紀州釣りとは、はるか昔に和歌山県・紀州地方で発祥した釣りで、主にクロダイをターゲットとして狙う釣りだ。メインシーズンは地域にもよるが、6月から翌年1月になる。

現在ではウキダンゴ釣りと名を変えて発展しており、今回はそのウキダンゴ釣りの基本的なノウハウを紹介したい。

(アイキャッチ画像提供:週刊つりニュース中部版 佐々木博司)

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ウキダンゴ釣りのノウハウ解説

ひと口にクロダイがターゲットと言うが、釣れてくる魚は魚種豊富、さまざまな魚が釣れてくる。それもウキダンゴ釣りの楽しさのひとつだ。初めてチャレンジする人も、きっと一日通して楽しめる釣りだと思う。

「クロダイ攻略!」紀州発祥「ウキダンゴ釣り」5ステップ完全ガイド
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良型クロダイを攻略(提供:週刊つりニュース中部版 佐々木博司)

では、早速そのウキダンゴ釣りの仕組み、ダンゴの作り方、仕掛けの作り方、それを使った釣り方など、順を追って説明していきたい。

ステップ1:ウキダンゴ釣りの仕組み

オキアミや練りエなどのさしエサをハリに付け、ダンゴの中心に入れて具の入った丸型のオニギリのように握る。ダンゴは、メーカーが配合した乾燥ダンゴ材が袋に入ってパッケージされたものがあり、パッケージの裏に入れる海水の量などが記載されている。それに従えば簡単にダンゴを作ることができる。

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ダンゴ作りがキモ(提供:週刊つりニュース中部版 佐々木博司)

そしてさしエサを入れて握ったダンゴを、ウキダンゴ専用のヒシャクや手などでクロダイのポイントに投入する。投げる距離は、堤防であれば主にカケアガリ付近、足元を基準に8~10mぐらい沖合が良い。具体的には、カケアガリの石積みが途切れて砂地になる辺りのポイントがベストだ。

投入ポイントと狙い方

基本、この釣りは海底がなるべくフラットな砂地で行うことが条件となる。周りでウキダンゴ釣りをしている人がいる場合は、釣れる距離を聞いてみるのも良いだろう。

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ムラがないよう混ぜよう(提供:週刊つりニュース中部版 佐々木博司)

ダンゴが崩れてからの流れ

投入したダンゴは海底に到着するとバラけ始め、やがてダンゴの持つ集魚効果で小魚やクロダイ以外の魚が集まりだす。警戒心の強いクロダイは、他の魚がダンゴをつついているのを見ると安心してダンゴに近づいてくる。そのタイミングで、ウキの浮力でダンゴからさしエサが出ると、クロダイがそれに食いつくという仕組みだ。

握り回数とタイミング調整

このダンゴからさしエサが出るタイミングは、ダンゴの握る回数に比例しており、握れば握るほどダンゴが固くなり出るタイミングは遅くなる。小魚ばかり釣れてしまう場合は、少し握る回数を増やし、クロダイが寄ってくるタイミングに合わせてさしエサを遅めに出してやると良い。

私は水深5mであれば10回、水深10mであれば15回、水深15mであれば20回握ることを基本としている。あとは状況に応じてエサ取りなどの小魚が多い場合は、調整しながら基本よりも多めに握るようにしている。

ステップ2:仕掛けの作り方

この釣りは約5mの磯ザオにスピニングリールを付け、遊動のウキ仕掛けで行うのが基本。リールは2500番ぐらいのレバーブレーキが付いているモデルが使いやすくてオススメだ。ミチイトはナイロンライン2~2.5号、視認性の良いものが良い。意外とミチイトが細いと驚く人がいるかもしれないが、サオが5mあるため、サオの弾力でイト切れのリスクはかなり軽減される。

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夏はこのサイズもくる(提供:週刊つりニュース中部版 佐々木博司)

また、サオ先からウキまでの海面に浮いたミチイトが、風や流れの影響を受けにくいことも、この号数の背景にある。

ウキ止めとスナップスイベルの取り付け

仕掛けの具体的な作り方は、最初にミチイトにウキ止めイトを結ぶ。このとき、ウキ止めイトがズレてしまった場合に分かりやすくするため、10cmほど隣にももう1個結ぶ。2個付けておくことをオススメする。

次に遊動ウキ釣り専用のスナップスイベルを通す。そのスナップスイベルが抜けないように、からまん棒をミチイトに通してウキ止めゴムで固定する。からまん棒とウキ止めゴムはセットで販売されているため、ウキ止めゴムを別途購入する必要はない。

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サオが弧を描く(提供:週刊つりニュース中部版 佐々木博司)

ハリスとハリの選び方

固定したからまん棒の30cmほど下にサルカンを結ぶ。サルカンのサイズは、最も小さいものを選択すると良いだろう。次にサルカンにハリスを結ぶが、推奨はフロロカーボンライン1.5号を2mほど。その先にチヌバリ1~3号を結ぶ。

ハリのサイズは、使うさしエサのサイズにもよるが、最初は小さい1号から試すと、エサ取りの小魚が釣れてくるのでダンゴの周りにどんな魚が集まっているのか把握しやすい。

ウキの種類と特徴

ここまで出来たら、次は遊動ウキ釣り専用のスナップスイベルにウキを取り付ける。ウキダンゴ釣りにおいては、さまざまな種類のウキがラインナップされている。玉ウキ、棒ウキ、寝ウキなど。初めてチャレンジする場合は、寝ウキが見やすくてオススメだ。

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タモ入れは落ち着いて(提供:週刊つりニュース中部版 佐々木博司)

ダンゴにさしエサが入っているときは、寝ウキにテンションが掛かって棒ウキのように立っているが、ダンゴからさしエサが出るとテンションが抜けてパタッと寝る仕組みのウキだ。そこから魚がさしエサをくわえて引き込むと、再びウキが立って消し込まれる。このタイミングでアワせれば魚が掛かるといった流れだ。

遊動ウキ釣り専用のスナップスイベルにウキを付けたら、いよいよウキ止めイトを調整してタナを取る。このタナ取りの設定については、ステップ5のタナの設定で説明するため、いったん基本である水深の深さでタナを取ることを念頭に置いておこう。

ステップ3:道具の選択

ここではサオや仕掛けやエサ以外の周辺の道具について説明しよう。

この釣りは主に座ったまま行う釣りなので、まず必要なのがクーラーボックスだ。

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サオ掛けがあると便利(提供:週刊つりニュース中部版 佐々木博司)

そのクーラーボックスに固定できるサオ掛けもあると良い。固定式から脱着式までさまざまな種類があるので、釣具店でウキダンゴ釣りに適したサオ掛けをお勧めしてもらおう。サオ掛けにサオを置き、両手が使える状態にして、ハリを通したさしエサをダンゴに包み、両手でダンゴを握る。

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ダンゴとさしエサ(提供:週刊つりニュース中部版 佐々木博司)

続いてダンゴを混ぜるバッカンだが、四角いものではなく、丸型のウキダンゴ釣り専用設計のものが混ぜやすい。そして水くみバケツ。これはダンゴを混ぜる際に海水を入れるために必要だ。釣りの最中に手を洗いたいときにも重宝する。

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丸型のバッカン(提供:週刊つりニュース中部版 佐々木博司)

また、ダンゴに海水を入れる際には、500cc量カップも必要になる。100円ショップなどで購入しておこう。

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水くみバケツも必須(提供:週刊つりニュース中部版 佐々木博司)

タモも必要だ。基本的に堤防での釣りなので、魚を取り込む際に必要になる。

伸縮するタイプの一般的に磯ダモと呼ばれているものが良く、長さは海面から堤防足元までの高さに比例するが、5mほどが良いだろう。タモ枠の直径は45cmあれば大物が掛かってもトラブルが少ない。

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タモ(提供:週刊つりニュース中部版 佐々木博司)

最後に、道具を運ぶためのキャリーカート。非常に便利なアイテムで、何度も荷物を持ち運ぶ必要がなくなり、重い荷物も最小限の力で運べる。

ステップ4:さしエサとダンゴの選択

ひと通りの仕掛けや道具が分かったところで、いよいよ要となるさしエサとダンゴの選択。私がこだわりを持ってお勧めしたいのは、さしエサとダンゴは同一メーカーを使うことだ。

理由は、メーカーがダンゴの開発時に使用するのは同じメーカーのさしエサであり、相性が良いためだ。具体的には、ダンゴに入っている成分とさしエサの成分が一致していることが多く、魚が違和感なく捕食するから。

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いぶし銀に魅了される(提供:週刊つりニュース中部版 佐々木博司)

ダンゴエサの配合

ここでは私が愛用しているマルキユー製品をベースに説明していこう。用意するダンゴ材は、ウキダンゴX4kg入り。これがベースになり、この量で4~5時間ほど楽しむことができる。

基本的には、パッケージの裏側に記載している通りのものを釣具店で購入して配合するのだが、ここでは秘伝のレシピを紹介したい。

配合剤は全てマルキユー製品だ。ウキダンゴX1袋に対し、オカラだんごを計量カップで500cc、細びきさなぎ25cc、チヌスパイス25cc、活さなぎミンチ激荒4分の1袋、解凍済みアミエビ50ccに海水400ccを入れて混ぜる。

ムラがないように均等に混ぜ込むことがポイントだ。目安としては、3分ほどかけて混ぜると良い。

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オニギリのように握る(提供:週刊つりニュース中部版 佐々木博司)

さしエサについて

次にさしエサだが、この釣りのメインさしエサとなるのがオキアミだ。オススメはマルキユーくわせオキアミスーパーハードのLサイズと練りエサのエサ持ちイエロー。その他、ダンゴ材を配合する際に使った活さなぎミンチ激荒に入っているコーンとサナギを使用する。

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さしエサ(提供:週刊つりニュース中部版 佐々木博司)

エサの使い分け

エサの使い分けは、オキアミ、練りエサ、コーン、サナギの順番で使うと、クロダイに見切られにくく、数釣りパターンに入ることが多い。クロダイは非常に学習能力の高い魚で、同じさしエサを使い続けると違和感を覚えて捕食しなくなる。仮にオキアミで釣れ続けていても、意図的にローテーションすることで爆釣パターンに入るといった寸法だ。

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専用のヒシャクがあると投げやすい(提供:週刊つりニュース中部版 佐々木博司)

ステップ5:タナの設定

これが最後のステップのタナの設定。この釣りにおいて最も重要な設定で、いくらダンゴとさしエサの使い分けが良くても、タナが狂っていると結果が出ない。逆に言えば、ダンゴの握り加減とタナが合っていれば、あなたはその日堤防のヒーローになれるだろう。

では、ここから具体的にタナの設定について説明していく。この釣りは海底にいるクロダイを狙うので、基本的に水深5mであればウキ下のタナは5mとなる。

潮流を考慮した調整方法

しかし、大体の海は潮の干満で流れが生じてしまうため、ダンゴからさしエサが出るまでの時間、仮に1分くらいとしたら、その1分の間に潮の流れに押されてウキが沈み、さしエサがダンゴから出るころには水面下1mほど沈んでいる状態になる。

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銀鱗に心が踊る瞬間(提供:週刊つりニュース中部版 佐々木博司)

そうなると、ダンゴからさしエサが出るときウキは勢いよく浮上してくるため、その先に付いているさしエサも必然的に勢いよく引っ張られ、さしエサが不自然な動きをしてしまう。こうなると、警戒心の強いクロダイは、まずさしエサを捕食しない。

ではどうしたら良いか。答えはウキ止めイトをさらに深い側へズラすのだ。水深5mの場合、6mほどにタナを深くする。そうすると、仕掛けが斜めになるためウキに掛かる横の力が軽減し、ウキが潮流の影響を受けづらくなり流れに負けて沈むことが軽減される。

さしエサがダンゴから出る瞬間も、ウキがさしエサを引っ張ることが軽減されるので、自然な動きでさしエサが抜け出ることになる。それができれば大チャンスの到来だ。

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時合いには一気に数を伸ばせる(提供:週刊つりニュース中部版 佐々木博司)

アタリを出しやすくする工夫

しかし、ここで一つ注意が必要になる。タナを深くすれば深くするほどウキの浮力が及ぼすさしエサの不自然な動きはなくなっていくが、同時にクロダイが捕食した際にウキにアタリが出にくくなるといったデメリットも生まれる。

タナ調整のコツは、少しずつ深くしていきながら、さしエサを引っ張り過ぎず、またアタリも出やすいタナに調整すること。これが爆釣のカギとなるのだ。

流れが速いときの対応

最も困るのは、タナを深くしているのにも関わらず、流れが速すぎてウキが沈んでしまうときだが、そのときはダンゴの握り回数を少なめにして30秒ほどでダンゴからさしエサを出してやれば、違和感なくクロダイにさしエサを捕食させることができるだろう。

釣り場を守る心構え

以上となるが、最後に爆釣必須アイテムとしてもう一点紹介したいものがある、それはゴミ袋。近年、堤防のゴミ問題で立ち入り禁止の釣り場が増えている。釣り場がなくなってしまっては、1匹釣ることもできなくなってしまう。堤防や釣り場をキレイに維持することこそが爆釣への道だと私は信じている。

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釣り座をキレイにして帰ろう(提供:週刊つりニュース中部版 佐々木博司)

この楽しい釣りを後世まで残せることを願いつつ、締めとさせていただきたい。

<週刊つりニュース中部版 佐々木博司/TSURINEWS編>

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