夏から晩秋にかけて沖釣りはさまざまなターゲットでにぎわいを見せる。中でも人気が高いのがタチウオだ。
(アイキャッチ画像提供:週刊つりニュース中部版編集部)
中部エリアのタチウオシーズン
中部エリアでタチウオが狙えるのは、おひざ元の伊勢湾口、静岡の駿河湾、そして北陸の富山湾だ。

伊良湖沖は7月から
伊勢湾口では、伊良湖沖を中心にジギングやテンビン吹き流しで狙うことが多かったが、昨今はテンヤの人気が急上昇。誘って誘って掛けアワせるゲーム性に加えて、テンビンやジギングと比較して良いサイズを狙えることも人気の要因のひとつのようだ。
シーズンは7月中ごろから。初期は数は出ないものの出れば良型。指6本以上のドラゴンと呼ばれるサイズが高確率でヒットしてくる。その後は指2~3本クラスの小型の群れが大挙して入ってきて、秋が深まるごとに良型が交じる確率が高くなる。
そして数型ともに最も熱くなるのが、10月以降から11月中ごろまで。11月の終わりにさしかかると、狙う船も少なくなってシーズンオフとなる。
富山湾と駿河湾は10月から
一方富山湾や駿河湾では、10月ごろからシーズンインし、年が明けて2月ごろまで続く。伊勢湾のようなドラゴンサイズは少ないものの、指3~4本クラスの数釣りがコンスタントに楽しめる。
テンヤタチウオとは
ここでタチウオのテンヤ釣法について説明しよう。仕掛けはシンプル。メインライン+リーダーの先にテンヤを付けるだけ。
初めてテンヤを見た人は、そのハリの大きさに驚くと思う。「いくら大きなタチウオでもこのハリは口に入らないのでは……」と感じるはずだ。テンヤ釣法とは、エサを食い込ませてそのハリをタチウオの口の中に掛けるのでなく、エサを食いにきたタチウオをその大きなハリで口の周りに外掛かりさせる釣りなのだ。

タチウオはエサを見つけると、下から食い上げるようにバイトする。そのバイトした瞬間、大きなハリで口周りに掛けるのだが、それゆえジグヘッドなどとは違ってハリ先が下向きになっている。
もちろんバイトの一瞬でハリを掛けるのは難しい。だがタチウオは貪欲な魚。一度エサをロックオンすると、繰り返ししつこくバイトしてくる。つまり何度も空振りしても、エサが残っている限りハリ掛かりさせるチャンスは残る。
活性の高いときは一気に食いつき穂先を持っていったり、下から勢いよく食い上げて穂先からテンションが抜けるようなアタリを出すこともある。

テンヤタチウオのロッド
さて使用するタックルだが、細かいアタリまで感知できる穂先と大きなハリを固い口周りに貫通させるだけのバットパワーを持ったサオが必要となる。一般的にテンヤタチウオ用として販売されているものは、9対1もしくは8対2調子のものが多い。

テンヤタチウオのリール
リールはマストではないが、カウンター付きのベイトリールがお勧め。イカメタルほどではないが、ヒットレンジ(タナ)をある程度把握しておきたい。そうすれば、その周辺を効率良く攻めることができるわけだ。もちろん電動リールでもOK。というか最近は電動を使うアングラーが多数派だろう。
テンヤタチウオのライン
ラインはPE1.5~2号が適当。特に潮が速く複雑な伊勢湾口では、あまり太いラインはオマツリの原因になる。太くても2号までにしておきたい。
その先にリーダーとしてフロロカーボン8~10号を2~3m接続する。接続は摩擦系のFGノットが好適。テンビンやジギングと違ってテンヤが大きいので、リーダーを切られることはあまりない。
よってさらに太いセカンドリーダーを入れる必要はない。リーダーの先には、テンヤをすぐに交換できるようベアリング入りのスナップスイベルを結んでおく。

テンヤについて
テンヤは各メーカーからさまざまなタイプが販売されている。オモリとハリが一体になったものが一般的だが、ハリの部分だけ交換できたりハリがある程度上下に稼働するものなど。
種類が多くて迷うかもしれないが、最初は一般的なオモリ+ハリ一体型で良いと思う。重さは伊勢湾口であれば50~60号。駿河湾や富山湾では30~50号がよく使われる。

テンヤのカラー
カラーについては諸説あるが、グローがある程度有効だと思う。特に夜釣りがメインの富山湾や駿河湾ではその傾向が顕著だ。だが絶対というわけではない。あまり比較したことはないが、カラーでそこまで差が出るかと言われれば??だ。よく見るゼブラグローやオールグローはいくつか持っておいて損はない。
ただジギングでは、カラーで釣果に大きな差がつくこともあり、赤金や紫が圧倒的に強いことがある。あくまで参考程度だが……。
エサの付け方
前述の通り、エサはイワシを使うことが多いので、ここではイワシの付け方をメインに説明したい。テンヤはエサを固定するため、ハリの上部に3~4本突起が出ているので、まずこの突起にイワシを腹から刺す。

そして次は細いワイヤー。このワイヤーはテンヤに付属しているはずだ。
イワシの肛門部分まで巻いたら、今度は折り返して頭部方向へ巻いていく。そして最後はラインアイにぐるぐる巻きつけて固定。これで完成だ。
このイワシを付けた状態のテンヤを、釣行前夜までにあらかじめ3~5個ぐらい作っておこう。そうすればポイント到着後すぐに釣りを始められるし、イワシをタチウオにぼろぼろにされたとしても、テンヤを取り替えるだけですぐに次を投入できる。朝の貴重なマヅメタイムをロスせずに済むというわけだ。
その他便利なアイテム
他にぜひ持っておきたいアイテムとして、フィッシュグリップ。ハサミタイプのものが使いやすい。タチウオは歯が非常に鋭く、少し触れただけで人間の皮膚などスパッと切り裂いてしまう。

釣ったタチウオはエラより少しだけ尻尾側をしっかりグリップで挟んで、固定してからハリを外すようにしよう。あまり尻尾側をつかむと、頭をヘビのように曲げてがぶりとやられてしまう。
あとはキッチンバサミ。

クーラーは最低でも30リットルのものは持っていきたい。氷に海水を入れ、海水氷にしてタチウオを入れておけば、美しい銀箔そのままの姿で持ち帰ることができる。
テンヤタチウオ実釣
さてここから実釣編。船長から開始の合図が出ると同時に、水深と攻めるタナもマイクで放送されるはず。例えば「水深80mです。60~40mを探ってください」といった具合だ。
その場合だと、いったん底まで落とした後65㍍ぐらいまで巻き上げ、ジギングのようにワンピッチジャークを数回入れて止める。アタリがなければさらにワンピッチを数回入れて止める。この繰り返しで、指定されたタナの上限まで上げていく。
大抵はその途中でアタリが出るが、アタリはコツンとくるものやゴツゴツッとくるものまでさまざまだ。

アワセ方
基本はアタリが出たら即アワセ。掛からなければそのままワンピッチジャークを2~3回入れ、上へ上へと誘い上げていく。貪欲なタチウオはエサを逃がすまいと、上へ追いかけてくる。
最初のアタリで掛ければいいが、掛からなければどんどん上へ誘い上げていこう。焦らされたタチウオはムキになってエサにアタックし、どんどんアタリが大きくなる。しつこくエサを追ってくれれば、いつかは必ずハリ掛かりするはずだ。
大物がヒットしたら
もしドラゴン級がヒットしたら、根掛かりのようにその場から動かない。それでも焦らず、テンションを抜かないように巻き続けよう。
バレたと勘違いするのが、ハリ掛かりしてから上を泳いでくるとき。一気に軽くなって「切られた!」と思ってしまう。もちろん切られた場合もあるのだが、そんなときは迷わずリールを速巻きしよう。上へ泳いできたのなら、再び重量感が伝わってくるはずだ。
水面に浮いてきたら、よほど大型でない限り迷わずリーダーを持って一気に引き抜く。水面でモタモタしていると、外れてしまう。

<週刊つりニュース中部版編集部/TSURINEWS編>
この記事は『週刊つりニュース中部版』2025年10月3日号に掲載された記事を再編集したものになります。