温暖化や汚染など様々な問題が起こっている世界の海。その中でいま最も注目されているトピックの一つが「海洋酸性化」です。
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宮城で「海洋酸性化」の調査
宮城県北に位置し、カキやホタテなど貝類の養殖が盛んな南三陸町。ここでいま「海洋酸性化」に関する調査が実施されています。

同町では2020年より、町内最大の湾である志津川湾にあるカキの養殖場や、湾に注ぐ河口付近など5つの箇所で、海水のpHのモニタリング調査を始めています。pHは液体の酸性・アルカリ性の度合い(水素イオンの濃度の大小)を示す数値で、7が中性、それより小さければ酸性、大きければアルカリ性となります。
調査の結果、志津川湾の多くの場所では、平均的な海水のpH数である8前後(弱アルカリ性)を示しましたが、8を切るような数値の場所もありました。最低ではpH7.6とかなり低い数値を示したところもあり、酸性化が進んだことを示しています。
海洋酸性化とは
上記の通り、海水はもともと弱アルカリ性を示します。そのため海水は二酸化炭素を溶かしやすい性質があり、海面では大気中の二酸化炭素が反応して海に溶け込み続けています。

このこと自体は通常の現象なのですが、近年、大気中の二酸化炭素量が増えていく中で、海洋が吸収する二酸化炭素量が増えていく傾向にあります。二酸化炭素が溶け込んだ水(炭酸水など)は酸性を示します。これにより、海水が酸性化していってしまっているのです。これを海洋酸性化と呼んでいます。
海洋酸性化の危険性
海水中には様々な物質が溶け込んでいますが、その中には海の生物にとって非常に重要な「カルシウムイオン」と「炭酸イオン」が大量に含まれています。
サンゴや貝、ウニなど硬い殻を持つ生物は、この二つのイオンを結合させた「炭酸カルシウム」という物質で、自分の骨格や殻をつくりだしています。我々ヒトは骨格を構築するためのカルシウムを食べ物から摂取していますが、海洋生物は海水から取り込んでいるわけです。

サンゴや貝に影響
しかし海水の酸性化が進むと、カルシウムイオンが二酸化炭素とも結びついてしまうため、炭酸カルシウムが作りにくくなります。そのためこれを利用する生物が成長しにくくなり、更に酸性化の程度が進むと殻が海水に溶けてしまって生育することすらできなくなってしまいます。
したがって、今後海洋酸性化の程度がよりひどいものとなれば、サンゴや貝などの多くの種が減少、絶滅に追い込まれてしまう可能性もあるのです。
我々は、二酸化炭素排出量の増加によって地球温暖化や異常気象が引き起こされるなど「陸上でおこる異変」については理解するようになってきています。しかし海中でもまた危険な出来事が起き始めているということを知っておかねばならないでしょう。
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<脇本 哲朗/サカナ研究所>
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