ここのところ、とくに釣り人たちの間で「マゴチは血抜きをしないほうがうまい」という説に注目が集まっています。筆者も確かめてみました。

(アイキャッチ画像提供:茸本朗)

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マゴチは血抜きをするべきでない?

夏が旬の魚で、淡白かつ上品な味わいが身上の高級魚・マゴチ。暑くなるほど美味しくなると言われ、旬を表す「照りゴチ」という言葉もあるほどです。

そんなマゴチについて、最近釣り人たちの間では「血抜きの必要性」に付いての議論が盛んが行われています。というのも、釣宿などで「マゴチは血が美味しく、血抜きはしないほうが良い」ということが言われるようになっているようなのです。

マゴチは血抜きしない方が旨い説 魚の血液は旨味か臭みか?
大型のマゴチ(提供:茸本朗)

ここ数年、魚の血抜きは「大ブーム」といえる状況。専門の器具なども市販され、レベルの高い血抜き技術に注目が集まっているなか、ある意味で「一石を投じる」論議になっているように思えます。

実際に試してみた

実際のところどうなのか、筆者も大変気になったので試してみることにしました。

我が家の近所には、マゴチ釣りの聖地ともいわれる「東扇島西公園」があります。そこで活けのマゴチをゲットしようと向かったところ、到着した瞬間に隣のルアーマンの方がヒットさせ、しかもそれをくださるという僥倖に恵まれました。ありがとうございます。

パンパンに太った50cmオーバーのマゴチ、いつものように血抜きしたくなる思いを抑えてクーラーボックスの中の水氷につけ、氷締めにします。血抜きしたものと同様、2日ほど寝かしてから調理してみました。

マゴチは血抜きしない方が旨い説 魚の血液は旨味か臭みか?
血が滲んでいる(提供:茸本朗)

3枚におろしてみると、身の中に走る毛細血管が目立ちます。見た目だけでなく断面にも血が滲み、包丁に付着してしまうので、こまめに拭きとりながら造っていきます。

そして試食してみると……正直なところ大きな違いはないと思いますが、やはり多少「血の味」を感じます。身の旨味はしっかりとしていてとても美味なのですが、これが血を残したために出た旨味なのかどうかについては、確信を得ることはできませんでした。

魚好きなら血抜きあり・なしのどちらでも美味しく感じられるだろうと思います。ただ、魚の生臭さに敏感な人に食べさせるならやはり血抜きはした方が良いのではないか、というのが個人的な感想です。

魚も「血と旨味」は関連するのか

さて、我が国では魚も肉も、基本的に血抜きはしっかりと行います。しかし、肉食の歴史が長い西欧諸国では血もまた「肉の旨味」のひとつとして扱われ、血を抜いてしまうなんてもったいないと言われることもしばしばあります。

例えばフランスで鶏肉料理を食べると、血の鉄っぽい風味や、加熱された血液の独特な色合いを感じることが多いのですが、これは血を抜かず肉の中に溜めたまま熟成させることが多いためです。

一方、魚の血については、そのような扱いをされることはあまり多くはないようです。というのも、魚の血にはジメチルアミンという成分が多く含まれており、これが生臭み成分であるトリメチルアミンのもととなるため、敬遠されてしまうのです。

マゴチは血抜きしない方が旨い説 魚の血液は旨味か臭みか?
血を多く含む部位はすぐに生臭くなる(提供:茸本朗)

このことを踏まえても、個人的にはやはり魚の血は基本的に抜くべきものであると思うのですが、一方でカツオの血合いなどのように「血の多い部分ならではの旨味」を感じることもあるので断言することはできないとも感じます。

どこかの研究機関で、魚の血と旨味の関係についての科学的な分析が行われると良いなと思うのですが、研究者の皆様いかがでしょうか。

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<脇本 哲朗/サカナ研究所>

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