今年も横浜釣りフェスに行ってきた。毎年開催され、数万人規模の来場者が全国から集まる、まさに年に一度の“釣りの祭典”である。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター・夏野)
釣りフェス
釣りフェスのイベントの目玉といえば、今年発表される最新ロッド、最新リール、話題の新製品。どのメーカーのブースにも魅力的な商品がずらりと並び、どこを見てもワクワクする光景が広がっている。
しかしそんな華やかで刺激的な空間の中で、意外にも最も心を掴まれたブースは賑わいの中心から少し離れた場所にあった。
伝統工芸としての釣具の世界
日本には、地域に根ざし、長い年月をかけて磨かれてきた釣り道具がある。釣りフェスの会場には、そうした伝統的な釣具を扱うブースも出展されており、そこには独特の空気が流れていた。今回は、その中でも特に印象に残った2つの伝統的な釣具を紹介したい。
世襲制の江戸和竿
江戸和竿は、世襲制の伝統工芸。今回お話を伺ったのは、江戸時代から続く江戸和竿の老舗「東作」のご主人 松本耕平さんだ。
1本の和竿が完成するまでには、およそ半年の時間がかかる。竹の選別から始まり、火入れ、油抜き、削り、漆塗り――、その工程の合間には、素材を落ち着かせるための「待ちの時間」が何度も必要になる。
使い手との対話
江戸和竿は、職人が一方的に作る道具ではない。完成までの間に、顧客と何度もやり取りを重ねながら、完成形をすり合わせていく。釣りのスタイル、狙う魚、好みの調子、手に取ったときの感覚。
そうした細かな要望を受け止め、職人の経験と感覚で一本の竿へと落とし込んでいく。
完全な一点物
江戸和竿は完全オーダー制。しかし、和竿が唯一無二である理由は、それだけではない。素材となる竹は、すべて天然素材。育った場所、年数、太さ、繊維の詰まり具合など、同じ条件の竹は存在せず、この世に二つと同じ素材はない。
設計が同じでも、素材が違えば仕上がりは変わる。注文内容、職人の技、そして自然が生み出す個性。そのすべてが重なって生まれる和竿は、完全な一点物の「作品」なのだ。
「作って終わり」ではない
和竿は、完成してからも変化を続ける。使い込まれ、手に馴染み、修理を重ねながら、親から子へ、さらに次の世代へと受け継がれていく。半年かけて生まれ、何十年も使われ続ける。最新タックルが並ぶ会場の中で、この圧倒的な時間軸の違いに触れたことが、強く心に残った。
播州毛鉤が紡ぐ200年の技
播州毛鉤は、約200年の歴史を持つ鮎毛鉤。目の前にすると、まず「釣具」という言葉が頭から消える。1cmにも満たない小さな毛鉤が、完成された工芸作品のように整然と並んでいるからだ。
艶やかな糸の重なり、わずかな角度で表情を変える羽根、光の加減で深みを増す落ち着いた色彩。その繊細さと完成度に、思わず目を見張ってしまう。
しかしそれは飾るための美しさではなく、流れの中で鮎に見せるために突き詰められた結果としての美だ。掌に収まるどころか指先にも乗るほどの小さな毛鉤の中に、200年続く技と感覚が凝縮されている。
伝統工芸士・横山禧一さん
ブースでお話を伺い、製作を実演してくださったのは横山禧一さん。通商産業省認定資格を持つ、日本を代表する播州毛鉤の伝統工芸師のお一人だ。
横山さんは、この技術を父親から学び、受け継いで来られたそうだ。数々の技を、隣で見て真似し身体で覚えてきたという。
圧巻の実演
製作の実演が始まると、ブースの空気がはっきりと変わった。周囲のざわめきも少し遠くに感じられる。横山さんの指先は、驚くほど静かだった。
細い糸を巻き、羽根を添え、締めていく。その一つひとつの動作に、迷いがない。急ぐわけでも、見せつけるわけでもない。
長年、何度も何度も繰り返し、磨いてきた技術だからこそ、最適な力加減と角度が自然と指先に現れる。一本の毛鉤が形になっていく様は、とても静かに流れる時間の中にあった。けれどその静けさの中には、親から子へ、さらにその先へと続いてゆく時間の層が、確かに感じられた。
気がつくとブースの前には人だかりができ、誰も言葉を発することなく、ただその手元を食い入るように見つめていた。量産品では決して生まれない、人の手の説得力。その場で見た手仕事は、「技術を受け継ぐ」という言葉が比喩ではないことを教えてくれた。
文化として生きる播州毛鉤
播州毛鉤を使った釣りは、日本鮎毛バリ釣り団体協議会によって守られ全国各地で釣り大会も開催されている。
父から子へ、そして未来へ。播州毛鉤は、今も使われながら生き続ける釣り文化だ。
知らない釣りに出会う最高の場所
釣りフェスを歩きながら、何度も思った。自分の知らない釣りの世界は、まだまだ広い。最新タックルの進化に触れながら、同時に自然と人、そして時間が積み重なって生まれる道具にも出会える。
<夏野/TSURINEWSライター>
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