名古屋港は、中部圏の中心となる名古屋から最も近い、都市近郊の工業港である。工業港といえば工場などからの排水により、冬でも一定以上の水温低下がなくクロダイの活性が高い。
(アイキャッチ画像提供:週刊つりニュース中部版 白村つとむ)
名古屋港の「ハワセ誘い釣り」
志摩半島以南の外海では、真冬でも13度程度とそれなりの水温を保っているが、そこから中へ入った伊勢湾があり、さらに奥まった場所、最奥に位置するのが名古屋港である。
しかも木曽三川と言った大きな河川、庄内川や日光川、堀川と言った中小河川が無数に流れ込んでおり、それらの河川も水温を低下させる要因となっている。冬場の水温は10度を切り、クロダイはいても口をほとんど使わないといった状況になることも多い。
しかし、火力発電による温排水の恩恵を受ける釣り場も名古屋港には存在する。この周辺には、おびただしい数のクロダイが着いており、魚影は抜群に濃い。

しかし、このような釣り場もひとクセあり、その流速の大小によって、陸っぱりでは釣れる釣り座が数mといった狭い範囲になるのが現状だ。温排水が出ている周辺全域で釣れるわけではない。そのような釣り座を確保できればいいが、極寒の早朝に出向いても確保できないことの方が多いだろう。ではどうするか。
水温が極限にまで低下している名古屋港のほとんどの釣り場で通用する、私独自のテクニック、「ハワセ誘い釣り」を中心に、名古屋港のクロダイの動き、特性を交え、紹介していきたいと思う。
名古屋港フカセクロダイのシーズン

名古屋港では3月中旬ごろ産卵に入り、産卵が終わって水温が上がり始めると、多くのクロダイが流れ込んでいる各河川へと入り始める。工業港ではよくあることだが、水温上昇とともに海水が茶色く濁り始めるそのころだ。
港内に居着くクロダイも当然多数いるが、河川に上るクロダイの数も半端ではない。
その下ってきたクロダイが一時的にステイする場所が名古屋港内には何カ所かあるのだが、そのタイミングで見に行くと、おびただしい数のクロダイが浮いているのを目撃することができる。
しかしこの時のクロダイは、まきエサにもオキアミにも見向きもしない。その見えているクロダイが消え、海にナジんで居着いたり回遊を始める。そのころからが本格的なシーズンインだ。
基本的に名港クロダイの食性と、オキアミでのフカセ釣りはマッチングしないのだが、水温低下とともに場所によってはイガイやイワガニなどもほとんど口にしないようになったところで、フカセ釣りにチャンスがくるのだ(ほとんど口にしないとはいえ、クロダイは年中イガイを食べる)。
冬に良型が釣れる理由

名古屋港のクロダイはまきエサに反応せず、オキアミもなかなか口にしないのだが、なぜ冬になると居着きを含め良型が釣れるのか。それは確実にスポーニング(産卵)を控えているからだ。
どの海域のクロダイも、この産卵の時期には一時的に食い気が一気に上がり、活発にエサを食べ始める。そのタイミングが名古屋港では1月中旬から2月いっぱいであり、3月に入ると徐々に食い気は落ちていくのである。
産卵と言うと、暖かくなってからと勘違いしがちだが、産卵に入るのが4月初旬ごろ。その2カ月前には栄養を蓄えるため、荒食いを始めなければ産卵に間に合わないのだ。
また余談ではあるが、名古屋港には無数のボラが生息する。「ボラが来てクロダイが寄る」との定説があるが、名古屋港ではそのような現象は皆無と言ってもいいだろう。逆にボラがわくといいことはなく、好釣果が出た試しがない。あまりにもボラがわくようならポイント移動も良策だ。
2パターンの行動をするクロダイ

さて、名古屋港には大きく分けて2パターンの行動をするクロダイがいる。
居着きのクロダイ
1つ目は「居着き」。これは船の着く桟橋のパイル、温排水口に多く居着いており、型が大きいのが特徴である。平均で50cm前後と大型の群れであり、名古屋港で最も狙うべき魚だ。
回遊性が高いクロダイ
2つ目は「回遊性」のクロダイで、色もシルバーで日焼けもあまりなくきれいだ。しかしサイズにばらつきがあり、35~50cm台前半といった感じで、平均は40cm台前半といったところだ。ただこの回遊性は活性があり、回ってくると連発することが多く、アタリを見逃してもすぐに食ってくることが多い。そして時合いは総じて夕方に集中するのも特徴だ。
先の居着きは決まった時合いらしきものはあまりないが、昼中にアタリが多いのも特徴。そして、連発はなく単発でヒットすることが多い。

食い気が低く食わせるテクニックも数段難しいが、そこに釣り甲斐を感じる。それに居着きはとにかく良型だ。小さくても45cm、50cm台前半クラスもかなりの数がいる。名古屋港で狙うべきは居着きである。
ではその食い気のない居着き中心に、どのようにして口を使わせるかを解説していきたい。
3パターンのポイント
名古屋港にはさまざまなシチュエーションの釣り場が存在するが、大きく分けて「パイル周り」、「流れのあるカケアガリ付近」、「流れの弱い岸壁」の3パターンとなる。
1.流れのあるカケアガリ
「流れのあるカケアガリ」を狙う場合、通常のフカセ仕掛けで通用し、ウキ下も1ヒロから3ヒロ程度で流していくが、上潮の滑りが安定しないことが多く、慣れないうちはややハワセ気味にして流していくと、サシエサがナジむ回数も増え、ヒット率も上がる。
2.パイル周り
次に「パイル周り」。名古屋港全域に広く点在しているパイル。特にコンクリートの土台で影ができるパイルにはおびただしい数のクロダイが居着く。ただし、これらは100%居着きクロダイであり、サシエに反応させるのは困難を極める。
見えているのでどれも食いそうだが、その真横で1日釣っても普通にボウズを食らうことは当たり前だ。これを釣るには、タナを水面直下に設定するよう流れに合わせ、矢引き以下で少しでも中へダイレクトで入れるように何度もしつこく流していくと、まれではあるがヒットすることがある。
3.流れの弱い岸壁
さて最後の「流れの弱い岸壁」だが、名古屋港では最も多い釣り場の1つであり、意外にもクロダイがたまっている。ヘチに限らず、底全体にクロダイはいるが食い気がないので、なかなか好反応を見せることはない。
そんな食い気のないクロダイに口を使わせ、長年に渡り実績を出してきた本題の「ハワセ誘い釣り」について解説する。
ハワセ誘い釣りのキモ

この釣り方の最大のキモは、ウキの浮力を利用した超スローフォーリングである。例を出すと、G2のウキにメインオモリはG2を打ち、ウキがシモり始めるまでジンタン8もしくは7を追加する。
ウキがシモり始めるジンタンを外し、それを2ヒロ半から3ヒロほど取ったハリスのハリ上50cm~1m付近に打つのだ。そうすることにより、ハリ上のジンタンが着底した時点でウキのシモリが止まる。50cmに打った場合、ハワセ幅は約50cmとなる。
その幅はいろいろと変えてみて、クロダイの反応を探っていく。
ウキ下はゆっくり沈めたい幅に対して、ウキをシモらせる深さを調整するが20cm~1m程度。例えば50cmウキが沈んだ状態でアタリがない場合、ラインを軽くあおってウキ止めを引っ張る。

するとウキは浮き上がり、ウキ止めを捉えたら再びシモり始める。この時すでに底付近にあるジンタンは、ウキの浮力によりよりゆっくりと沈下する。
この超スローフォーリングが「ハワセ誘い釣り」最大の特徴だ。要するにジンタンがサシエサと変わらない、もしくはサシエサ以上に遅く沈下することにより、ジンタンがサシエサを引っ張らないため、ゆったりとしたフォーリングが可能となるのだ。

アタリはウキがシモってナジみ、数秒後サシエが着底する間際、着底してひと呼吸おいたころに最も出る。そのほとんどが食い上げであり、ウキがフワフワしたり浮き上がったりする。決して慌てず、その後ウキが消し込んでいくまで待つようにしよう。
以上がハワセ誘い釣りの釣り方の概要だが、いろいろとアレンジして自分なりに誘い方を工夫するのも楽しい。ぜひトライしてもらいたい。

名古屋港における注意事項
名古屋港は以前、立入禁止場所もほとんどなく、車でどこでも入れたものだ。しかし今は車の乗り入れはほとんどできない。門や柵が開いていても、絶対に車の乗り入れはやめてほしい。基本車の侵入はNGと考えて間違いはない。
また、企業が借りている敷地、作業場所にはけっして近寄らないこと。まして柵を乗り越えて侵入するのはもってのほかだ。これがビックリすることにたまに見かけることがある。絶対にやめてほしい。
そしてこれは最重要と言ってもいいが、9号地などは「火気厳禁」である。たき火、タバコも絶対にダメであり、8号地、金城ふ頭などでも火気は基本的に出さないようにしたい。各工場もあり、火災など起こしたらそれこそ一発アウトで全面禁止になる可能性は高い。
最後に、名古屋港にはまだまだ未開拓のピンポイントが無数に存在する。クロダイのたまったポイントを探し当てると、50cm前後の大型が爆釣することもある。近場にして夢の大きな釣り場。そんな名古屋港を皆で守っていきたいと切に願う。

<週刊つりニュース中部版 白村つとむ/TSURINEWS編>
▼この釣り場について名古屋港
場所:名古屋市
この記事は『週刊つりニュース中部版』2020年1月17日号に掲載された記事を再編集したものになります。