渓流師にとって欠かせない餌となるのが、渓魚が常食している川虫だ。川の中には実に様々な川虫が棲息しているが、これら川虫は使用する時期を使い分けることで、より渓魚達の「普段の生活」へと近づくことが出来、直接的に釣果へと結びつく。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター荻野祐樹)
時期による川虫の使い分け
まずは、普段渓魚達が「どのような川虫を」「どの季節に食べているか」という、いわゆる食性を知っていこう。
解禁直後
自然環境下の渓魚達は、真冬の間は捕食行動をあまり積極的に行わず、水底でじっとしていることが多い事が研究により判明している。
解禁直後の2月~3月は、徐々に摂食活動を活性化させる時期にあたり、この時期に多く見られるキンパクやヒラタ(オコシムシ)をよく食べる事が判っている。
4月
キンパクやオコシムシの羽化時期である4月頃は、これら水生昆虫の羽化直前幼虫や成虫を飽食している。また、釣り餌には向かない、非常に細く小さいクロツツトビケラ(黒く細長い木の枝状の生物)がよく腹から出てくるし、河川による違いはあるだろうがスナムシも時折見られる。また、ヒラタもよく食べているのだが、羽化時期にあたるオコシムシよりもナデムシが多い印象だ。
5・6月
気温が上がり始める5・6月は一気に陸生昆虫が増える時期で、大型個体は陸生昆虫を好んで食べていると思われる。とはいえ水生昆虫もある程度食べているようで、本流魚では特にクロカワムシやオニチョロの比重が一気に増す。
7月以降
大型個体はやはり陸生昆虫(落下昆虫)をメインに食べているように思われるが、ナデムシやクロカワムシもよく腹から出てくる。それ以外だとマゴタロウ虫も時折見られるし、川エビが出てきたこともある。20cm前後の個体は小さな羽虫やナデムシが多い様に著者は感じている。
クロカワムシの生態
ではここからは川虫の生態についてみていこう。前編ではキンパク・ヒラタ・ピンチョロに注目したので、今回の一種目はクロカワムシだ。
★★★過去記事リンク挿入:渓流餌釣りで使用する【川虫ってなにもの?】生態を知れば爆釣間違いなし?
何の幼虫?
クロカワムシは、ヒゲナガカワトビケラというトビケラの幼虫で、体長は2~3cm程度。その名の通り黒っぽい体色をしているのが最大の特徴だ。
長野県辺りで親しまれている食材・ザザムシは、このクロカワムシが大半を占めている。
発生時期は春から秋
成虫の発生時期が4月頃~11月頃と幅広い季節に対応している関係で、サイズによるバラツキはあるものの、ほぼ年中採集が可能。丁度本流が最盛期を迎える5月頃に、餌として丁度良いサイズが採集できるので、アングラー的には大変都合がいい。
本流の特効餌
このクロカワムシ、どういう訳か支流での渓魚の反応はあまりよくないように感じている。逆に本流ではバンバン当たってくる特効餌とでも呼ぶべき存在で、水が澄んでいる時は小ぶり、逆に濁っている時は大きめの物を使用すると好結果を得られることが多い。
どこで採れる?
主な採集場所は河川の平瀬。拳大~抱えられるサイズの岩と岩の隙間に、落ち葉や小石を(自身の粘液で)くっつけた巣を造っている。
そのため、やや大きめの石が転がっている平瀬の下流側で網を構え、上流側の石を蹴とばしてみたり、岩を起こして巣から直接採集したりするといい。採集後はかなり暴れ、お互いに噛みつきあったりする事もあるのだが、ヨモギの葉をちぎったものを餌箱に入れておくと大人しくなるのでオススメだ。
オニチョロの生態
次に、オニチョロの生態をみていこう。
何の幼虫?
オニチョロはキンパクと同じカワゲラの幼虫で、主にオオヤマカワゲラという大型種の幼虫。見た目もよく似ており、キンパクをそのまま大きくしたような感じだ。大きなものは4cm近くになる。
発生時期は初夏
オニチョロは3年程度かけて成虫になるため、年中様々なサイズが採れるが、羽化時期は5~6月に集中する傾向にある。
6月~7月は河川の傍の植物に3~4cm程度の成虫が静止しているところがよく見られ、大型個体の胃からはこの成虫が出てくることもある。
最盛期の大型狙いに
体が大きい分生命力が強く、生きた状態をキープしやすい反面、動きが大変活発なためエサ箱から這い出さないように注意が必要だ。
外殻が比較的硬いため、小型渓魚にちょっかいを出されにくく、ヒットすれば良型の期待大だ。
どこで採れる?
生息場所は、水通しが良い水質の良い川。キンパクと同じように流れがよく当たる瀬で、拳くらいの岩がごろごろしている場所を探してみよう。
後は他の川虫と同様に、下流側に網を立てて上流側の底に転がる石を蹴とばすようにすればいい。羽化時期になると、流れが緩やかな川底を歩いている事もある。
スナムシの生態
スナムシという生物をご存知だろうか。渓流魚の餌としては大変マイナーな部類ではあるがよく釣れるため、今回紹介させていただきたい。
何の幼虫?
ここで言うスナムシは、モンカゲロウというカゲロウの仲間の幼虫だ。身も柔らかくヒラタに近いが、その姿は細長く、どちらかというとピンチョロにやや似ている。
水中で脱皮・羽化する「亜成虫」と呼ばれる時間があり、その姿を模したフライも存在する。
なぜ「スナ」ムシ?
モンカゲロウの幼虫は、川の淵や川岸にある砂・泥底の中に生息しているため、その生息場所からスナムシと呼ばれている。
採集時期は初夏以外
4月初旬頃、羽化を控えた大きめの個体が簡単に採集できるので、この時期が狙い目。本格的な羽化時期は4月下旬~5月で、この時期以降はパッタリと見られなくなる。4月限定の餌と言えるだろう。
どこで採れる?
流れの緩やかな砂の中に潜って生息しているため、他の川虫とは採集場所・採集方法が大きく異なる。
まずは上写真のような場所を見つけ、丈夫な網で川底の泥をガバっと掬った後、流れの中でその泥を濾す。その後、網の中に残った砂利をかき分けるようにしてくと、モソモソと這い出てくる。
それ以外の水生生物
では最後に、前編・後編で紹介した6種以外に「餌」となりえる水生生物がいるのかに注目してみよう。
ヤゴ
成虫はご存知、トンボ。川虫採集をしている最中によく網に入るのは(河川にもよるが)クロサナエのような成虫が4~5cm程度の小型のサナエ属のものから、コオニヤンマ、オニヤンマのような大きな物まで多種多様だ。
共通して言えるのは、ヤゴは他の川虫に比べて圧倒的に体(外殻)が硬いものが多いということ。成虫なら餌になりえるが、ヤゴは難しそうだ。
マゴタロウ虫
こちらはヘビトンボという昆虫の幼虫で、トンボと名がついているが全くの別種。パッと見はムカデのような外見で、5cmを超す大型の物もいる。噛みついてくる上に他の水生昆虫を殺してしまうため、餌としては扱いが難しい。
源流でのイワナ狙いで特効餌になると聞いたことがあるが、著者は良い思いをしたことが無くほぼ使用していない。ただ釣れた渓魚の胃の中からは頻繁に出てくるため、餌としての可能性は十分にある。
甲殻類
著者はよく渓魚の胃の内容物を調べるのだが、昨年釣った渓魚の腹の中から川エビと小さな沢蟹が出てきて、大変驚いたものだ。とはいえ、常に動き回る渓流釣りでは、数多くのエビやカニを生きたまま管理する事は現実的ではない。餌としては除外だろう。
川虫をローテーション
前編・後編に分けてご紹介した6種の川虫を時期ごとに使い分けるならば、3月=キンパク・ヒラタ(オコシムシ)、4月=ピンチョロ・スナムシ・ヒラタ(ナデムシ)・オニチョロ、5月以降=ヒラタ(ナデムシ)・クロカワムシ(本流)、となる。
解禁直後のイクラと、合間の増水・渇水期に陸生昆虫やミミズ・ブドウムシを使用すれば、渓魚のための餌ローテーションが完成するという訳だ。川虫の入手が釣果のカギを握ると言っても過言ではないので、計画性を持って川虫を採集し、良い釣果へと繋げてみてほしい。
<荻野祐樹/TSURINEWSライター>
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