沖縄科学技術大学院大学の物理生物学ユニットの研究チームは、アオリイカの腸と胃から2種類の条虫類を発見しました。1種はNybelina属の新種でもう1種はPhoreiobothrium属の未知の種と判明し、Nybelina属には非常にユニークな和名が提案されています。

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アオリイカの3タイプとは?

アオリイカ Sepioteuthis lessonianaは日本を含む暖かい海の沿岸に広く分布する頭足類です。

現在「アオリイカ」と呼ばれている種には、遺伝的に分化した3つの型が知られているものの分類学的な整理はできておらず、便宜上<シロイカ型><アカイカ型><クアイカ型>と呼ばれています。

「名前は可愛いけど健康被害の可能性も」 アオリイカから新種の寄生虫『イカチュウチュウ』が発見される
「名前は可愛いけど健康被害の可能性も」 アオリイカから新種の寄生虫『イカチュウチュウ』が発見される
アオリイカ(提供:PhotoAC)

また、アオリイカは食用として非常に重要であることから、養殖の対象として研究が進められている頭足類でもあるのです。

実際、沖縄科学技術大学院大学の物理生物学ユニットの研究チームは、2022年にアオリイカの養殖システムの開発に成功し、養殖の対象としての重要性が高まっています。

この研究結果は2025年4月7日に『Journal of Invertebrate Pathology』で発表されました。(論文タイトル:Co-infection of cestode parasites Nybelinia enterika sp. nov. and Phoreiobothrium sp. in oval squid Sepioteuthis lessoniana species complex)

発見された2種の条虫

アオリイカの養殖システムが開発された一方、疫学的な知見はアオリイカ養殖開発に非常に重要とされているにも関わらず、頭足類の病原体に関する研究は乏しいとされています。

今回、沖縄科学技術大学院大学の物理生物学ユニットの研究チームは、複数のアオリイカのサンプルを調査。その結果、野生のアオリイカの腸及び胃から2種の条虫(サナダムシとも呼ばれる寄生虫の総称で様々な生物に寄生)を発見しました。

条虫はイカの腸と胃以外から見つからなかったことから、これらがイカの腸壁に限定される可能性があるとしています。加えて、発見された寄生虫が幼体であったことから、アオリイカを中間宿主としていることが示唆されました。

また、この研究では野生のアオリイカからのみ条虫が発見され、飼育されたアオリイカから条虫は発見されなかったといいます。

和名は<イカチュウチュウ>

発見された条虫のうち1種はPhoreiobothrium属の未知の種であり、もう一方はNybelina属の新種と判明。

Nybelina属の新種はNybelinia enterikaと命名されました。種小名である“enterika”は、ギリシャ語で「腸」を意味する“enter”と日本語でイカを意味する“ika”を組み合わせた単語です。

新種記載されたNybelinia enterikaについて、研究チームは「イカチュウチュウ」という和名を提案。

かなりユニークな名前なので、一度聞いたら覚えてしまいそうですね。

また、論文の著者の一人であるLucia Zifcakova博士は、「これらの条虫類が人間の健康に及ぼす危険性はまだよく分かっていません。しかし、条虫類がイカの組織を消化する際に使用する酵素は、人間にアレルギー反応を引き起こすことが知られています」と述べています。

アオリイカの寄生虫

条虫による寄生は、商品価値の低下に起因する経済損失や人間への健康リスクが懸念されています。

特に日本においては、イカを生食する文化があることから寄生虫に関するリスクは以上に重要なテーマです。

アオリイカ養殖はイカの安定的な供給だけではなく、寄生虫のリスクを回避する意味でも今後、重要性を高めていくかもしれませんね。

<サカナト編集部>

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