7年9か月の間続いていた黒潮大蛇行が、ついに終息した。漁業関係者や釣り人の間では「そろそろ終わるのではないか」との見方も出ていたが、実際に黒潮が通常のルートに戻ったことで、今後の海況や釣りへの影響に注目が集まっている。

例として、サンマの漁獲量は昨年の1650倍になっているらしい。

(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター・井上海生)

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「黒潮大蛇行」とは?

黒潮とは、日本の南を流れる温かい海流のことで、フィリピン東方から始まり、台湾の東側を通って日本の南岸を北東方向に流れていく。通常、この黒潮はまっすぐな経路で流れるが、数年に一度、流れが大きく蛇行し、紀伊半島沖から伊豆諸島付近を大きく外れる現象が起こる。これが「黒潮大蛇行」である。

黒潮大蛇行が起きると、紀伊半島から関東にかけての沿岸では黒潮が遠ざかる形となり、海水温が例年よりも低下しやすくなる。結果として、沿岸で見られる魚種や回遊パターンに大きな変化が起きることから、漁業やレジャー釣りにおいては極めて重要な海況変化とされている。

2025年に解消

今回の大蛇行は約7年にわたって続いていたが、2025年夏、ようやくその蛇行が解消され、黒潮が本来の流路に戻ったと海洋研究機関が発表した。

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黒潮大蛇行終息(提供:TSURINEWSライター・井上海生)

浅場の釣りに好影響か

黒潮が通常のルートに戻ったことで、温かい海水が再び太平洋岸の沿岸部に押し寄せるかたちとなる。特に、関東~東海地方の浅場では、水温の上昇によって魚の活性が高まり、釣果の改善が期待される。

これまでは水温が低く、魚の動きが鈍かったポイントでも、今後はクロダイ、メジナ、アオリイカ、シロギスといった浅場で人気のターゲットが活発になる可能性がある。

実際、各地の釣果情報でも「これまで渋かったエリアで急にアタリが増えた」といった声が出始めており、釣り場の見直しが求められるタイミングに差し掛かっている。

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浅場の回遊魚も増えるかも(提供:TSURINEWSライター・井上海生)

沖の大型魚は回遊場所に変化も

一方、沖の釣りに関しては注意が必要だ。黒潮が沿岸寄りに戻ることで、これまで接岸していた暖水性の大型魚――たとえばキハダマグロやカツオなど――が再び沖合に移動する可能性がある。特に、関東沖で人気の高かったマグロ類の釣りに関しては、これまで実績のあった「手堅いポイント」が外れる可能性も否めない。

釣行を計画する際は、これまでの「定番」ではなく、より広範囲にわたって情報収集を行い、場合によってはこれまで敬遠されていたエリアを試す勇気も必要だろう。

実績ポイントの「再編」が起きるか

近年の釣果において「鉄板」とされてきたポイントは、黒潮の大蛇行という異常海況の中で形成されたものであった。そのため、今後はそのような実績に頼ることなく、魚の回遊や海水温、潮の流れといった要素をもとに、場所を見極め直す必要が出てくる。

不漁が続いていた場所が急に好調になる可能性も十分にある。実際に、かつては見向きもされなかった地磯や小規模港湾部で釣果報告が増えているケースも見受けられる。こうした変化にいち早く対応できるかどうかが、今後の釣果に大きく影響してくるだろう。

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タチウオの回遊ルートも変わるか?(提供:TSURINEWSライター・井上海生)

今後しばらくは、これまでの実績や固定観念にとらわれず、「場所を探り直すつもりで釣る」姿勢が求められる。魚は環境に敏感で、海流の変化に応じてその動きを変える。すなわち、釣り人もまた、海の変化に柔軟に対応できる存在であるべきだ。

黒潮がもたらす恵みは大きい。だが、それを享受するには、海の声に耳を澄まし、魚の気配を読み取る力が問われる。大蛇行が終わった今こそ、新たな釣り場を開拓し、次なる「実績ポイント」を自らの手で築くチャンスである。

特に潮の流れに影響を受けやすい回遊魚を狙うアングラーは、近年の傾向を今年もアテにするのではなく、むしろ積極的に探り直していく必要がありそうだ。

<井上海生/TSURINEWSライター>

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