「渓流釣り」の中で、最高難易度でもあり最もマニアックでもある『源流釣り』。2回目の今回は源流釣りにおいての装備やタックルなどについて説明していく。

(アイキャッチ画像提供:週刊つりニュース関東版 上谷泰久)

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源流釣りの装備

源流釣りは、一度狙った川を少しずつ、複数回チャレンジして攻略していく。自分だけの地図を頭の中に作っていく楽しみがある。安全管理は万全にしたうえで、装備は重くなりすぎないよう、信頼できる物をそろえることが重要だ。

最高難易度かつ最もマニアックな『源流釣り』とは タックル&装備を解説
準備をしっかりして源流釣りを楽しもう(提供:週刊つりニュース関東版 上谷泰久)

足元の装備

山岳の渓流釣りにおいて最も重要。この釣りは人がなかなか入ってこられないようなイワナの生息地まで、とにかく苦労して歩いて行くことから始まる。

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アプローチの登山道(提供:週刊つりニュース関東版 上谷泰久)

渓流でウェーダーを使うのは雪渓のときだけだが、源流は違う。深いところでは首まで水に浸かり、場合によっては泳いで移動することを余儀なくされる。装備はすべて「水に濡れる」と考えなければならない。

私は、フェルト底のウエーディングシューズに薄手のクロロプレンソックス、そして1.5mmの鮎タイツを履く(鮎タイツは足首までのもの)。私は釣具メーカーの物でそろえているが、登山用具メーカーの沢登り装備で同じタイプのものが入手できる。

靴の中に砂利が入ると著しく歩き辛くなり、体力が奪われるので足首の砂利ガードと靴の相性はとても重要。足の装備は水に濡れると重くなり、体力を奪うので考慮しておこう。

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終始川通しなので膝と足首を温存した歩き方をしないと後半キツくなる(提供:週刊つりニュース関東版 上谷泰久)

上半身の装備

夏なら泳いだ後でもすぐに乾く長袖のコンプレッションシャツがいいだろう。あまり薄い生地だと虻に刺されるので厚手のものがベスト。

普段はグローブを使わない人でも、源流では必要なので用意を。

バックパックの中身

十分な食料、雨具、ビーチボール(深いところを泳ぐ際の浮き輪)、ファーストエイドキッド、予備のエサ、10mのロープ

これらをバックパック(トレイルランニング用が動きやすく便利)に入れる。日帰りなら容量は5~7Lでいいだろう。中に入れる物はそれぞれ防水したい。綿のロープは濡れるととても重くなるので注意が必要。

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浮き輪がわりのビーチボール(提供:週刊つりニュース関東版 上谷泰久)

ウエストベルトに装着するもの

ウエストベルトに装着するものを紹介する。

ナタ

サバイバルにはとても重宝。野生動物との遭遇時には頼もしい味方になる。ナイフではなく打撃に長けたナタを勧める。重いので自身の腕力にちょうどいいもの、歩くのに負担になりすぎない1本を選ぼう。

ハンマー

ハーケンを岩の傷に打ち込むために使用。重すぎず、不安定な態勢でもしっかり打てるゴムグリップがいい。これも野生動物と遭遇した時の武器になる。

ナタもハンマーも利き腕で取れる位置に装着して、とっさに取れるようにしておく。

取り出し方をあらかじめ練習しておこう。すでに安全なルートが確保できている釣行ならハーケン装備は必要ない。

捨て縄とハーケンを数個ずつ

捨て縄は、5mmくらいの細いロープを40cmくらいに切って、結んで輪にしたもの。岩壁や急な斜面を登り降りするときに必要。また、打ち込んだハーケンに通して使うことができる。

熊鈴(音色が違うものを複数個)

熊鈴はなるべく自身の体から離してぶら下げて、よく音が響くように工夫するように。

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源流釣りの道具(提供:週刊つりニュース関東版 上谷泰久)

なお、沢で一泊すると装備は大きく変わる。バックパックは60L以上が必要だ。

源流釣りタックル

源流ではエサ要らずで機動力に優れたテンカラは有利だが、エサ釣りやルアー、フライも可能。私はエサ釣りがメインだ。

竿

6.6mの13本継を使用。春の雪代期の増水で水に浸かっている源流の河原には、草木が生えない。よって、長い竿と仕掛けを使うことができる。大物が潜んでいそうな大場所を攻めきれる長さの竿が有利だ。

ミチイト

太めが基本。不安定な岩場で30cm以上のイワナを岩場の上まで抜き上げられる太さがいい。ナイロン1~1.2号がいいだろう。

エサ

太いミミズを持って行く。浮いている魚がミミズを無視するときはブドウ虫が有効。泳いでも水が入り込まないエサ箱が必要。

タモ

邪魔なので持ち歩かないほうがいい。

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キジとドバの2種類のミミズ(提供:週刊つりニュース関東版 上谷泰久)

歩き方

川ズ通し(川を下流から歩いて上流を目指す)の場合、車止め付近では全く魚の気配がないケースがほとんど。地図を見て、まず目的地を決めよう。釣りをせず、ひたすら歩いて2~3時間くらい奥地に入り込むと、イワナがあちらこちらに散る気配がでてくる。

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雪渓がありました(提供:週刊つりニュース関東版 上谷泰久)

源流のタイプ

イワナが釣れる源流には大きく分けて2つのタイプがある。

タイプ1:魚影は少ないが大型が釣れる

タイプ2:30cmまでの個体が釣れる

谷深くの、岩壁だらけで水深があり水量の多い川は前者が多い。

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源流釣りの風景(提供:週刊つりニュース関東版 上谷泰久)

源流イワナの特徴

大きくなると川虫や昆虫などを食べているだけでは生き抜くことができず、フィッシュイーターになる。源流域では主に小魚=小さいイワナ。大型がいるエリアでは小魚はほとんど食べられてしまうので、小型はいない。

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ヒットした小イワナを大イワナに横取りされた(提供:週刊つりニュース関東版 上谷泰久)

逆に川虫をたくさん食べて成長した中型サイズがたくさん釣れる川は「小イワナを食べる大イワナが少ない」と言える。

しかし、こんな川でも増水すると普段隠れ家でじっとしていた大型が出てくることも。

こうした川は小規模な沢やアプローチが1~2時間程度の近場。エントリーは比較的楽なのでひん繁に源流釣り師が訪れる。こうした川は高巻き(川ズ通しができず、一時的に山側に遠回りする)ときに誰かが歩いた跡を発見するだろう。これでそのエリアに釣り人がどの程度来ているのかがはっきり分かる。

登山アプリ

もう一つ欠かせないものがスマートフォンの登山アプリ。源流は携帯電話の電波が届かない。オンラインの地図アプリは使えないが、GPSの登山アプリなら現在地や歩いてきたトラックを表示してくれる。私はジオグラフィカというアプリを使っている。注意すべき点が2つ。

注意1:アプリを起動して、これから入り込む予定の川の地図を電波の届くところであらかじめ一度表示させておく(見やすい縮図で)

注意2:川に入り込んだらバッテリー節約のため機内モードにする

もちろん防水は完璧にしておこう。水濡れや衝撃に強い機種だとなおいいだろう。

さて、このシリーズも次で完結だ。次回は大イワナがいるポイントや攻略法、源流における危険をどう回避するかを解説する予定だ。

<週刊つりニュース関東版 APC・上谷泰久/TSURINEWS編>

この記事は『週刊つりニュース関東版』2020年3月6日号に掲載された記事を再編集したものになります。

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