ミズカマキリという水生昆虫を見たことはありますか?昔は身近な川でよく見られましたが、今では出会う機会が少なくなりました。細長くスマートな姿の一方で意外な特技を持っており、バケツなどに入れて観察すると面白い発見があります。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
ミズカマキリとは?
ミズカマキリ(学名:Ranatra chinensis)は、最大で45mmにもなるカメムシ目タイコウチ科の肉食水生昆虫。朝鮮半島から中国、台湾、ロシア極東部、日本全国に分布。タイコウチと同じ水生カメムシ類の一種です。
水中で獲物を待ち構えるポーズは、まるで枯れ草や枯れ木の枝のようにしか見えません。忍者が木に化けるように、ミズカマキリも木に擬態しているのでしょう。
ミズカマキリの特徴
ミズカマキリの特徴は、名前の通り「カマキリのような前足」。そして、スマートなボディと長い手足です。
この細長い身体は、飛翔に適していて、飛行能力は他の水生カメムシ類の中でも優れています。
そのため、環境変化にも適応しやすい生きものと言えるかもしれません。環境悪化で生息が難しい場合、別の水域へ飛んで行くことが可能だからです。
ただ、農薬に弱く、個体数は全国的に減少傾向にあるそう。県によっては絶滅危惧種に指定されています。
ミズカマキリの捕食と呼吸
ミズカマキリは、カマキリのような長い前足で水生昆虫やおたまじゃくし、小魚などを捕らえ、カメムシ特有の“ストロー状の口”を突き刺して消化液を流し込んで溶けた肉を吸います。これを体外消化といいます。
ミズカマキリの遊泳能力は低いため、擬態して獲物を待ち続けるという狩りのスタイルを取るそうです。
尾の呼吸管で空気を吸う
ストロー状になった尾(呼吸管)から空気を取り込んで呼吸します。
狩りは忍耐強く水中でとどまる必要があるため、長い呼吸管を水面から出して、呼吸しながら獲物を待たなくてはいけません。
それぞれの生物が獲得してきた進化の神秘をかいま見ることができますね。
肉食魚とミズカマキリ
ガサガサで採集した肉食魚(ドンコ、オヤニラミ)とミズカマキリを一緒の水槽に入れていたのですが、どうもミズカマキリが肉食魚を狙っているようなそぶりを見せていました。
しかし、ミズカマキリは水深が深いところを好むため、底に行こうとしているだけかもしれません。襲うそぶりは見せなかったので、呼吸して底に行っただけなのでしょう。
こんなシーンはなかなか撮影できないので、ドキドキしました。
みなさんも川をガサガサして色々な生きものを見つけて観察してみてください。きっと面白い発見がありますよ。
しかし、絶滅危惧種に指定されている生きものは、観察したらすぐその場に逃がすことは忘れずに。自然環境に配慮しながら、生きものたちと触れ合い、学んでみてくださいね。
<額田善之/サカナトライター>
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