシ
釣り場にほぼ必ずいるフナムシも実はチヌが好むエサで、食い渋り時に好反応を見せる場合があります。虫取り網があれば簡単に捕まえられるので採取もしやすいです。
イソメ類
アオイソメやイワイソメ(マムシ)、アオイソメなどの虫エサは低水温期などの堤防に付着したエサが少ない時期や、イガイが落ちるタイミングなどの堤防に付着しているエサが変わる時期の特餌になります。チヌ以外の魚の反応がいいのが短所でエサ取りが多い状況では向きませんが、スズキや根魚などのゲストも含めて五目釣りを楽しむのも一つの手です。
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モエビ
生きたモエビもチヌには有効なエサで、虫エサと同じようなタイミングで使用するケースが多いです。こちらもゲストの反応がいい餌となります。
状況に応じたエサの使い分けも釣果に繋がる(提供:TSURINEWSライター大田徹)採取する際の注意
タモ網の柄に付ける、イガイ採り器という専用の道具を使い、貝類や、パイプ虫などは釣り場で採取できます。カニやフナムシ、フジツボも採取可能です。
事前に釣り場以外の場所で採集しておくと楽(提供:TSURINEWSライター大田徹)ただ、釣り場によっては採取が禁止されている場合もあるので、その際は別の釣り場で事前に採取しましょう。また、取り過ぎは環境保全の観点からもNG。場荒れにも繋がるのでやめましょう。
チヌの落とし込み釣りの場所選び
タックル、エサの準備ができれば次は釣り場の選択です。前述のように岸壁にエサが豊富な堤防が特に狙い目になります。
また、魚影も濃く、渡船店のHPなどでリアルタイムに釣果情報やエサの情報が得られる、沖堤防も定番です。
釣り方とテクニック
続いて釣り方を解説します。釣り場の形状によって様々な落とし方、狙い方があるので堤防形状ごとに説明していきます。
垂直ケーソン型堤防の釣り方
特段変化のない垂直型の堤防での釣り方はいたってシンプルで、エサを堤防際すれすれにそっと着水させて、1~2ヒロまで際をキープしながらエサを落とし込むだけです。シンプルではありますが、潮の流れ、風、波気によってはなかなか思い通りにエサを落とし込むことができないもので、数多く落とし込んで慣れる必要があります。
チヌが隠れやすい変化のある堤防が好ポイント(提供:TSURINEWSライター大田徹)エサを際ギリギリにそっと着水させる動作を容易にするため、最初は重めのガン玉(3Bくらい)を装着し、竿先でエサを自在にコントロールできるようにしましょう。
「自然なエサの落下」が基本ですが、時には自然な落下スピードよりもっとスローに、またエサの着水から数十cmでステイ→落下→ステイ→落下を半ヒロ毎に繰り返す、自然ではあり得ない落とし方が有効な時もあるので試してみてください。釣行時の状況によって集中してアタるタナが分かれば、一気にそのタナまで落とし込んで数秒ステイさせるのも有効です。
オーバーハングの釣り方
少しテクニカルなポイントであるオーバーハングの場合は、イガイがエサの夏に目印仕掛けの落とし込みで「スライダー釣法」を用いるのが効果的です。オーバーハングとは実際に見えている壁より水中では数十cm奧に壁が存在している場所のこと。見えている壁沿いにエサを落とし込んでも水中では壁よりかなり離れて落下しているので、チヌは警戒してまず釣れることはありません。
オーバーハングのポイント例(作図:TSURINEWSライター大田徹)そこで針にイトオモリを数回巻き付け(内オモリ)セットし、イガイに差し込みます。そしてイガイをそっと着水させ、目印仕掛けを堤防際に対して直角に若干張り気味にすることで、イガイに抵抗を加えてオーバーハングのアゴ下の壁へ、スライドさせて落とし込んでいきます。
壁へスライドしていたとしても、その角度も重要。できるだけ上層で鋭くスライドさせないと、アゴ直下に浮いて捕食行動をしているチヌを通り過ぎてしまっては釣れません。なかなか慣れないと難しい落とし方ですが、これをある程度マスターできれば盛夏の釣果が劇的にアップします。
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スリットケーソンの釣り方
関西に多いスリットケーソンは形状が複雑なために居付くチヌが多く、大型もかなり期待できるポイントとなります。柱周りやスリットの中、イガイの付着する所全てが狙い目です。
大阪湾に多いスリットケーソン型はチヌの宝庫(提供:TSURINEWSライター大田徹)特に柱周りは常に波が出入りして酸素量も豊富な上、柱と柱の間は影になる時間帯も多く、潮が澄んでいる時はチヌが潜んでいるのも度々確認できるでしょう。
ここは柱周りを外側、内側から狙っていきます。落とし方は形状が複雑ですが「壁」にはかわりないので、垂直ケーソンと同じように落としていきます。ただ波の出入りやスリットの柱間から風が吹き込んでくるので、ここでも最初は重めのガン玉を装着し、エサが壁際から離れないようにしましょう。
アタリの取り方
チヌの食い方によってアタリも様々で、目印、ラインが落下中に止まったり、引き込まれたり、手元にガツンと伝わってきたりと、本当にいろいろなアタリ方があります。アタリの出ていない時の目印、ラインの落下状況とは少しでも違う変化があれば、とりあえずアワせてみるのがコツです。
取り込みのコツ
チヌを掛けたら垂直ケーソンなら慌てずじっくりと浮かせて取り込むことが可能ですが、構造が複雑なスリットケーソンなどの堤防では先手を取られるとラインブレイクにつながるので油断は禁物。タックルも、竿は硬調タイプの物がいいし、ライン、ハリスも垂直ケーソンよりはワンランク太めの物を使用しましょう。
チヌ(クロダイ)落とし込み釣りのまとめ
シンプルな釣趣ながらアタリの取り方やエサの選択など奥の深い落とし込みで釣り。何度も釣行を重ねて様々な状況下を体験することによって釣果も得られるようになります。身近な堤防で数、型ともに楽しめるチヌ釣りをぜひ体験してみましょう。
身近なポイントでこんな大物に出会えるかも?(提供:TSURINEWSライター大田徹)ボートでのクロダイ落とし込み釣り解説 陸っぱりとの違いはキャスト?
<大田徹/TSURINEWS編>
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