12月28日、兵庫・神戸第7防波堤(通称・7防)に釣行した。この日は、前情報以上にサビキで大型アジが釣れ盛り、ルアーやノマセでブリが上がるなど、これまでの大阪湾の冬景色とは全く様相が違っていた。
(アイキャッチ画像提供:WEBライター・伴野慶幸)
近年の大阪湾サビキ釣り
大阪湾でのサビキ釣りのシーズンは、夏の豆アジからスタートする。秋には、小アジがサイズアップして、小サバ、イワシ交じりで最盛期を迎え、冬の初めにシーズンを終えると言うのが一般的なイメージだと思う。しかし、近年の大阪湾のサビキ釣りの傾向は、以前とはどうも違っているように感じる。
ここ数年の異常
私の記憶しているところでは、
2018年:真冬にイワシの大フィーバー(とっとパーク小島~泉南エリア、神戸港湾内)
2019年:3~6月に大・中サバ、メクリアジの短期ラッシュ(武庫川一文字、神戸港沖防波堤など)
と、かつてはサビキのオフシーズンとされてきた冬から梅雨の時期にも、釣果情報を賑わせた事があった。筆者の昨年末の釣行でも、サビキ釣りで衝撃の体験があった。今やサビキは、オールシーズンできる釣法なのか?2020年はどうなっていくのだろう?
神戸第7防波堤でデカアジ釣り
気温が下がり、街中ではコート姿の人が行き交う光景が当たり前となった12月下旬、兵庫・武庫川一文字や神戸港周辺エリアで25cm超の良型マアジ、通称「デカアジ」が、大サバ交じりで好調との情報を数多く見かけるようになった。
いてもたっても居られず釣行を決め、12月28日の未明、松村渡船の乗船場を訪れた。冬に入り釣況も変化した事で、ルアーマンの釣行もピークを過ぎ、渡船も冬モードに入りつつあった。しかし、釣況が上向いてきた事もあって釣り人が多数訪れ、急遽第二駐車場を案内するほどの活況ぶりだった。
赤灯台回りに釣り座
質・量ともに生きた情報を提供してくれる松村船長は、釣り人からの信頼が厚い。私もデカアジ&大サバ狙いで相談すると、神戸第7防波堤の赤灯台周りを勧めてくれた。
タナは底ぎりぎりで、夜明け前から朝8時頃までは竿下で十分釣れているとの事。当日の2便は40人近くの釣り人を乗せて、4時30分に乗船場を出発。
ルアーマンが7割ぐらいで、その大半はこのところ人気となっている最沖の波止に照準を定める。一方、私のような他の釣法の釣り人や混雑をあえて避けたい釣り人は、6、7、8防へと分かれて順に降りていく。
私が選んだ7防には8人が降りたが、先客は2人だけで、私は赤灯台周りの北向きに十分余裕をもって釣り座を構える事ができた。

夜明けまでは無反応
5時過ぎから船長のアドバイス通り、タナは底ぎりぎりを意識して、灯台周りの竿下でサビキ釣りを始めたが、暗いうちは魚の反応がない。西向きで釣っていた人が散発のデカアジを拾っていた以外は、周りも渋い状況のようだった。
親子連れで来ていたジュニアたちも、父親のアドバイスが釣果につながらず、しょんぼりした表情。不安がよぎる。
夜明け前からデカアジラッシュ
ところが、空がうっすらと白みがかってきた頃、私の竿にググッと確かな手応えが伝わった。ハリ外れを避けるように慎重に巻き上げると、待望のデカアジが登場。
体長は500mlのペットボトルくらいはある良型だ。にんまりとしながら一度、水汲みバケツに入れて、合間を見て鮮度を保つ活け締めをする事にした。周りでも釣れ出し、いよいよ時合いに入ったな・・・と本腰を入れる。

時合いどころではない爆釣ぶり
しかし、この後訪れたのは、時合いどころの話ではない、衝撃の展開だった。一投ごとに即アタリ。周辺の釣り人10人ぐらいが、次々とデカアジを上げていく。
私もバケツがすぐにデカアジの束で溢れてしまい、ノマセ釣りの準備で持ちこんでいたスカリバケツに入れて急場をしのぐ事にした。

「凄いですね、今日は」と隣の人が声をかけてくる。全員がウハウハ状態の中、私の竿に一段と強い引きが伝わった。巻き上げに手こずり、「まさか青物?」と一瞬思ったところ、海面に姿を見せたのは大サバ。これも嬉しいゲストだ。

ノマセでブリが登場
歓喜溢れる赤灯台周りをよそに、あえて距離を置いて離れた場所で釣り座を構えていたノマセ釣りの2人組が、大きく竿を曲げて奮闘している姿が見えた。仲間も駆けつけ、バトルの末に仕留めたのは、遠目でもビッグサイズと分かるブリだった。
「それぞれに良い釣りをしているなあ」と、ほっこりした気持ちになったのもつかの間、すぐ傍らでもライトジギングロッドを大きく曲げた釣り人の猛ファイトが始まった。周りの釣り人も手を止め、祈るように見守る。
緩めのドラグ設定にしていたのが功を奏したのか、数回の締め込みにも耐え、海面に寄せる事ができた。「ブリや!」「うわー!」周りから歓声が上がるが、釣り人はロッドコントロールで精いっぱいのようだった。
タモ2本で助太刀
周りの釣り人が協力してタモ入れをかって出たが、魚体が大きく、タモに入りきらない。そこで私もタモを持って助太刀に。はみ出た尾の部分は私がフォローして、2本のタモでサンドイッチにする作戦を試みたところ、これが見事成功。三人が呼吸を合わせて波止に上げたブリは、笑いすらこぼれる圧巻のサイズ。
小さめのアジを選んで沈め釣りにしていたところヒットしたとの事。自分の釣果ではないものの、記念にと写真を撮らせてもらう。

次のバトルはサワラだ!
さらにしばらくすると、先ほどのジュニアたちから「お父ちゃん、絶対バラさんといて!」と叫び声が聞こえてきた。駆けつけると、南向きで父親がバトルの真っ最中。仲間が声をかけるも当初は「そんなデカないで」と余裕の受け答えだったが、その後海面を見て仰天。デカい。見事なサワラだ。
こちらもタモに入りきらず、再び私がタモを持って先ほど同様にサンドイッチ作戦の助太刀に。今度も成功し、親子で大喜びのスマホ写真撮影会と相成った。
本当に年末の釣果なのか
周りにも大いに楽しませてもらった私は、時合い終了後も釣りを続け、11時過ぎに納竿。スカリバケツの中はデカアジで溢れ、芋の子を洗うような状態になっていた。
私の最終釣果は、デカアジ24尾と大サバ1尾で大満足。魚の活け締め処理も済ませ、12時の迎えの便に乗り込んだ際には、最沖の波止で釣れていたブリ2尾が船首に積まれていた。乗船場に着くと、大物賞の釣り人たちは松村船長としばし歓談。
本当に冬本番を迎えた年末の12月28日か?と驚かされる釣果が続出した一日だった。帰宅後、釣果は絶品の刺し身と塩焼きとなり、夕食の食卓を大いに賑わせた。

TPOに応じた道具選びが秘訣
28日の好釣果の陰には、魚の良い群れが回ってきた以外にも、釣果を伸ばせた要因があった。ターゲットはデカアジで、釣り場は竿下、タナは水深のある海底ぎりぎり狙うという諸条件を、総合的に踏まえたサビキとタックル選びが功を奏したと思っている。
当日の工夫を紹介
当日選んだサビキは、フラッシュ仕様の目立つサバ皮のハリ6号で、幹糸6号、ハリス4号の太仕掛けだ。タックルは磯竿5号5.4mに、道糸4号を巻いた両軸リールをセット。まきエカゴはサビキの上下それぞれに付けるダブル方式とし、上カゴとサビキの間にクッションゴムを介した。

つまり、魚体が大きくても絡みにくく耐久性のあるサビキを、最短で竿下の海底ぎりぎりに降ろし、上下からまきエサをサビキの周りにまとわせて連掛けを狙い、巻き上げの際にはテンションを極力小さくしてバラシを避けるという工夫をしたのだ。
結果、周りは一投ごとに1尾のところを、私には2連、3連と魚を掛けたタイミングもあり、バラシも1尾だけと、釣果を伸ばす事に成功した。
オールシーズンでサビキ釣りを楽しみたいなら、万能竿、スピニングリール、ウキとプラカゴ付きのサビキセットいう定番の組み合わせだけではなく、TPOに応じたサビキとタックル選びを試してみてはどうだろうか。

情報が一層決め手に?
TPOに応じたサビキとタックル選びとなると、そのTPOの元となる情報を的確につかむ事も大切だろう。釣りに関する情報は、TSURINEWSをはじめとした釣り専門メディアのほか、釣具店や渡船店、釣り人個人からと、様々な所から発信されている。
ネット社会の今、情報は簡単に入手できるが、それを的確につかむのは釣り人自身。発信者は誰(どこ)、何時の情報、ターゲットの種類、釣果の数や型、潮、時間帯、場所、釣法、タックル、エサ、タナと、情報の切り口は多項目にわたる。
さらに残念な事に、一部のマナーの悪い釣り人のおかげで、釣り禁止エリアは徐々に増えており、ルールが守られた上での情報なのかも見極める必要がある。
簡単そうで難しい要素
サビキで釣るのはアジやサバ、イワシなどの回遊魚なので、同じ波止でもピンスポット単位で釣果が大きく違ったり、短期間で釣れなくなってしまう事もしばしばある。まして近年の釣況は、過去の例に当てはまらないケースも出てきている。
たかがサビキと言うなかれ。サビキ釣りこそ、釣れている時に、釣れる場所に行って、釣れる魚を釣りに行くという、簡単そうで実は難しい要素を秘めている釣法だと思う。2020年の大阪湾のサビキ釣りは「情報」が一層決め手になるのではないだろうか。
<伴野慶幸/TSURINEWS・WEBライター>
▼この渡船について松村渡船
出船場所:兵庫県神戸市灘区