非常に奥まった浅い湾の奥が、外洋性のサメのゆりかごになっていることがわかりました。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
有明海奥で「アカシュモクザメ」の稚魚が多数確認
日本で最もユニークな湾の一つ有明海。陸地に囲まれた深い入り江状の海域で、広大な干潟が広がる浅い海です。
日本でここにしか生息していない珍しい魚介類で知られるこの海が、ある魚にとって貴重な「ゆりかご」であることが判明しました。その魚とは「アカシュモクザメ」です。
長崎大学などのグループの研究によれば、有明海湾奥の海域でその年に生まれたばかりのアカシュモクザメの稚魚が毎年捕獲されているといいます。同海域で捕獲されたアカシュモクザメはその9割近くが0歳魚であり、ある程度以上成長した個体は全く見られないそうです。
同グループは、濁りが多く河川流入水の影響が大きい当該海域が、九州周辺のアカシュモクザメにとって最適な産卵・保育の場になっているのではないかと推測しています。
絶滅危惧種の「人喰いザメ」
アカシュモクザメ、と言われても魚好き以外はぴんと来ないかもしれませんが、「ハンマーヘッドシャーク」という英名は聞いたことがある人も多いでしょう。その名の通りハンマーのような頭部形状が特徴的なサメです。
ハンマーヘッドシャークは遊泳性が高く、生きた魚を襲って食べる獰猛なサメです。しばしば「人喰いザメ」として恐れられますが、実際には人を襲うことはほとんどないようです。
わが国ではサメはしばしば漁師の獲物を横取りすることから駆除の対象とされますが、アカシュモクザメもその影響で大きく数を減らしており、もともとの繁殖力の弱さもあって絶滅危惧種となっています。
「あの魚との混獲」が問題に
アカシュモクザメという種が絶滅せずに暮らしていくには、有明海は非常に大切な環境です。しかしそこにもやはり人の魔の手が伸びています。
ただし、他の海域と違って有明海のアカシュモクザメは駆除の対象となっていません。
有明海はかつてアサリなどの二枚貝の名産地でした。しかし埋め立てや沿岸地域の開発によって環境が悪化し、アサリが採れなくなると、アサリを好んで食べる魚たちが目の敵にされました。ナルトビエイなどのエイもその一つです。
当海域ではエイの駆除における混獲により、年間平均で1万匹弱のアカシュモクザメ幼魚が捕獲されてしまっているといいます。研究グループは「国際的にも貴重なアカシュモクザメを保護するため、混獲を防ぐ方法を考えるべき」と主張しています。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>
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