真冬の釣行は、他の季節と同じ感覚で考えてはならない。低水温・低気温という環境は、魚だけでなく人間の行動や判断にも強く影響を与える。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター・井上海生)
釣行下限は気温2度
筆者の私見では、夜間釣行を含めた現実的かつ安全な釣行下限は気温2度前後だ。この温度帯までは、防寒対策と行動管理を前提にすれば、集中力を保った釣りが可能である。
しかし、気温が0度に近づくにつれて、指先や足先の感覚は急速に低下する。ロッドやリーリング以前に、歩行や足場確認といった基本動作に支障が出始める。これは単なる寒さではなく、事故リスクの上昇を意味する。
体感温度は実温よりはるかに重要
真冬の釣行において最も重視すべき指標は体感温度である。風が加わることで、体感温度は容易に氷点下へと落ち込む。気温2度でも、風があれば体感はマイナス2度前後になることは珍しくない。
筆者の感覚では、体感温度がマイナス2度付近になると、釣りは急激に苦行へと変わる。寒さによるストレスで思考は単純化し、「あと少し」「早く終わらせたい」という意識が強くなる。この心理状態こそが、最も危険である。
寒さは判断力と注意力を奪う
低温下では、人は確実に判断力を失う。足元の確認を怠る、無理な移動を選択する、防寒具の着脱を面倒に感じる。これらはすべて、寒さによる集中力低下が原因である。
特に夜間の釣行では、寒さと暗さが重なり、危険察知能力は大きく低下する。真冬の事故の多くは、技術不足ではなく「寒さによる判断ミス」から起きている。
海水温10℃以下は魚も限界域
人間だけでなく、魚にとっても真冬は限界の季節である。一般的に、海水温が10℃を下回ると、多くの沿岸の対象魚は代謝が大きく落ち、行動量が著しく低下する。
魚が完全に動かなくなるわけではないが、捕食頻度は減少し、動く理由がある時にしか反応しなくなる。つまり、魚は「釣れるが、動かない」状態に近づく。
あえて狙うならば、魚との距離が遠いルアーを使うのでなく、餌釣りでじっと体を動かさずにやるなどして寒さを戦う工夫をしよう。当然のことだが、生餌のほうが真冬はどんな魚も反応がいい。
魚の低活性化と人間の消耗は同時進行する
ここで重要なのは、魚の低活性化と人間の消耗が同時に進行するという事実である。魚は動かず、人は寒さで疲弊する。この状況では、長時間の釣行は合理的ではない。
釣果が出ない時間が続くほど、寒さによるストレスは増し、判断はさらに雑になる。
「まだ釣れる」と「行くべきか」は別問題
海水温が低くても魚が存在することと、その環境に釣り人が立ち向かうべきかどうかは別問題だ。釣れる可能性があるから行く、という判断は真冬には危険を伴う。
気温、体感温度、海水温、この三つがすべて低水準にある場合、釣りは魚との勝負ではなく、自分との消耗戦になる。真冬で最も避けるべきは、「寒さに耐えること」が目的化してしまうことである。釣りは我慢比べではない。寒さで視野が狭くなった状態は、最も事故に近い状態といえる。
真冬は、魚も人も限界に近い環境である。その中で釣りを成立させるには、無理をしないことが最重要条件となる。安全意識を保てない寒さなら、その日は「釣らない」という選択が正しい。
真冬の海は静かで美しい。しかし同時に、最も容赦なく、人の隙を突いてくる季節でもある。
<井上海生/TSURINEWSライター>
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