暑い季節がやって来た。毎年この時期になると、人々は寒かった季節から解放されたように、室内から屋外へ活動の場を広げる。

いろいろ新しいレジャーがあるなか、身近で手ごろな遊びとしてサーフからのキス釣りがある。今回執筆依頼をいただいたが、私もまだまだ未熟で教えられる立場ではないように感じているが、私の経験や知識の話すことで、読んでいただいた人のステップアップにつながればと思う。

(アイキャッチ画像提供:週刊つりニュース中部版 横山准司)

サーフでの投げシロギス釣りにおける【遠投するための投げ方・タ...の画像はこちら >>

投げキス釣りが盛期突入

今回のテーマは、キス釣りをする上で、遠投力を身に付けるためには何をしたらよいのかということだ。単純に遠投力ということであれば、まず体力の強化が必要だ。腕力、足腰を鍛え、背筋力と体の捻転を使い、道具の性能を最大限に生かし、オモリを遠くへ飛ばせばいい。しかるに体力強化が最重要課題だ。

このように考えると、体が大きく力のある人にしかできないと思うだろう。しかし、それはスポーツキャスティング競技の世界であって、実釣とは少し考え方が違う。

では遠投とは、どの程度の距離を目標に考えればよいのだろうか。私の経験から、思うにシーズンを通してどれくらいの遠投でキスを釣っているか。私の経験から過去を振り返ってみると、キスを遠投で釣る機会はすこぶる少ない。年間を通して、メーカーの大会も含めてもせいぜい7色(1色は25m)の範囲だ。

普段の釣行では、ほとんど6色から手前で良い釣果を上げているのが実情なのだ。

遠投は体力の低下を招くとともに時間ロスが多くなり、結果的に釣果を落とす要因になることが多い。8色、9色投げる人は多くいるが、本気で投げる人はあまり見かけない。そこで超遠投はさておき、6~7色の壁を意識した遠投について説明したい。

サーフでの投げシロギス釣りにおける【遠投するための投げ方・タックル・仕掛け】
サーフでの投げシロギス釣りにおける【遠投するための投げ方・タックル・仕掛け】
サーフでのフルキャストは豪快そのもの(提供:週刊つりニュース中部版 横山准司)

キャスティングには、いろいろなスタイルがある。ある程度の体力は必要だが、そのスタイルで飛距離を左右することは確かだ。オーバースロー、スリークォーター、V字、回転、スイング、独自の投法など。実釣に適したスタイルを考えた場合、初心者はオーバースロー、上達すると飛距離を意識してスリークォーターやV字、回転投法が主流になる。ある程度遠投ができるようになるには、V字投法や回転投法をマスターすることを目指すのが良いだろう。

道具としてのサオの選択は非常に重要だ。反発力の強いサオを選択することが必要となるので、硬めのサオを使用する必要がある。ただし、さらに距離を追求した場合、サオだけでは十分なアイテムとは言いがたい。

ミチイトの太さやオモリの重さ、テンビンの形状、仕掛けの長さ、リールのスプール形状などが重要な要素となる。

では具体的にどのようなことを意識して取り組むのが良いのか、説明したい。

スタイルに関して

オモリを遠くへ飛ばすためには、遠心力、サオの反発力、物理の法則などを利用して飛ばす。実釣を意識した投げ方としては、前述の3種類が基本となる。V字と回転投法は人によって甲乙つけがたいが、この2つのスタイルをマスターするのが良いだろう。

だが回転投法はある程度広いフィールドが必要になるため、近くに人がいる場合は危険を伴う。周囲への安全性を考慮した場合、比較的狭い範囲でキャストすることができるV字投法が理想的な投法だろう。

サーフでの投げシロギス釣りにおける【遠投するための投げ方・タックル・仕掛け】
サーフでの投げシロギス釣りにおける【遠投するための投げ方・タックル・仕掛け】
ポイントを探り当てれば多点掛けも(提供:週刊つりニュース中部版 横山准司)

キャスト時の力の入れ具合は、7~8割程度が理想。力み過ぎはリリースのタイミングや体の向きがコントロールできなくなって毎投不安定になり、危険性が増す。力任せに振るのではなく、何よりもコントロールできる所へキャストしよう。

リリース角度は物理の法則的に言えば45度だが、それはあくまで平坦な場所でのこと。傾斜がある砂浜ではその分を意識した角度が必要だ。水平線で見て45度なので、前傾姿勢になりやすい砂浜では、リリースポイントもその都度変える必要がある。

オモリの垂らしは、一般的に2番目と3番目のサオの接続部~リールまでの長さが一般的。

垂らしが短すぎると、早めにサオへのモーメントが働き、肩とひじが負荷に負ける。垂らしが長い場合、サオへ遠心力とオモリの負荷が伝わるのが遅くなり、リリースのタイミングが遅れる。

サオについて

飛距離を出すためには、反発力の高いサオを使用する。オモリ負荷が高いサオほど反発力は大きい。7色を意識するのであれば、オモリ負荷33号以上を使おう。

サーフでの投げシロギス釣りにおける【遠投するための投げ方・タックル・仕掛け】
サーフでの投げシロギス釣りにおける【遠投するための投げ方・タックル・仕掛け】
砂浜に付きさせるサオ掛けがあると便利(提供:週刊つりニュース中部版 横山准司)

長さは一般的に405cmが主流だが、それよりも短いサオも発売されており、短い分スイングスピードを速くすることができる。また空気抵抗が小さくなり、スイングスピードが上がり飛距離がアップする。

サオを曲げるには、等速運動的に負荷をかけて曲げるのではなく、瞬間的に力を加えて曲げることが大事。サオの反発力に慣れるまでは繰り返し練習し、そのサオの特性を知ることが大事だ。最初はあまり負荷をかけずにキャストを行い、慣れてきたら徐々にサオへの負荷をかけていこう。

リールについて

リールは大型のスピニングが主流。スプールの溝は浅く幅広く、またスプールの角度やエッジの角度も大事だ。

サーフでの投げシロギス釣りにおける【遠投するための投げ方・タックル・仕掛け】
サーフでの投げシロギス釣りにおける【遠投するための投げ方・タックル・仕掛け】
フィールドは広大なサーフ(提供:週刊つりニュース中部版 横山准司)

スプールの角度に関しては、イトの放出抵抗を考えた場合、角度のきついスプールほど、放出抵抗が軽減され飛距離アップにつながるが、その分放出時にイトがまとまって出てしまうトラブルも増加傾向にある。

ミチイトに関して

ミチイトの素材は、現在PEラインが主流だ。PEラインは細い繊維を編み込み、ブレイドというイトを形成しブレイド同士を編み込むことで形成している。

最近の主流は4本編みだが、8本編みのラインもある。表面が滑らかになるので、飛距離に対し多少なりとも有利なことは間違いない。

サーフでの投げシロギス釣りにおける【遠投するための投げ方・タックル・仕掛け】
サーフでの投げシロギス釣りにおける【遠投するための投げ方・タックル・仕掛け】
キスの行列にテンションアップ(提供:週刊つりニュース中部版 横山准司)

太さは0.8号、0.6号、0.5号、0.4号、0.3号、0.2号など。最近は0.6号が多いのではと思う。いざと言うときの遠投のために、細いミチイトを巻いたスプールを用意しておくと便利だ。

チカライトに関して

PEラインのミチイトが出てきたことで、チカライトも同様にPEラインの素材を使用したチカライトが出てきた。チカライトもメーカーによって長さが違ったり、太さが違ったりする。オモリ負荷に対する保険でもあるので、慎重に選択したい。

サーフでの投げシロギス釣りにおける【遠投するための投げ方・タックル・仕掛け】
サーフでの投げシロギス釣りにおける【遠投するための投げ方・タックル・仕掛け】
最近良型が目立つようになった(提供:週刊つりニュース中部版 横山准司)

チカライトは、サオの長さの2倍以上は必要とされる。遠投する場合、オモリも垂らす長さが必要になるので、その分を考慮すると10mほどあれば十分だろう。市販されているのは10m以上あるので、長さとしては特に問題ない。

購入時は、使用するミチイトの太さに近いテーパーラインを選ぶと、結び目を小さくできてトップガイドへの負荷も軽減できる。オモリ側の太さは6号は必要で、細いと遠投時の衝撃で切れることがあるの、強度の高いイトを選択しよう。

テンビンに関して

テンビンは、キスを釣る上で重量な役割を果たしている。遊動タイプと固定タイプがあり、一概にどちらが良いとは言いがたい。それぞれの機能をよく理解した上で使いたい。

遊動や半遊動はキスがアタックしてきたとき、自由度があるのでアタリが伝わりやすい。しかしキャスト時に、仕掛けとテンビンに自由度があるので重心がブレやすく、安定した飛行を保つことが難しくなり、飛距離に関しては不利となる。

サーフでの投げシロギス釣りにおける【遠投するための投げ方・タックル・仕掛け】
サーフでの投げシロギス釣りにおける【遠投するための投げ方・タックル・仕掛け】
狭い場所でもフルキャストできるV字投法(提供:週刊つりニュース中部版 横山准司)

固定型は、オモリとテンビンが一体になっているので飛行中のブレが軽減され、安定した飛行を続けることができる。ここ一番の遠投を意識したときは、固定型に使うと飛距離をアップすることが可能となる。また固定型を使う理由は、やはり飛行中の空気抵抗だ。キス釣りをしていて、風のない日は少ない。その影響をできるだけ少なくすることで、飛距離を伸ばすことが可能となる。

私はポイントが遠いときや向かい風のときは、固定テンビンに替えてキャストしている。ただし感度は落ちるので、アタリを楽しんで釣るときはあまり使わない。

オモリに関して

オモリの種類は豊富だ。大きく分類すると、ムクと有浮力の2種類だ。

フロートタイプは近くのキスを釣るときやポイントを探すときに役立つ。浮力があるので、海底を引きずるときの抵抗が小さくなり、海底の形状を調べるときにも有効だ。

しかし空気抵抗は大きくなるため、ここ一番の遠投には適さない。固定テンビンはムクのオモリで作られており、同じ号数でも体積が小さくなると同時に空気抵抗も小さくなり、結果として飛距離アップにつながる。また、最近はチタン合金を使用したオモリもある。比重が大きいので、普通の鉛よりも小さく、空気抵抗が小さくなり飛距離を伸ばすことができる。高価だが、隠しアイテムとして1本は準備しておきたい。

仕掛けについて

少しでも飛距離を伸ばしたい場合、仕掛けの長さが影響してくる。仕掛け自体は細いので、抵抗は少ないように思われがちだが、長距離を飛ぶ間にテンビンを含めた仕掛け全体が揺れてしまい、飛距離低下につながってしまう。

サーフでの投げシロギス釣りにおける【遠投するための投げ方・タックル・仕掛け】
サーフでの投げシロギス釣りにおける【遠投するための投げ方・タックル・仕掛け】
連掛けで本命キャッチ(提供:週刊つりニュース中部版 横山准司)

少しでも距離を伸ばすためには、ハリ数を減らして仕掛け全体の長さを短くし、空気抵抗と仕掛け全体のバランスを良くすることが大事だ。砂ズリを外し、仕掛けをテンビンに直結しハリ数を少なくして空気抵抗とバランスを良くすることで、飛距離を1mでも伸ばすことが可能となる。

今回は少しでも飛距離を伸ばす方法について執筆させていただいた。年齢とともに体力が低下してくるので、体力だけに頼っても限界がきてしまう。飛距離を伸ばす秘けつの1つは、フォームをしっかり身に付けることだ。運動を兼ねるつもりで、チャレンジしてみてみるのもいいと思う。

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<週刊つりニュース中部版 横山准司/TSURINEWS編>

この記事は『週刊つりニュース中部版』2023年7月14日号に掲載された記事を再編集したものになります。The post サーフでの投げシロギス釣りにおける【遠投するための投げ方・タックル・仕掛け】 first appeared on TSURINEWS.
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