大自然に溶け込みながら楽しむ渓流釣りにおいて、最も嫌われると言っても過言ではないマナー違反、それが「頭ハネ」だ。今回は、無用なトラブルを避けるという注意喚起のため、「頭ハネ」について詳しく紹介しよう。

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(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター荻野祐樹)

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頭ハネとは?

まずは頭ハネという行為はどのようなものかをみていこう。

いわば順番抜かし

端的に言えば、後から来た釣り人が先行者を無視して上流に入り釣りをする事を指す言葉。いわば順番抜かしに近いが、渓流釣りにおいては正直もっとヒドイ行為だと言わざるを得ない。

何故問題に?

渓流釣りはその特性上一か所に留まらず、上流に向けて釣り上がっていく(遡行)のが基本だ。それなのに、後から来た人が先行者の上流に入って釣り上がったならば、その先は既に荒れてしまって釣りにならないのだ。

渓流釣り最大のタブー【頭ハネ】ってなに? 回避するためのポイントを徹底解説
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渓流は釣り上がりが基本(提供:TSURINEWSライター荻野祐樹)

一日の釣りが台無しになってしまう行為なので、渓流師から最も嫌われていると言っても過言ではないマナー違反だろう。

魚は上流を向いている

川は基本的に流れがあるので、警戒心が強い渓魚達は上流から流れてくる餌を待っている状態だ。

渓流釣り最大のタブー【頭ハネ】ってなに? 回避するためのポイントを徹底解説
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渓魚は流れに向かって定位(提供:TSURINEWSライター荻野祐樹)

仮に上流側で川の中を歩かれると、その音や飛沫に警戒して岩場の影等に潜りこんでしまい、口を一切使ってくれなくなる。この面からも、頭ハネという行為は絶対に避けなければならない。

頭ハネを避けるには

次に、自分自身が「頭ハネ違反者」にならないために、どんな事に注意すべきなのだろうか。順にみていこう。

入渓時に周囲確認

まずは自身が入渓する際、周囲に釣り人・車が無いかどうかをしっかり確認する事。中には車を停めた場所から多少下(シモ)に下った後、入渓して釣り上がるようなケースもあるので要注意だ。

先行者がいた場合

人気ポイントや解禁日・成魚放流日等はアングラーが集中する事も多いが、最低700m~1km程度の距離を取って入渓する事を心がけたい。渓流師として本音を言えば2km程度は間隔を空けてほしい所だし、流域の狭い支流であれば、時に別の川へと移動する配慮も必要だろう。

無暗に釣り下りをしない

釣り下りをしないと入れないポイントならば話は別だが、基本的には釣り上がるべきだ。後から来た人が折角1km程度下流に入ってくれても、自身がどんどん釣り下っているならば、見方によっては自身が頭ハネ違反者になってしまうからだ。

実際の例&もし遭遇したら

ではここから、著者が最近遭遇した出来事と、もし遭遇した場合の対処法をみていこう。

天川村での出来事

3月末、著者は奈良県天川村を訪れ、アマゴ釣りを楽しんでいた。

ところが、ある場所を境に急にピタっとアタリが止まり、足元には真新しい足跡が増えた。前日に多くの人が入ったのかと感じていたのだが、緩やかな川のカーブを曲がっていくと、なんとその50m程度先に釣り人の姿があったのだ。しかもこちらを一瞥した後、どんどん上流へと歩いていくのが見えた。

これは残念だが仕方ない……と退渓すると、なんと著者の車のすぐ後ろに車が停まっていたのだ。当然、著者が駐車した時にはこの車は無く、下流側に車がいなかったことも確認済みだ。実に残念な気持ちになり、著者は移動する事となった。

渓流釣り最大のタブー【頭ハネ】ってなに? 回避するためのポイントを徹底解説
渓流釣り最大のタブー【頭ハネ】ってなに? 回避するためのポイントを徹底解説
当日のルート(提供:TSURINEWSライター荻野祐樹)

参考までに、こちらがその時のルートだ。車はこの地図よりさらに下部に停めてあり、著者は赤い矢印のルートで遡行していたのだが、先行者は黄色い丸部分から入渓し、そのまま青のラインで遡行していたと思われる。気づかずにやってしまうケースもあるだろうが、それを避けるためにも、入渓前に是非周囲をしっかりと確認してほしい。

ホームリバーでの出来事

一昨年の解禁日、馴染みの川で釣り上がっていると、やはりある場所を境に急にアタリが無くなった。それでもひたすら釣り上がっていくと、先行者と鉢合わせしてしまった。著者の遡行速度が速すぎて追いついてしまったのか?と思い、この時は先行者に一声かけ、下流側から静かに退渓した。

そして車へと戻ったところ、なんと著者の車から100m程度上流に車を発見。著者の車がはっきりと見える距離だ。この車は著者が入渓した時にはなかったので、明確な頭ハネだ。やはり大変悲しい気持ちになりながら、別の川へと移動する事になったのだ。

遭遇したら

上記で紹介したケースは、入渓時周囲に人・車が無いことをしっかりと確認しているため、こちらに落ち度は一切ないと言っていい。とはいえ、中には話が通じない人がいるかもしれないので、文句を言いに行ってトラブルになるのだけは絶対に避けるべきだと著者は考える。

悔しい上に悲しい気持ちになるが、自身が黙って退き、別の場所に移動すべきだろう。「同じ目に遭わせてやる」とやり返すのは紳士的行動ではないので、くれぐれも避けてほしい。

渓流釣り最大のタブー【頭ハネ】ってなに? 回避するためのポイントを徹底解説
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移動先で仕留めた良型(提供:TSURINEWSライター荻野祐樹)

ルールをしっかり守れるアングラーは、同時に良い腕も持ち合わせていると著者は信じているので、移動先で好釣果に恵まれる事を期待しようではないか。

偶然「頭ハネ」になった時

絶対に注意すべきではあるが、自身が周囲の車に気付かず釣りをしていて、下流側から上がってきた人と遭遇する事もあるかもしれない。

その場合は「すみません、車やあなたに気付いていなかったようです」と素直に頭を下げ、相手の入渓場所や駐車位置を確認させてもらってから、速やかに下流側から退渓しよう。ミスは誰しもあるので、遭遇した場合には広い心で対応したい。

マナーよく楽しもう!

著者はこれまで10年以上渓流釣りを楽しんでいるが、こと頭ハネにおいてはこの5年程度で一気に増えたように感じる。コロナ過に陥ってから「ソーシャルディスタンスを保ちながら楽しめる趣味」という事で、渓流釣りが注目されるようになったのは大変喜ばしい事だが、同時に危機感も感じた。

渓流釣りは大自然を満喫しながら魚と対話できる唯一無二の趣味なので、誰もが気分良く楽しめるよう、マナーをしっかりと学んだうえで楽しんで頂きたい。

<荻野祐樹/TSURINEWSライター>

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