こどもの頃、大人気のイルカショーを見て「イルカってすごく賢くて可愛いな」と感じていたあなた。実はその「イルカ」が小型のクジラだったと知ったら、驚きませんか。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
イルカとクジラの違い
実はイルカとクジラは、生物学上は同じ仲間「クジラ目」に属します。しかも、イルカとクジラを区別する基準は成体になった時の大きさだけなんです。
一般的には「イルカ」と呼ばれるのは全長4メートルより小さいもの、「クジラ」と呼ぶのは4mを超える大型のものと区別されています。

つまり、生物学的には同じクジラ目なのに、大きさで名前が変わるというわけです。
イルカは歯を持つクジラ(歯クジラ)の一部で「ハクジラ亜目」に属します。ハクジラ亜目は鯨下目(鯨類)の中でも小型の種が多いですが、シャチやマッコウクジラなど一部大型の種も含まれます。
一方で、シロナガスクジラやザトウクジラは「ヒゲクジラ亜目」に分類されています。大型の種が多いヒゲクジラ類は、歯の代わりにヒゲを使って海水を濾し、小さな生き物を捕食します。
このように、食性も体の構造も異なりますが、どちらもクジラ目の仲間なのです。
ゴンドウクジラとは?
「イルカ=小さくてかわいい」「クジラ=大きくて雄大」という印象は、名前による印象の違いがあるに過ぎないということですね。4mを区切りに名前が変化するというのも、あくまで基準であって明確な決まりはありません。
実際に「ゴンドウクジラ」と呼ばれる小型の鯨類がいますが、体長は2~5mほどで、ハナゴンドウやオキゴンドウなどさらにいくつかの種類に分類されます。
ゴンドウクジラのグループは、分類上はハクジラ亜目マイルカ科に属する小型のハクジラ類。一般的にはイルカと呼ばれるサイズの種類です。
その名前の由来は「巨頭」からだとか。大きなクジラのように丸い頭が特徴です。
水族館でのゴンドウクジラ
日本各地の水族館で飼育されており、筆者も実際にイルカのパフォーマンスだと思って見ていたら、ゴンドウクジラの一種、オキゴンドウと紹介されて衝撃を受けました。私が見たショーに登場したゴンドウクジラはイルカと同じように、頭が良く、人懐っこく、とても可愛らしい生きものでした。
ショーの最中に一頭だけ上手にジャンプができずにスネている子がいて、飼育員さんに「この子は負けず嫌いなんです」と紹介されていたことをよく覚えています。

ちなみにシャチは、その大きさからクジラの仲間と思われがちですが、実はマイルカ科に属する“最大のイルカ”です。成体は全長9.5mにも達しますが、イルカ科に分類されているから不思議です。
イルカとクジラとシャチ
イルカとクジラは分類上は同じ仲間であり、区別は「大きさ」や「見た目の印象」による便宜的な呼び分けにすぎません。
全長4m以下なら「イルカ」、それ以上は「クジラ」と呼ばれる。これはざっくりとした定義に過ぎません。

このように、見た目では判断しにくいものの、「呼び名=印象」になっている生きものは意外と身近にいます。
イルカ・クジラの違いを知ることで、ほかの生き物を見る目も一段と深くなるはずです。
<halハルカ/サカナトライター>