魚の中には、雄と雌でその価値が大きく変わるものが少なくありません。より高価な方だけたくさん手にしたい、そんな丸出しの欲望が形になったものがあります。

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トラフグの「雄」だけ育てたい!

冬の味覚の最高峰・フグ。なかでも最高級種であるトラフグ、そしてその雄だけがもつ「白子」は、我が国における最高級魚介食材のひとつです。

トラフグは白子(精巣)は超高級食材である一方、真子(卵巣)は猛毒で食用にできないため、雄と雌で価値が全く異なります。釣りでゲットしたときなど、嬉しさもそこそこに「雄かな、雌かな……」とドギマギしてしまう人も多いでしょう。

トラフグはオスでウナギはメス? 性別で価値が全く異なる魚たち
トラフグはオスでウナギはメス? 性別で価値が全く異なる魚たち
養殖トラフグ(提供:PhotoAC)

そんなトラフグの、「雄だけ選んで育てる」という夢の養殖技術がこのたび開発され、ニュースとなっています。長崎県職員が開発したこの技術はとてもユニークで、トラフグ同士ではなくなんとトラフグと「クサフグ」を交配させ、それを繰り返すことで子孫が雄のトラフグばかりになっていくのだそうです。

長崎県ではこの技術のおかげで、養殖トラフグの単価が1割も向上したといいます。

ウナギの「雌」だけ育てたい!

雄だけ育てる技術がある一方、逆に「雌だけ育てる」技術もあります。その技術が応用されているのは、日本の夏に欠かせないウナギ。

ウナギは流通するものの大多数が養殖ものですが、普通に育てると9割が雄になってしまうそうです。ウナギは雄より雌の方が大きくなる魚で、身質も雌の方が柔らかく美味だとされています。

トラフグはオスでウナギはメス? 性別で価値が全く異なる魚たち
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養殖のウナギ(提供:PhotoAC)

そんな中で先日、愛知県の水産試験場が、ウナギの餌に「大豆イソフラボン」を添加することで雌を大量に生み出すことに成功しました。大豆イソフラボンは女性ホルモンと構造が似ており、ヒトの健康成分としてもよく知られていますが、ウナギにも意外な効果をもたらすようです。

片方の性だけ欲しい!?魚たち

ここから先は、筆者が「雄(雌)だけ育てられたらいいのに……」と欲望丸出しになってしまうものについて挙げていきます。

まず一番に思いつくのは「サケ」でしょう。サケの真子はイクラとしていまや超高級食材ですが、白子は知る人ぞ知る珍味程度で、残念ながら他の魚のそれと比べてもあまり美味しくありません。雌だけ大量に育てられるとなれば、日本人なら皆心躍るでしょう。

それから「ボラ」。こちらも真子は超高級珍味カラスミの原料であり、キロ数千円の値をつけます。一方で白子は近年「白からすみ」の名前で脚光を浴びる食材ですが、卵巣の価格が高すぎる故に大きな価値の差が存在しています。

トラフグはオスでウナギはメス? 性別で価値が全く異なる魚たち
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マダラの白子(提供:PhotoAC)

一方で「雄だけ欲しいなあ」となるものの代表はマダラでしょうか。こちらも白子は菊子、たちなどと呼ばれ、クリーミーな舌触りが「海のミルク」と呼ばれる高級珍味です。一方で真子も煮付けなどで美味しいですが、近縁のスケソウダラのように生食での需要は多くなく、価値としては白子より大きく落ちます。我が国では深海魚なので養殖自体非現実的ですが、北欧ノルウェーではマダラの養殖が成功しているそうなので、なんとかして雄ばかり育てる技術が見つかって欲しいものです。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>

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