沖縄では、秋になると「フーヌイユ」という魚が各地で漁獲されています。「福を呼ぶ魚」と呼ばれるこの魚は実は本州でもしばしば見かけるものです。
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沖縄で「フーヌイユ」の干物作り
沖縄本島の最北部に位置する沖縄県国頭村(くにがみそん)。ここでは「フーヌイユ」という魚の干物作りが「秋の風物詩」となっています。
今年も10月8日より、同村の宜名真地区でフーヌイユの干物作りが始まり、話題となっています。フーヌイユは切り身にされたあと強めに塩をされ、2、3日かけて干し上げられます。大きなものでは1m近くなるフーヌイユの切り身が青空の下いくつもぶら下げられている様子はとてもダイナミックに見えます。

フーヌイユはおもに釣りで獲られていますが、フーヌイユ釣りと干物作りは地域で300年以上も続く伝統漁・行事となっているそうです。例年だとこの時期は「フーヌイユ祭り」というイベントも開催されるそうですが、ここ2年は新型コロナの影響で残念ながら中止に。それでも10月の声を聞くと漁師たちは次々漁に出て、この伝統を守ることを選んだそうです。(『秋空に「幸福を呼ぶ魚」 この時期しかない貴重な「フーヌイユ」の天日干し最盛期』琉球新報 2021.11.7)
「幸福を呼ぶ魚」フーヌイユ
このフーヌイユ、標準和名は「シイラ」と呼ばれています。温暖な海の魚で、本州では「黒潮の申し子」などと呼ばれることも。近年海洋温暖化の影響もあり、徐々に全国で姿を見られるようになってきました。

全国的には高水温期の魚ですが、沖縄では秋から冬にかけて漁獲の最盛期を迎えます。大型魚で可食部も多く、県下では古くから食用魚として人気があります。
また、「フーヌイユ」は漢字で「富の魚」と書くそうです。
人気イマイチの理由
シイラは沖縄だけではなく、太平洋各地の諸地域で人気の高い食材となっています。とくに有名なのがハワイ島で、当地で「マヒマヒ」と呼ばれ高級白身魚として扱われています。
一方で我が国においては、沖縄以外では食用魚としての人気はいまいちと言わざるを得ません。実はシイラは大きく成長する魚ではあるのですが、白身魚なのに鮮度落ちが早く、加えて体表に食中毒原因菌を持っているために生食があまり推奨されていません。これが、魚の生食を尊ぶ我が国であまり人気が出ない理由となっているかと思われます。

また、シイラには漂流物について回遊する習性があり、ときには水死体についているようなこともあるといいます。そのことから「シビトクライ」などと呼ぶ地域もあり、これも食材として人気の出ない理由の一つかもしれません。
ただしイメージはともかく、公平に見て味は良い魚で、新鮮なものを加熱して食べればなかなか乙なものです。1匹から取れる身も多く、今後日本近海の海洋温暖化が進んでいく中で漁獲量が増えることを考えれば、食用としてとても有望なものだと思います。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>
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