アユルアー特集第四弾は、滋賀県に本社がある株式会社ジャッカルにインタビュー。「OTORI MINNOW」を展開されている同社の藤松さん・上岡さんに、開発した経緯や関西の「アユルアー事情」を伺った。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWS編集部 河野陸)
「OTORI MINNOW」開発背景
最初に「OTORI MINNOW」の開発背景について藤松さんに伺った。
開発の経緯は?
私が10年ほど前に、安曇川下流にてアユルアーをやってみたことがすべての始まりです。当時、安曇川下流の廣瀬漁協さんはルアーOKで、かつ禁漁前最後の数日間は無料で開放されていました。その時にトラウト用のルアーを試しで使ってみたら、面白いように釣れました。
この時の釣果をSNSにアップしたところ、業界関係者の方から「友釣り」を勧められ、それ以降7~8年は友釣りで鮎に関する知識を蓄えました。2021年頃からアユルアーの市場が少しずつ開拓・拡大されていく中で、「内水面の釣り」で全国に広まる可能性があり、かつ持続可能な釣り物であるという点から、会社として取り組みたいと考え、開発に着手しました。

どこでテストを進めた?
相模川・安曇川をはじめ、本社がある滋賀県の漁業権のない小さな川でも実施。実際にテストを繰り返す中で、安曇川は今後「西のメッカ」になっていくだろうと思いました。
理由として、道路に「釣り場入口」の看板があり、車で河原まで入る事ができるというエントリーのしやすさが挙げられます。これなら、エントリーポイントがわからない初心者でもアクセスしやすいと感じました。
安曇川でのアユルアー人口は?
土日は多くの釣り人で混雑しています。しかし、その多くは友釣りの方で、ルアーの人もポツポツ混ざっていますが、感覚値でいうと30人の中にルアーアングラーが1人という感じ。安曇川はルアー専門区域を設けていない為、ルアーの人はひと声掛けた上で、空いているところに入る必要があります。対して、平日であればまだ空きは結構見られますね。
「OTORI MINNOW」唯一無二の特徴
市場で販売されているアユルアーの中で、「OTORI MINNOW」は唯一「ジョイント」を採用している。気になるその理由を伺った。
ジョイントにした理由とは?
ジョイントにすることは、開発当初から決めていました。理由は強い流れの中で、「魚の動感」をより出したかったから。この「魚の動感」を出せるようにしたことで「生きているように泳ぎます」という唯一無二の謳い文句ができる訳です。結果的に他メーカーさんとの差別化を図ることができました。
「やるならばジャッカルらしいアイテムを開発する」という姿勢は、他の全ての商品の開発においても同様です。

ジョイントを採用したことでの苦労
ルアー自体の開発期間は1年程度だったのですが、この開発期間で一番時間をかけたのは「ジョイント幅」の部分です。ジョイント幅が大きすぎると川に入れた時、流れに当たって水面に飛び出てきてしまったり、逆に幅が小さすぎると理想のアクションにつながらず、いい塩梅を見つけるのに時間が掛かりました。その他、水中でエビらない為に、ウエイトの調整にもこだわりましたね。

友釣りとの共存
友釣りの方との共存についても伺った。
友釣りの方との共存方法は?
アユルアーは、友釣りと比較すると初心者でも入りやすいです。しかし、入りやすい釣りだからこそ、いままで釣りをされてきた人と共存していく為、新しく入る人向けに「川ごとのルール(道具・仕掛けの規制、どのくらい離れたほうが良いかなど)」の発信はこまめにしていく必要があります。この点はメーカー・漁協さんだけではなく、メディアの皆様にもお願いしたいです。
友釣りの人口にも影響を与える?
相模川などは、「友釣りとルアー釣りが混ざる区域」が一部設定されていますよね。アユ釣り初心者がルアーをやっている横で、友釣りの人がたくさん釣っているのを見たら、ルアーの人も「もっと多く釣りたい」という心情が強くなり、結果として友釣りに移行する人も増えていくのではないでしょうか。そうすれば、現在厳しい状況に置かれている漁協さんも盛り上がるし、そうなるようにメーカーサイドも支援していきたいです。

アユルアーの今後
最後にアユルアーの今後について伺った。
今後のメインターゲットは?
他の釣り物で、ある程度ルアーに対する考え方・攻略法を持っている人に使っていただきたいと考えております。手軽な点は訴求していきますが、釣り場環境として、激流の中に立ちこむ危険性などもある為、頑なに初心者向きである点を訴求する必要はないと思います。

今後の展望
まだ市場が開拓され始めたばかりですので、もっとルアーのカラーやロッドなどがあってもいいと思っています。今後はアユルアー市場拡大により、友釣りで使われている周辺用品にもスポットライトが当たっていくのではないでしょうか。
アユルアー特集まとめ
今回、アユルアーを販売されている4社にご協力いただいた。どの担当者の方もアユルアーについて話す際、目をキラキラされていたのが印象的で、「新しい釣り方を開拓していく」ということにワクワクしている様子であった。禁漁期間が間近に迫ってはいるが、最後に川へ出向き、アユルアーを試してみると「ワクワクの正体」がわかるはずだ。
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<TSURINEWS編集部 河野陸>