「サメ」と聞くと、鋭い歯や襲われる恐怖、そしてサメを題材にした映画をイメージする人が多いのではないでしょうか。しかし、実際には大人しいサメも多く知られています。

また、サメの世界は奥深く、見た目もユニークな種類がたくさんいるのです。今回は、そんな“サメっぽくないサメ”や“ユニークなサメ”たちに注目し、サメにおける多様性とその魅力を紹介します。

【『サカナト』で読む】

(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)

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凶暴なサメはごく一部?

サメというと危険なイメージが強く、特にホホジロザメやイタチザメではその傾向が強いでしょう。

しかし、実際に人間を攻撃する可能性があるサメは限られており、世界中に500種以上存在するサメ類の中で、実際に人を襲った記録がある種はごく僅かです。

「サメは怖い」の先入観は間違い? ユニークで全然サメっぽくないサメたちの世界
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こわいサメの代表格ホホジロザメ(提供:PhotoAC)

また、確かにサメが人を襲った例はあるものの、サメが人を好んで食べるのではなく、餌と間違えて襲ってしまった可能性などが指摘されています。

ちなみにサメによる年間の被害件数は、雷に打たれる確率よりも低いという研究報告もあり、必要以上に恐れることはないのかもしれません。

ただし、サメの生活圏に入る際には十分に注意する必要があります。また、無暗にサメを刺激したり、餌を与えたりするのはやめましょう。

ジンベエザメの意外な食性

「サメ」と聞くと肉食のイメージが強い中、世界最大の魚類であるジンベエザメはその常識を覆します。

なんと、本種は最大で体長12mを超えるにも関わらず、主食はプランクトンや小魚といった小型生物なのです。この食性は大型の海洋生物で見られ、鯨類のシロナガスクジラもその一例といえるでしょう。

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ジンベエザメ(提供:PhotoAC)

ジンベエザメはこのような食性を持つことから、食事方法も肉食のサメとは異なり、大きな口を開けて水ごと吸い込み濾し取って食べる「ろ過摂食(フィルターフィーダー)」という方法をとっています。ホホジロザメのように鋭い歯で獲物を捕らえるタイプとはまったく異なりますね。

また、ジンベエザメは性格も非常に大人しいとされており、接触に注意すれば一緒に泳ぐことも可能です。

その姿はまるで「海の巨人」ならぬ「優しい巨人」。ダイバーや水族館ファンに愛されるのも納得です。

サメにも個性派がいる

サメの中には、ちょっとユーモラスな見た目や不思議な特徴をもった種も存在します。

とぼけた顔が魅力のネコザメ

たとえば、ネコザメ。大きな目と丸みを帯びた頭が特徴で、「とぼけた顔」とも言われる愛嬌たっぷりの外見をしています。

性格も温和で、昼間は岩陰などでじっとしており、夜間にゆっくり活動するおっとりさん。らせん状の独特な形をした卵もユニークで、水族館でも人気の高い種です。

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海底を歩くネコザメ(提供:PhotoAC)

卵の形も個性的な小型ザメ

卵といえば、小型のトラザメの卵も特徴があります。細長い袋のような形をしており、「人魚のサイフ」とも呼ばれています。深海の海底を泳ぐ、おとなしい性格の持ち主です。

海底を歩くエポーレットシャーク

もうひとつの注目種がエポーレットシャーク。インドネシアやオーストラリアの浅瀬に生息する日本にはいないサメです。

本種の特徴は、何と言っても胸びれと腹びれを使って海底を歩くように移動する姿。肺に近い機能をもつ器官を活かし、酸素が少ない場所でも短時間なら“陸に上がることもできる”という特異な能力も備えています。

「サメは怖い」の先入観は間違い? ユニークで全然サメっぽくないサメたちの世界
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イヌザメ(提供:PhotoAC)

名前は似ているが別種のイヌザメ

また、サメらしからぬ種類として、イヌザメをあげさせていただきます。ネコザメと似たような名前ですが、ネコザメ目ネコザメ科に属するネコザメに対して、イヌザメはテンジクザメ目テンジクザメ科に属するサメです。

テンジクザメ科にはあのジンベエザメも含まれます。

イヌザメは、黒と白の縞模様をした幼魚時代が特に特徴的。大人になると、全身が灰色がかったような色になります。岩陰に隠れてじっとしていることが多い、穏やかな性格をしています。

多様性に満ちたサメの魅力

「サメ=こわい」という先入観を取り払えば、その世界は驚くほど多彩で興味深いものになります。映画やニュースだけでは伝わらない、サメの「本当の姿」を知ることができれば、水族館での楽しみ方も一層広がるはずです。

次に水族館を訪れるときは、背びれの鋭いサメだけでなく、とぼけた顔のネコザメや、海底をよちよち歩くサメたちにも目を向けてみてください。あなたの中の「サメ像」がきっと変わるはずです。

<せんば千波/サカナトライター>

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