梅雨が明ければ、いよいよアユ釣りは最盛期に突入。水温の上昇とともにアユも川も出来上がり追い気、アタリ、パワーも上昇して最も面白いシーズンが到来する。
(アイキャッチ画像提供:週刊つりニュース中部版 武田英敏)
真夏のアユ攻略
この時期は、河川選択も釣果を左右する。水量の豊富な河川で天然遡上もある河川を選択するなら、三重県・熊野川、北山川、岐阜県・長良川郡上エリア、長良川中央漁協管内、北陸なら九頭竜川や神通川など。
今回私のホームグラウンドの三重県・大内山川、宮川上流を中心に解説していきたい。小河川でシビアな釣り方や気の使い方を意識すれば、案外水量の豊富な河川に行っても応用が効くものだ。

釣れる時間帯
この時期の日中は水温が28度近くになるため、オトリ缶の水と川の水合わせが大事。少し時間をかけオトリアユを水に慣れさせていく。釣りの時間帯は、渇水期なら早朝(午前5時ごろ~7時)、昼(11時ごろ~14時ごろ)、夕方(午後5時ごろ~7時ごろ)の3回がゴールデンタイム。この時間帯に良いオトリを使用すれば、さほど難しい釣りになることはない。増水時には状況も変わってくるが……。
小河川ゆえ追い気の強い着きアユは、よほど数日たたかれていないサラ場以外は望めない。狙うのは食む時間帯。群れアユが動きだしたときにナジませて、触れ掛かりさせることがほとんどだ。中には群れの中に時合いのみ追うアユも交じっている。

食む時間帯なので真っ黄色になっているアユもいるが、水中メガネで友人に観察してもらうとよほど好条件以外は追って掛かってこず、触れ掛かりの背掛かりが多い。とにかく野アユにナジませ泳がせるを意識し、引っ張って掛けることは難しい。とにかく自然なオトリの体勢、泳ぎ方の演出を常に意識し、オトリに負担がかかる操作はできるだけしない方が釣果アップを期待できる。
ポイント
ポイントは上下に淵(タンク)のある所が絶対条件で、小石底のチャラ瀬なども狙いめだ。とにかく常識に捉われず、「こんな所で?」といったポイントも見逃してはならない。よく言われる「人がやりづらいポイント」を狙えと言うが、近年は道具の進化、釣り人の技術向上でほとんどそんなポイントは存在しないと思う。操作しづらく元気なオトリアユが自然に自ら入っていくポイントが、一番のサオ抜けポイントだと思う。

とにかく小河川の基本は自然に泳がせ、絶対鼻を引かず我慢する。野アユの反応を察知して、群れアユで数を稼ぐことが大事。掛かった野アユが石の間を自然に泳ぐ状況が保てれば、追っているアユはもちろんニアミスで掛かる率も高くなる。
タックル
タックルは名人のタックルを参考にしがちだが自分の釣り方、考え、スタイルによって全然違うので、好みのものを使用すれば良いと思う。盛期の7~8月ともなれば、平均20cm前後のアユがターゲットで、中には23cm以上も交じる。
初めて訪れる河川なら事前にオトリ店で釣れているサイズを聞き、タックルや仕掛けを準備することが大事だ。このわずかな情報収集が釣果を大きく左右する。
私の使用ロッドは、ダイワ銀影競技スペシャルT90・J。瀬の中から速攻で引き抜く瞬発力を備えながら先端部分は操作性を重視し、硬さを抑え角がなく緻密な操作性を実現。この1本があれば小河川での増水、25cm級の野アユでも十分に対応できる。大河川では銀影競技メガトルク急瀬抜90・Qを使用する。

天上糸・水中糸の選び方
天上イトはナイロンライン、フロロカーボンライン、PEライン、エステルラインがあるが、私はバリバス鮎天上糸エステルを使用している。高い撥水性能でサオに絡みにくい。水中イトは、単線メタル、複合メタル、ハイブリッドメタル、ナイロンライン、フロロカーボンラインがある。年間通して複合メタルの人が大半だが、私は好んでフロロカーボンラインを使用する。
梅雨が明け渇水期になると、私のホームグラウンドではポイントを何カ所か移動するか、足で稼いで着きアユを釣っていくか、また泳がせ主体の群れアユ狙いをしなくては数が稼げない。

私は短時間釣行が多く1カ所で粘っての釣りになり、先行の釣り人にたたかれているため、フロロカーボンラインでの泳がせパターンが多い。フロロカーボンラインを使ってラインの力を借りると、複合メタルを使用して釣り切ったポイントでも拾えることが多々ある。
ハナカンはノーマルの移動ハナカンを使用。
ハリ
オーナーの谺(こだま)は、攻撃型超鋭シワリバリ、短軸早掛け型シワリバリだ。掛かりの早さとキープ力の高さが気に入っている。6.5号、7号。掛かりアユの傷も比較的小さい感じがする。
一角は、狐の掛かりやすさとトンボのバレにくさをひとつの形状に融合。掛けバラシを防止する独自フォルムで、ハリ先角度は広角。フトコロが広い形状は身切れを最大限に防ぐ。6.5号、7.5号。

ダイワスピードは、数釣りに最適な早掛けタイプ。掛かり重視でチャラ、トロでの数釣りに最適。
ダイワエアスピードは掛かり重視で、スピードの軽量・細軸モデル6.5号。状況に応じて3本イカリ、4本イカリを使い分ける。
ダブル蝶一角は、どうしても1匹が獲りたいときなど、ここ一番で役立つ。群れアユはもちろん、ナワバリアユにも効果的で4本、3本イカリで釣れない、絡まないときに登場するお助けバリ。
これらのハリを号数、ハリハリスの号数、種類(ナイロンライン、フロロカーボンライン)を使い分けて、当日の自分の釣りにあったハリを使用している。
オモリ&背バリ
オモリ、背バリは沈める、止める、安定させるというメリットがある付属パーツで、使い方によっては最高のウエポンになる。サイトフィッシングで追い気の強い野アユに追われて逃げてしまうときに、オモリを使うとオトリが逃げるのが遅れてヒット。そのような状況が見えない水の中でも多々あることだ。
背バリを使用するとオトリの泳ぎ、オトリの体勢が変わり野アユが掛かりやすくなったり、追われやすくなったりする。
ノーマル仕掛けが一番良いとも言われるが、私は野アユがオトリとして使用された段階でノーマルではないとの考えのため、付属パーツをいろいろな場面、状況で使用すればまた新たな世界や発見があると思える。
ポイント選択
一番の基本だが、上下流にタンク(淵、トロ場)のあるポイントは、かなりの群れアユがストックされている。必ず時間帯によって浅場にアユが動きだし、アユが見えなかったポイントでも、アユが食みだしナワバリを持つアユも出てくる。もちろん川石の色の良いポイントが必須だが、河川によって石の色も違うので必ず覚えておこう。

群れアユが動くと、周りの追い気がなかったアユも活性が上がり、やる気が出て真っ黄色になるアユもいて、比較的簡単に釣れてしまうが長くは続かない。タイミング良く釣っていこう。根掛かりは絶対禁物だ。
トロ場、チャラ瀬狙いの泳がせ釣りで、立ち位置によってもオトリが泳ぐコースが変わり、足元から泳がせたときも見逃していたすぐ近くで掛かることもある。オトリの泳ぎやすいコースもあり立ち位置が同じだと、毎回同じコースを泳いでいくため上下1m、前後1m立ち位置をずらすだけで、全く別のポイントとなる。混み合ったポイントでは有効だ。
時間帯選択
小河川では特に渇水期になると、やはり日中の釣りはかなり厳しい。増水があり川がリセットされたXデーから数日間は爆釣も夢ではないが、日がたって水位も下がると瀬の釣りはかなり厳しくなる。かといってアユ自体は一日のうち数回捕食時間があり、早朝と夕方は太陽の光が水面に当たる角度で群れのアユの間隔が狭くなり、絡みやすくなるようにも思う。

時間があれば早朝(午前4時半~7時半)、夕方(午後5時~7時)に瀬、トロ場、チャラ瀬でアユを確認できるポイントで釣りをしたら、ナワバリアユ以外も絡みやすくなっていることが多い。
河川にもよるが、盛夏なら夕方の水温が少し下がったときも狙いめになる。
仕掛け選択
複合メタルを使用しているポイントでナイロンライン、フロロカーボンラインに替えるだけでも変化があり、オトリアユの泳ぎや泳ぐコースが変わり、掛からなかったアユが掛かることもある。
ハリも同じ号数でもハリハリスの号数を変えたり、ナイロンライン、フロロカーボンラインのハリハリスを使い分けたりしている。漁協の規則で定められたハリの数とかはあるかもしれないが、それ以外はフリーなのでいろいろ試して常識外な発想の仕掛けを使用するのも良い。
トモ釣りはエサで釣るのではなく引っ掛ける釣りなので、普通の魚釣りとは全く違う。
真夏のアユ釣りQ&A
ここからは、真夏のアユのトモ釣りをする際に知っておきたい内容をQ&A形式でまとめてみた。
Q1. 真夏のアユ釣りで安全面の注意点は?
熱中症対策として帽子・水分・塩分補給は必須だ。滑りやすい河原ではフェルト底やスパイク付きのウェーダーを使うといい。天候急変や雷の予報がある場合は、早めに撤収するのが安全だ。
Q2. 釣ったアユの美味しい食べ方は?
塩焼きが定番だが、天ぷらや南蛮漬けもおすすめだ。鮮度が落ちやすい魚なので、持ち帰るときはしっかり冷やしておくことが大事だ。
Q3. 初めて訪れる河川での事前準備は?
漁協の遊漁証や規則を確認し、釣具店で釣況やサイズを聞いてタックルを準備すると安心だ。現地のルールや情報を事前に押さえておくことで、釣果にもつながる。
最後に
釣りは面倒なことをする、タラレバをなくせば必ず釣果は上がる。私自身もコンスタントに掛かっているときは、神経を集中させていろいろなことを実践できるが、時間がたつにつれて疲れてくると「1匹掛かってから」と思ってしまう。
「焦って良いことはひとつもない」。教訓は「5分掛からなければ何かを変える」ことが大事だ。数年前から私の釣りをしているところを釣友に水中観察してもらい、想像の世界ではない実際のオトリ、野アユの動きを教えてもらっている。

野アユが絡みやすい動き、絡みにくい動きが目印に出るか見ると、目印から釣り人に伝わるときはかなりの好条件。目印から反応が伝わらないときでも、オトリの周りには10匹以上の野アユがいるらしい。
目印が横にスッと動いて「今追われた」と私が思った時、実際はオトリが単独で横に泳いだだけということもあった。釣り人の想像とはいい加減なものだ。
最近は釣り以外のモラルとして、アユ疾病蔓延防止(冷水病対策))についても注意が必要だ。まず釣ったアユ、オトリアユは必ず持ち帰る。他の河川でオトリアユとして購入したアユ、他の河川で釣ったアユは持ち込まない。使用後の道具は、十分乾燥消毒する。それでは最盛期のアユのトモ釣りを、安全釣行で楽しんでいただきたい。
<週刊つりニュース中部版 武田英敏/TSURINEWS編>