とても有名な魚の名前が、実は想像と全く違うものに当てられていることがあります。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
メバルじゃないけど「メバル」と呼ばれる魚たち
北海道から九州までの広い範囲に生息し、身近な魚の一つであるメバル。メバル科に含まれるもので考えれば130種類以上、メバルと呼ばれるものだけでも10種以上おり、メバルという名称は一般的なものと言えます。
しかしその一方で、メバルとは分類上全く縁もゆかりも無いのに、メバルと呼ばれている魚もたくさんいます。その一つがオオメハタ。これは一般的にシロムツと呼ばれる魚で、ホタルジャコ科というグループに含まれています。ほかには小型のハタの仲間であるアカハタ、アカハタモドキなどもメバルと呼ばれることがあります。
面白いことに、淡水魚でもメバルと呼ばれるものがあります。それはオヤニラミ。小型の淡水魚ですが確かにサイズの割に目が大きいため「目張」という言葉もしっくりきます。
魚ではない「カサゴ」とは
メバルに近い仲間のカサゴ。かつては「カサゴ目フサカサゴ科」というグループに含まれていましたが、近年の再分類により「メバル科」に含まれることになりました。釣り人にとっては「小型でトゲトゲの磯魚で、目がくりっとしたものがメバル、目が小さいものがカサゴかソイ」というイメージが一般的なものではないかと思います。
そんなカサゴにも、全く縁もゆかりも無いのに同じ名前で呼ばれている存在があります。しかもそれは魚ですらなく「貝の一種」です。
宮崎県の一部地域では、バテイラという食用巻き貝をカサゴと呼ぶことがあるそうです。
ハゼ科でないのに「ハゼ」
メバル科からはちょっと離れますが、これらの魚と同じようなものが他にもあります。それがハゼ。
「ハゼ科ではないハゼ」の代表はおそらくトラギスでしょう。トラギスはトラギス科に含まれる魚で、トラのような横縞模様があり、シロギスと同じような細長い体型をしていることからこのような名前がつけられました。しかし実際はシロギスのようなシャープな顔つきではなく、ハゼに似た丸みのある頭部をしていることからトラハゼと呼ぶ地域の方が多いようです。
また、ゼゼラという淡水魚をハゼと呼ぶ地域があるそうです。この魚はコイ科の魚ですが、川底にいて土をほじくり返すようにして餌を探します。その生態がハゼに似ているために「ハゼの仲間だ」と思われたのかもしれません。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>
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