鮎釣り師が嫌う「鮎釣りの税金」ボウズハゼ。しかし食べてみると絶品です。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
アユ釣りの厄介ゲスト
日本の淡水魚で、知名度・人気いずれの面でも頂点に君臨するアユ。食材としてのみならず釣魚としても大変人気で、シーズンになれば独特の装備を携えた鮎釣り師たちが川にずらりと並びます。
ボウズハゼ
鮎釣りは多くの場合「友釣り」という方法で釣られますが、これはアユ同士が縄張り争いする習性を用いた釣法であり、基本的にアユしか掛かってきません。そのためアユ以外の邪魔者が釣れることはあまりないのですが、この釣法でも掛かってきてしまうゲストもいます。それがボウズハゼです。

ボウズハゼはアユと同じようなところに生息し、アユと同じく岩に付着する藻類を餌にしています。そして彼らも縄張りを持っており、友釣りの囮鮎にアタックしてしまうのです。ボウズハゼがかかると都度囮鮎を回収しなくてはならず、徐々に疲れて泳がなくなってしまうため、鮎釣り師にとってボウズハゼは厄介な存在です。
狙って釣ると面白い
そんなボウズハゼですが、実は狙って釣ってみると意外と面白かったりします。
まずボウズハゼはハゼの中でも比較的大きな種で、掛かるとよく引きます。加えて闘争心が強く、縄張りの岩からかなり離れた場所までも追い回しに来ます。警戒心もアユと比べると低いため、足元に囮を垂らし、目の前で掛かる様子を見ることもできます。

そして、アユは生きたアユ、もしくはアユに似せたルアーしか追わないのに対し、ボウズハゼはソフトルアーや消しゴムのような物体でも盛んに追い回します。もちろん釣れたボウズハゼを囮にすればよりかけやすくなります。なおその場合、囮のボウズハゼの吸盤状になった胸鰭に切れ目を入れて、石にくっつかないようにするのが大事です。
びっくりする美味しさ
ボウズハゼは一般的に、食用とされることはありません。唯一宮崎県でのみ、海から遡上してくる稚魚を漁獲して食べる文化があるそうですが、成魚は食べられていません。
では味はどうなのかというと、これがかなり美味しいです。
ボウズハゼはアユと同じ場所に生息し、アユと同じものを食べているためか、アユと同じような爽やかなスイカ香を持っています。また内臓にはほろ苦さとコクが有り、まるで上質なアユとサンマの内臓の魅力を併せ持ったような味わいです。

そのまま塩焼きにしても美味ですが、焼いたものをご飯に炊き込んで作る鮎飯ならぬ「ボウズハゼ飯」が絶品です。ただ、サイズの割に中骨と頭骨が硬いので、小さくて面倒ですが骨は取り除いてから混ぜたほうが良いかもしれません。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>