九州中国地区では例年より約3週間も梅雨明けが早くなり、本格的なアユシーズンに突入となった。今年は梅雨明け早々に真夏日、酷暑といわれる日が始まってしまうが、こういう時期だからこそ涼しくダイナミックな釣りができるアユ釣り、大アユ釣りにチャレンジしてみてはいかがだろう。
(アイキャッチ画像提供:週刊つりニュース西部版APC・高原稔)
成長中のアユ
早い梅雨明けにより水不足の心配がある一方、川の水位も下がり真夏の強い太陽光が川底の石に光合成を促すことで、アユのエサとなる新鮮な苔(コケ)が出来上がっていく。
そうなると、いよいよアユは活発にエサを求めるようになり、同時に縄張り意識を強く持つことから、トモ釣りではオトリアユに強烈にアタックするようになる。そして強いアユはますます苔を食(は)み、中には1週間に1cm近く成長して大アユ・尺アユへと育っていく。

大きく育ったアユは体力もあることから、流れが強いポイントにも縄張りを持ち、新鮮な水で出来上がる良質のコケを食べることで、より一層大きくなっていく。
おすすめのポイントは「瀬」
この時期でも、もちろん、流れが緩くとも水通しが良いポイントは有力だが、通称「瀬」と呼ばれる流れが強いポイントがお勧め。ただ、養殖のアユは泳力がないため、いきなり瀬に入れることはお勧めできない。
その上流の「瀬肩」や下流の「瀬尻」といわれる流れが緩いポイントで天然アユ(野アユ)を狙うのがセオリー。その時はサオを立てて、なるべくオトリアユを引っ張らない「泳がせ釣り」で釣り、オトリアユが天然アユに替わるのをじっくりと釣りたいものだ。
天然のオトリアユが釣れたところで、いよいよ瀬での釣りとなる。早く釣りたい、はやる気持ちを抑え、まずはいったん魚を掛けた後をイメージして立ち位置を考える。この時期のアユともなると強い瀬の流れに加え、魚の重さ、泳力の強さがプラスされて、力強い勢いで流れを下るため、「どうやって取り込むのか?」が非常に大事になる。
リール付きの釣りと異なりドラグはないから、サオ1本と細いラインで2尾の重さのアユ(オトリアユ+掛かったアユ)と対峙しなければならない。その場で耐えて抜き上げるのか?瀬の中をアユに付いて行って流れが緩い場所ですくうのか?

そのイメージができたら、いよいよオトリアユを入れるが、オトリアユが泳ぐ位置と自身の立ち位置を平行にしておくとよいだろう。
オトリアユが自分よりも下流(いわゆる下ザオ)状態だと、アユが掛かってからサオの弾力を十分に生かすことができず、最悪ラインブレイクになりかねない。
獲れた(あえて釣れたではなく)元気なアユは鼻カンを通したら、ていねいに足元から泳がせる。最盛期は白泡で見えない瀬のあちこちにアユが定位していることも多く、それこそ自身の1m先でも掛かることがよくある。
サオの選択
最盛期の25cm以上のアユともなると、元気いっぱいに引っ張りまわされる。さらに流れが速い瀬で掛かり、一気に下流に走られることもよくあるので、サオは胴調子系をおすすめする。
オトリアユのコントロール性能は先調子のサオには叶わないが、瀬の中でオトリアユを引いたり、下流に逃げようとする2尾のアユを瀬の中でしっかりと止めるには、サオの粘りが強くラインの強度も生かせる胴調子系の選択がベターだ。

長さは現在主流の9~9.5mをメインに、川幅が広くまた流れが強いような所では10m(もしくはそれ以上の場合も)、反対にさほど川幅がなければ8.5mでも楽しめる。
仕掛け
トモ釣りの仕掛けについて解説しよう。
天上イト
フロロカーボンの1.7~3号を使う。注意点としてフロロカーボンは「折れ、傷」に弱いため、こまめにチェックが必要。また、伸びる特性をもつナイロンも大型魚を相手には有効。ただ、伸びきったときは強度ダウンしたり、水分を吸収すると弱くなることからフロロカーボン以上にこまめな交換が必要となる。水中イト
強度と使い勝手が良いメタル(金属)と繊維からなる「複合ライン」がお勧め。さらに最近は、瀬や深めのポイントをメインに攻める際により適した高比重の複合ラインも登場しており、選択肢が広がっている。
また、より流速が速いポイントや感度を求める人は「単線メタル」に人気がある。
鼻カン周り
私の場合、梅雨明け以降の良型アユを狙う際、水中イトと鼻カン周りの仕掛け(中ハリス)の接続はいわゆる「直結」(ツマミイトを使わず水中イトに中ハリスを直接結ぶ)にする。相対的に仕掛けの強度が落ちる接続部分を少なくするためだ。
鼻カンはオトリアユの付け替えが楽な「ワンタッチ式」鼻カンが主流だが、オトリアユが野アユに強烈にアタックされた際、まれに鼻カンからオトリアユが外れるケースがあり、「フック式」鼻カンを使う人もいる。
掛けバリ
3本イカリとチラシを使い分ける。普段は3本イカリを多用するが、その中でも早掛け系(例=スピード)とシワリ系(例=キープ)の2種類を常備し、その日の状況で使い分けをする。底バレ(水中バレ)やロケット(引き抜きバレ)が目立つ時に、一方の正反対の特徴を持つハリに交換する。
また、明確に大アユ・尺アユを狙うタイミングの時は、チラシ(ハリ2本)にする。掛かった1本のハリが深く刺さることで、その後のバレ(バラシ)を防ぐためだ。
ライフジャケット
毎年、アユ釣りシーズンでは全国で不幸な水難事故のニュースが絶えない。私も過去何回かヒヤっとする経験もあり、ここ数年は念のため「首巻き式の手動膨張ライフジャケット」を着用するようになった。そして今年は浮力材が入ったアユ用のライフジャケットを購入したので、両者を使い分けしようと思う。

よく川に流されたら「まずは手に持っているサオや舟(引き舟)を手放せ」といわれるが、私を含め周囲の人と話してもサオを手放したという人はいなかったし、以前、実際に対岸で流された人を見たことがあるが、ずっとサオは握ったままだった(その人は30mくらい先で岸にしがみつくことができて事なきを得たが、その後川原に座り込んで30分以上、放心状態のようだった)
水面で仰向けになった時は、腕を空中に上げると体は沈む。腕は水面のまま(大の字か、「気を付け」の姿勢)が有効だ。一度、釣り場の浅い所で試してみてほしい。

終盤の9月も中旬ともなると気温・水温も下がっていく。ウエットスーツ状のジャケットは体温保持やケガの防止に役立つ(若干の浮力もある)。
川で釣りをしていて石に脛(すね)をぶつけたことはないだろうか?アユ用タイツには脛の保護をうたったモデルも発売されているが、私はさらにタイツの内側(アンダータイツの内側)にサッカー用の「脛アテ」を装着している。着け始めた最初の2、3回は違和感はあったが、それをすぎると「ないと不安」になるくらい必要なグッズとなった。
アユ釣り(トモ釣り)に掛かる費用例
入門モデルではサオ、仕掛け、ベスト・タイツ・タビ、アミ(タモ)、オトリカン、引き舟などで市価10~20万円。河川の遊漁券は一日券1~3千円前後で地域などにより異なる。お得な年券(パスポート)もある。ただ、一度揃えると、以降は消耗した仕掛けと遊漁券で、ランニングコストには優れた釣りだ。

私が20代の時、上司に「アユ釣りはやらないのかね?アユ釣りをしないのは人生の損失だよ」と言われ、その時は意味が分からなかった。20代になってアユ釣りを始めて今日まで「なんで20代から始めなかったんだろう!」と、当時の言葉が名言だったとしみじみ感じる。
そんな魅力的なアユ釣りを、ひとりでも多くの人に体験してもらえたら……と願う。
<週刊つりニュース西部版APC・高原稔/TSURINEWS編>