関東エリアにおいて伊豆半島は大人気釣りフィールドだ。数々の釣りポイントが存在するが、大規模かつ家族連れでも利用しやすいということで人気を博しているのが「田子漁港」だ。

この漁港で最近釣り人と船舶のトラブルが発生。釣り禁止の危機にあるという。管理者である西伊豆町と船舶の船長さんに直接話を聞きました。

※本記事は2022.6.24時点の取材内容を元に作成されました

(アイキャッチ画像提供:TSURINEWS編集部・小菊)

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田子漁港

田子漁港西伊豆エリアにある大規模な漁港で、夏場には青物が回遊することもあり、人気の釣り場だ。足場もよく、車も近くに停められることから、ファミリーフィッシングで訪れる人も多い。さらに、都心から3時間程度とアクセスもよく、県外から訪れる釣り人も非常に多い有名ポイントだ。

【田子漁港が釣り禁止】の危機 船舶と釣人の間で金銭含むトラブル発生
風光明媚な西伊豆町の風景(提供:TSURINEWS編集部・小菊)

周りに風光明媚な観光スポットやキャンプ場などもあり、「観光+釣り」プランのちょい釣りで利用するにもおすすめの場所だ。そんな田子漁港で先週、釣り人と船舶のトラブルが発生し、釣り禁止の危機に瀕しているとのニュースが飛び込んできた。

【田子漁港が釣り禁止】の危機 船舶と釣人の間で金銭含むトラブル発生
田子漁港の釣り光景(提供:TSURINEWS編集部・小菊)


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船舶と釣り人の間でトラブル

トラブルに巻き込まれた「福由丸」(ダイビング/渡船)で舵を握っていた岡部船長に直接話を伺うことが出来た。

どんなトラブルだったのか?

お客さんを迎えに田子漁港を出船。滞りなくお客さんを乗せて再び田子漁港に戻ってきたところ、釣り人(5人程度のグループの内の1人)から「釣りの仕掛けを船に巻き込まれ、タックル一式(竿・リール含む)が海に沈んでしまった」と、声をかけられました。どうやら、遠投カゴ釣りのウキ仕掛けを船でひっかけてしまったようです。

船舶航行時のルールは?

通常は、船舶が航行してきた場合、釣り人が仕掛けを回収するのが暗黙のルールです。その旨をお伝えしたところ、「釣り座から離れていたので回収できなかった」とのことでした。さらに、その釣り人が釣りをしていた場所は立ち入り禁止エリアだったのでその旨指摘しましたが、謝罪はありませんでした。

その後の経緯は?

弁償して欲しいのか聞いたところ、「そういうわけではないが、一部負担して欲しい」とのことでした。金額を聞いたところ「総額で約20万円」との回答でした。正直、私もイライラしており、売り言葉に買い言葉の勢いで、半額の10万円を払うからもう帰って欲しい旨を伝えました。お金を準備して、該当釣り人がいる岸壁に行くと、すでに釣り道具の片付けは終わっていました。お金を渡すと、「ありがとうございます」とお礼を言って帰って行きました。

事後報告はどちらに?

漁師さんの船に同じことがあっては困ると思い、まず漁協へ連絡を行いました。そのタイミングでは、漁協としては一定期間釣り禁止を希望するという意向を持って西伊豆町に相談をするようでした。ただ、漁港全体を釣り禁止にするのは複雑な手続きが必要で簡単なことではないとも聞きました。また、地元のダイビングサービス仲間に話したところ、一部金銭の負担をしてくれました。

普段はどのような注意を?

普段は船上から目視できたウキは避けるように航行していますが、逆光の影響や、複数のウキがバラバラの距離に浮いていたため、今回は全てのウキを目視しきれずに巻き込んでしまったのだと思います。

率直な感想は?

ここ数年の間に行った「関係者以外立ち入り制限」などの締め付けの影響で、ここ最近釣り人のマナーが向上してきていると感じていました。そんな中での今回のトラブルなので、とても残念です。釣り人が西伊豆町に来てくれるおかげで、少なからず観光収入が町に入ってきます。そのような視点からも、釣り人を町から排除したいという気持ちはありません。期間やエリアなどなにかしらの制限付きで釣り禁止措置を行い、改めて釣り人にマナーへの意識を高めてもらうのが良いかもしれません。

【田子漁港が釣り禁止】の危機 船舶と釣人の間で金銭含むトラブル発生
田子漁港の沖堤防での釣果(提供:週刊つりニュース関東版 石坂衣里)

西伊豆町の担当者へ取材

船長の話では、今回のトラブルの対策SNSなどでは「すでに釣り禁止になった」との情報が流れている。真偽を確かめるために、西伊豆町農林水産係の石川さんに電話取材を行った。

釣り禁止になった?

現在(2022.6.24取材時)、田子漁港は釣り禁止ではありません。

今トラブルへの対処は?

トラブルがあったことは把握しています。現在、漁協とも話し合いを行い、今後の対応を検討している段階になります。

いつ頃対応が決定する?

6月いっぱいを目標にしています。

釣り禁止になる可能性は?

可能性はゼロではありません。田子漁港は漁業のための施設である一方、西伊豆町は釣りを観光資源としても積極的に捉えています。漁協とのすり合わせを行いつつ、慎重に検討します。

決定内容の告知は?

現地で周知を徹底するのがベストかもしれませんが、人手の問題もあり、なかなかできません。西伊豆町の公式HPへの掲載や現地への看板設置を想定しています。

SNS情報拡散については?

確定していない情報が誤って拡散されてしまうリスクはありますが、今回のトラブルでもマナーへの意識を高めるようなコメントを複数拝見しました。そういった視点でも、西伊豆町の釣りに関する情報がSNSに投稿されることは決して悪いことではないと捉えています。

「釣り禁止」ではない

船長、西伊豆町担当者の話をまとめると、現時点(2022.6.24)では【田子漁港は釣り禁止ではない】ということだ。ただ、漁協と西伊豆町で今トラブルについての対応策を現在検討中であり、6月中に内容を固める予定とのこと。その内容次第で【今後釣り禁止になる可能性もある】のだ。

取材して感じたこと

今回、両者への取材を行って感じたことがある。それは、西伊豆町は釣り/釣り人にとても寛容だということ。「可能な限り全面的な釣り禁止にはしないで、今後の再発防止につなげていきたい」、これが両者に共通するスタンスだろう。行政が釣りを観光資源として捉えている点も大きいが、釣り物や釣りのスタイル関係なく、昔から変わらず誰もの身近な趣味として釣りが認識/存在しているエリアだからなのかもしれない。

【田子漁港が釣り禁止】の危機 船舶と釣人の間で金銭含むトラブル発生
田子漁港で釣れたカサゴ(提供:週間つりニュース関東版 神奈川・野地文雄)

取材協力

今記事は下記の方々にご協力をいただき、作成されました。

・「福由丸
・西伊豆町農林水産係
・twitterアカウント「坊主上等」さん


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<小菊/TSURINEWS編集部>

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