大阪湾岸を始め、関西には一文字や沖波止、沖防波堤と呼ばれる船で渡して貰って釣りが楽しめる場所が多い。今回は、釣行のほとんどを関西の沖波止や釣り公園に費やしている筆者が、沖波止の魅力から注意点、そして沖波止デビューの方法などを紹介していきたい。

(アイキャッチ画像提供:WEBライター・伴野慶幸)

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貧果でも沖波止の釣りが好き

11月30日、神戸・和田防波堤にデカアジとウマヅラハギ狙いで釣行したが、結果はカンダイの幼魚1尾と、リリースしたチャリコ1尾の貧果に終わった。この日のように釣果に恵まれず、疲れに行っただけの結果に終わった経験は数知れず。

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30日に釣れたカンダイ(提供:WEBライター・伴野慶幸)

しかし、納得の釣果を上げた時の喜びは何物にもかえがたい。私はこの先も和田防をはじめ、各地の沖防波堤や釣り公園に通い続けるだろう。

沖防波堤をテーマにした記事は、TSURINEWSサイトでも「晩秋の沖波止の楽しみ方ガイド 狙うべきターゲット3選」が掲載されている。専門紙編集者の立場で分かりやすく解説されているので、まだご覧になっていない方は、まずはそちらを読んでいただきたい。

その上で今回は、メーカーのテスターでも名人でも何でもない、平凡なサラリーマン釣り師の筆者が、渡船で行く関西の沖防波堤釣りの魅力や注意事項などを釣り人目線で綴ってみたい。

沖波止釣りの4つの魅力

先ず、初めに沖堤防の魅力を4つ紹介していきたい。

1、陸続きよりも釣れる(可能性が高い)

上級者向けの地磯を除けば、一般的な陸続きの釣り場は岸壁、海岸、漁港、釣り公園などで、釣行の手軽さと陸続きの安心感から多くの釣り人が訪れる。しかし、陸の近くまで接岸する魚は種類も数も限られ、魚の居つきも良くない。

一方、陸から離れて沖に位置する沖防波堤は潮通しが良く、海底の形状も複雑なので、多種多様な魚が回遊あるいは居つく可能性が高い。筆者もそうした地形の恵みにあずかり、春夏秋冬を通じて沖防波堤ならではの様々な獲物を手にしている。

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大型青物も釣れる(提供:WEBライター・伴野慶幸)

2、自由度が高い

陸っぱり釣り場の多くは、海側の一方向のみしか釣りができず、混雑して釣り難い事も多い。一方、沖防波堤は海に囲まれており、渡った釣り人は周りの状況を見て釣り座を外向きか内向きか、東向きか西向きか、多方向から選ぶ事ができる。

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周囲全体がポイントだ(提供:WEBライター・伴野慶幸)

さらに、防波堤の面積や渡船の輸送能力にも限界があるため、限界を超える混雑にはならない。魚種も豊富なので、ルアーが振るわなければエサ釣りにチェンジ、ウキ釣りが振るわなければ根魚狙いの探り釣りにチェンジと言った事も可能だ。筆者も本命の魚種が不発で、釣り座や釣り方をチェンジして、お土産を何とか確保した経験が何度もある。

3、上級者と出会える

沖防波堤は陸続きの釣り場に比べて、釣行の手軽さには欠けるため、通う釣り人は中級者、上級者が多い。釣り方や所作、話す内容など、上級者の存在は正に「生きる教科書」だ。見るだけでも学ぶところは多く、運よく親切な人に出会えれば、一期一会、目から鱗の話が聞けることもある。

また情報交換を好む同士感覚の釣り人も決して少なくない。以前に、筆者が落とし込みで上げたチヌの釣果は、釣り場で上級者の釣り方にヒントを得て、その場で微調整して得られたものだ。

4、陸からは見られない景観

陸続きの釣り場と沖防波堤を2つ思い浮かべて比べてみれば、「海は広いな大きいな~♪」の歌にある世界観を、沖防波堤の方が実感できるはず。

周りは海、防波堤はある意味高台。遮るもののない日の出、ミニチュアのように見える陸側の建物群、航行する様々な船、鮮明に見える星空など、様々な景観を目で楽しめるのは、沖防波堤に渡った釣り人の特権だ。

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豪華客船が目の前を通る事も(提供:WEBライター・伴野慶幸)

手軽ではない沖防波堤

ここまで読んで、「沖防波堤は良い事づくし。早速行ってみよう」と、直感だけであまりにも安直に感じてしまうのは禁物。沖防波堤への釣行は、陸続きの釣り場ほど手軽ではない。

ゴルフのように、打ちっぱなし練習場→大衆コース→名門コースと、段階を踏んで「あらゆる意味での実力」を上げてから、沖防波堤に釣行する事が大切だ・・・と、筆者は自身の経験からも感じている。

最低限の自己管理が必須

沖防波堤は海の沖合に設置されており、船でしか渡れず、渡った先にはコンクリートの塊があるだけ。日除けも風除けもなし、トイレなし、ゴミ箱なし、標識なし、安全柵なし。まして売店、自動販売機、荷物置き場などは、あるはずもない。

足場が悪い防波堤も多く、海に転落すれば命を落とす危険性すらある。陸続きの釣り場では最悪何とかなる事でも、沖防波堤ではどうにもならない。

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外向きはテトラ、内側は護岸の和田防(提供:WEBライター・伴野慶幸)

さらに、帰りたくなっても、迎えの船が来るまで陸には戻れない。不幸にして怪我や体調不良に陥っても、数時間苦しみ続ける事になる。沖堤防釣行は、手軽ではない事を予め分かったうえで、全てを自己責任で自己管理できる釣り人でないと、沖防波堤での釣りはうまくいかない。

船長の言う事は絶対な理由

渡船店は行政や所轄当局からの営業許可を受けており、船長は1回あたり数10人の乗客の命を預かる重責を抱えるとともに、沖防波堤、さらには乗船場付近の保安や治安にも、一定の責任を負っている。船長の言う事は絶対だ。

釣り客によるトラブルや違反があれば、渡船店も責任を問われ、回り回って最終的に、釣り人が釣り場を失う結果にもなりかねない。また、乗船手続き→船への乗り込み→防波堤の船着き場での乗り移り(帰りはこれらの逆)の一連のプロセスは、乗客数10人を相手に、限られた時間で安全に効率よく行う必要がある。

釣り客は団体行動だ

釣り客の側も、全てを自己責任で自己管理できる事が前提となる。沖防波堤渡しはある意味集団行動である。

船長への長時間の質問攻め、乗降時の大幅な手間取りなどは、船長と他の乗客の迷惑になる。個人の都合やワガママによる「こっちは客だ。金払ってるんだ」といった理屈や甘えは通用しない。

渡船に付いているタイヤなどの意味

渡船のほとんどの船には、手すりや船首にタイヤが付いている。防波堤の船着き場に着けた渡船の写真を見ていただければ、その意味がお分かりいただけよう。
釣り客は手荷物を抱えながら、手すりを伝ってタイヤを踏んで、海上の波風で不安定な船体と足場の悪い防波堤との間を、行き来する事になる。

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船を押しつけて安定させる(提供:WEBライター・伴野慶幸)

干潮時に、波止と海面との高低差が大きくなる波止では、船首に階段が設置されている渡船も多く、その階段の登って波止に上がる事もあり、足元の不安定さは一段と増す。

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船首に階段付きの渡船(提供:WEBライター・伴野慶幸)

釣り人側も、行き来を自己管理できるようになっておく事が必要だ。船長は操船で手いっぱい。釣り客個人単位でのサポートは基本的に望めないと知っておいてほしい。

沖波止デビュー5つのポイント

ここまで沖波止での釣りの魅力、そして難しさを紹介してきたが次は実際に沖波止で釣りをするためのポイントだ。誰しもが最初から沖波止に渡って釣りができるベテランではない。誰でも最初は初心者。陸続きの釣り場である程度の経験があれば、沖防波堤に釣りのフィールドを広げても大丈夫。

そこで、筆者の経験から、沖防波堤釣りデビューのためのポイントを5つ挙げてみたい。

1、最初の2回は下見のつもりで

1回目は渡船そのものに慣れる、2回目は目当ての沖防波堤の様子を知る、3回目から目当ての沖防波堤で本格的に釣る・・・といった感覚で、最初から釣果を求めず、最初の2回は下見のつもりで釣行する事をお勧めする。

1回目はとにかく安全第一で場所を選び、渡船とはどういうものか、手荷物を抱えながら船と防波堤との間の行き来ができるかを体験してみよう。

2回目は目当ての沖防波堤を選び、そこでも手荷物を抱えながら船と目当ての防波堤との間の行き来ができるか、防波堤の形状や海底、海流の様子、周りではどのような釣り方をしているか・・・などの、情報収集のための一日と割り切るぐらいの気持ちがほしい。

2、釣行前の下調べは確実に

慣れない釣り場で慣れない渡船利用となれば、釣行前の下調べが大切だ。すぐに渡船店に電話して、一から十まで聞くのはNG。電話で長々と話を聞いても、実際にはすぐには理解できない。それよりも、渡船店のホームページやFacebookなどをじっくりと見て、掲載されているあらゆる情報を調べた方が効果的だ。

また、店の近辺にあるエサ店の中には、協力関係にあるところも多いので、エサ店のホームページやFacebookを見たり、釣行当日に立ち寄って店員から情報を得るのもよいだろう。

なお、下調べは防波堤や乗船場の事だけでなく、自宅→エサ店→駐車場→乗船受付場→乗船場と、一連の行動を頭に描いて、必要な場所、経路、所要時間まで調べておきたい。

3、安全対策について

大阪湾の沖防波堤は、全域で救命胴衣の着用が義務付けられている。また、船と防波堤との間の行き来や、防波堤の上での移動では、足元の安全には十分に気を配ることが不可欠だ。

さらに、タモ網の柄が短いために、無理な体勢で取り込もうとする動作は転落事故につながる。沖防波堤への釣行を決めたのなら、自分に対する安全投資の意味で、救命胴衣、靴底の滑り止めがしっかりした靴、長めのタモの柄(6m前後はほしい)を用意したい。

始めるなら冬がオススメ? 渡船で行く関西の沖防波堤釣りの魅力を紹介
外と内向きで高さが違う波止も多い(提供:WEBライター・伴野慶幸)

4、出船時刻の1時間前に到着

初めての渡船利用の際は、下調べをしたつもりでも、分からない事は残るし、乗船手続きや手荷物を抱えての乗船に手間取る事が多い。また、どうしても船長に直接確認したい事もあるだろうし、逆に船長からの諸注意もある。

渡船店は出船時刻15分前、30分前の到着を呼びかけている場合が多いが、最初だけは時間が余って仕方ないぐらいの気持ちで、出船時刻の1時間前に到着しても、結果的にはちょうどいいかもしれない。

5、手荷物は最小限。竿は2本まで

釣果を得たいと思うあまり、手荷物が増えたりかさばったりするのは、移動の足かせになる。繰り返しになるが、沖防波堤の釣行は、手荷物を抱えての移動になる。最初だけは手荷物を最小限にして、手荷物を抱えての移動を試すつもりで釣行する事をお勧めしたい。

ロッドケースも長くてかさばる手荷物の一つ。たとえば、ルアーマンならロッドは1本に絞り、エサ釣りなら磯竿1本と防波堤の際を探る短竿1本の2本までにして、少しでも荷物をコンパクトにしたい。

始めるなら冬がオススメ?

本稿が掲載される頃には、沖防波堤も冬の釣りにかわっている事だろう。冬は寒いし気候も良くないし、釣り物は少ないし、渡船店の出船ダイヤも盛期に比べると便利さを欠く。そんな冬だからこそ、沖防波堤での釣りを始めるには都合の良い時期だと、あえてオススメしたい。

冬は釣り物が少ないかわりに釣り人も少ないので、釣り座の確保に焦らなくて済むし、渡船店の側も盛期に比べれば、接客に余裕ができる。服装は防寒具となり、着ぶくれして動きにくくなる分、手荷物を少しでも少なくしようという意識がはたらき、安全意識を持って行動も慎重になる。

そうした状況のもとで、下見のつもりで冬の沖防波堤での釣りを一連の流れで体験しておけば、気候が良くなって釣り物も増える春のシーズンをスムーズに迎えられ、釣果も上がるのではないだろうか。

<伴野慶幸/TSURINEWS・WEBライター>

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