宮崎県のメジナ釣りで不調が続いている。例年であれば、日向灘の沖磯は悪くても700~800g程のサイズが2、3枚は釣れる。

今年の様に1枚も釣れない、やっと釣れても手のひらサイズという事は無かった。宮崎の磯に40年以上も上がり続けている私の父も、こんなことは初めてだと言う。実釣をまじえて考察してみよう。

(アイキャッチ画像撮影:TSURINEWS関西編集部・松村)

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宮崎県の磯メジナ釣りが不調

宮崎県の磯フカセ釣りシーズンイン当初は『鮎が12月まで釣れたりしていたし、魚の動きが全体的に遅れているのだろう。そのうちメジナも釣れるようになる』と楽観視していたが、遂に最盛期の2月を過ぎてしまった。そして未だにメジナが釣れているという情報は入ってこない。毎回お世話になっている瀬渡し船、一八宏丸(いちはちひろまる)の釣果報告ブログも殆ど更新されていない。

だが『殆ど』という事は逆に考えると『釣れる日もある』という事で、決してメジナがいない訳ではないのだ。一縷の望みに賭けて前日のうちからコマセを準備する。船頭に状況を確認すると、芳しくない釣果情報と共に大波と強風で船が出ない可能性もあるという。今回の釣行も戦う前から暗雲が立ち込めた。

小場島の磯へ渡礁

宮崎県からメジナが消えた? 実釣&釣具店へのヒアリングから考察
小場島の風裏(提供:WEBライター・楢崎人生)

2020年3月3日。日の出前に出船。10m/s近い風速と高い波を切りながら船は沖を目指す。

船頭に頼み、港から近く風裏・波裏になる小場島(おばじま)北端、通称チョウチンへ渡してもらう。

チョウチンは浅く、潮の流れが常時複雑に変化する難しい場所だが、そびえる岩壁により波が避けられる。風と波に悩まされながらでは釣りに集中出来ないし、何より危険だ。日の出後に波表の磯を見ると、『東映』という文字が浮かびそうな程に岩へしたたか波が打ち付けられている。この風と波が魚にどう影響するだろうか。

コマセに魚が寄らない?

まず直面した厳しい現実はコマセに魚が集まらない事。メジナ釣りのルーティンワークであるウキ付近と足下へのコマセ。本命のメジナを沖へ、エサ取りを足下へ寄せる為の行為だが、見える範囲に魚が寄っている気配が無い。

宮崎県からメジナが消えた? 実釣&釣具店へのヒアリングから考察
準備したコマセ(提供:WEBライター・楢崎人生)

暫くするとかなり深い位置でエサ取りがぽつぽつと寄っているのが確認出来た。そして小さいながらもメジナが1枚釣れた。時間はまだ午前7時過ぎだ。『もしかして今日はいけるのではないか』。期待に胸が膨らむ。

しかしこの後、メジナの顔を拝む事は無かった。

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小さいながらメジナが1匹(提供:WEBライター・楢崎人生)

父奮闘もイスズミにヘダイ

光明が射したかに見えたが後が続かない。エサ取りも深い場所へ時々現れる程度だ。魚の活性は高くない様だ。ここで私はルアーでの青物釣りに方針変更を決めた。今日の状況でヒラマサやカンパチが1本でも釣れたら『勝ち』だ。

宮崎県からメジナが消えた? 実釣&釣具店へのヒアリングから考察
イスズミ(提供:WEBライター・楢崎人生)

父はそのままメジナ釣りを続けているが、小型のエサ取りを連発させたり、イシダイと思しき魚に糸を切られたり、1kgを超えるイスズミやヘダイに竿を絞られたり、メジナからは遠い世界で戦っている。

宮崎県からメジナが消えた? 実釣&釣具店へのヒアリングから考察
父が釣ったヘダイ(提供:WEBライター・楢崎人生)

水面直下でサワラ4連発!

エサ取りの深さからバイブレーションやジグといった沈められるルアーで攻める。フォール中にガツンとしたバイトがあるもののフッキングには至らない。

そうこうしているうちに小規模ながら沖でボイルが発生した。即座に水面直下を引けるルアーに変更すると80~90cmのサワラが4連発。ヒラマサでもカンパチでもなかったが、勝利宣言をしても恥ずかしくない釣果となった。

宮崎県からメジナが消えた? 実釣&釣具店へのヒアリングから考察
サワラをキャッチ(提供:WEBライター・楢崎人生)

帰りの船内。13人が磯に上がり、釣れたメジナはたった1匹である事が分かった。

宮崎県を襲うメジナ不漁の悪夢は3月になっても続いている。山下真司なら「お前らゼロか!ゼロの人間なのか!お前らそれでも男か!悔しくないのかぁぁぁ!!!!」と檄を飛ばす事だろう。

宮崎県からメジナが消えた? 実釣&釣具店へのヒアリングから考察
お前らゼロか!(提供:WEBライター・楢崎人生)

今冬のメジナ不調を考察

「悔しいです!今までは潮が悪いとか言い訳してメジナがゼロでも当たり前と思っていたけど、ニヤついて誤魔化してたけど、今は悔しいです!!」という訳でメジナ不調の原因を冷静に考察する事にした。非常事態宣言が出てもおかしくない今シーズンの宮崎メジナ事情。釣れない釣れないと嘆くだけでは意味が無い。シーズンが終わる前に不漁の原因を突き止め、満足のいく釣果を修め、終わり良ければ全て良しと笑いながら冬のメジナ竿から春のイシダイ竿へ持ち替えたい。

なお、メジナ前線が大分県との県境を越えて宮崎県北端の延岡市まで南下してきたらしい。例年より3か月以上も遅い。しかし延岡のすぐ南にある門川までは南下していないようだ。メジナ前線がどこまで南下してくるのかがシーズン終盤の鍵になる。

隣接エリアとの比較

宮崎県に隣接し、海岸線が繋がっている鹿児島県と大分県の状況を調べてみた。ウェブで釣果情報を集め、さらに周辺エリアの15店舗以上の釣具店へ電話で詳細を確認した。

鹿児島県

まずは同じ黒潮域である鹿児島県。シーズンイン当初は浮きグレが大量に湧き釣果が伸びなかったが、それらが瀬に着き始めてから釣れるようになったという。例年よりムラがあるが、それなりの釣果は出ているとの事。

ちなみに宮崎県では浮きグレの姿も無い。宮崎県との県境沖にある志布志湾の枇榔島では好調をキープしているらしい。私がいつも釣っている場所から20km程しか離れていない。この20kmの間に何が起こっているのだろうか。

大分県

そして大分県。こちらは黒潮の影響よりも、関アジ関サバを生む豊後水道の流れの影響が強く、水温も宮崎県より3℃程低い。今年は(今年も?)好調な様で、TSURINEWSでも大分県のメジナ情報はよく見かける。釣具店からの情報も大分県南部を中心に明るい話題が多かった。ちなみにメジナが釣れている大分県南部の佐伯と宮崎県北部の北浦とは磯続きで、エリアとしては一括りにしてもおかしくはない。だが県境付近から急にメジナの影が途絶える。魚には国境も県境も無いはずなのに。

メジナ不漁以外に今冬の宮崎で起こった異常状態

今冬の宮崎では例年と異なる状況がいくつかあった。

オオニベの大量接岸

まず筆頭は日本記録の更新もあったオオニベの大量接岸だろう。しかしオオニベのエサとなるイシモチは不調だった。これはオオニベが大量接岸してイシモチが喰われて減った、または普段とは異なるエリアに身を潜めた可能性もあり、さらに実際にはオオニベとイシモチの間には何の因果関係も無いかもしれない。

いずれにせよオオニベがよく釣れていたのは事実だ。

タチウオが釣れ続く

次に3月現在になってもショアからのタチウオが好調だ。このまま盛期まで維持しそうな程のご機嫌な釣果報告が聞かれる。本来なら初夏から晩秋までがショアでのタチウオシーズン。水温とベイトに例年との差が出ているのだろうか。

イカ釣りが不調

さらに青物の大量接岸によるイカ釣りの不調。オオニベ同様、青物の接岸理由は不明だが、イカ釣りをする人達は青物がイカを喰うのでイカが釣れないと主張する。だがイカの不漁は昨年から続いている様なので、冬に青物が大量接岸した事がとどめになっただけで実際には別に原因があるのだろう。

こうしてみるとフィッシュイーターに関する事案ばかり上げられる。フィッシュイーターとベイトは切っても切れない関係なので、実際にはベイトの大量発生、大量接岸などが起こっているのだろう。そしてベイトのエサとなるプランクトンも関係しているかもしれない。宮崎の海、日向灘で歯車がいくつか狂い、様々な魚や生物に影響を及ぼし、その一端がメジナの不漁だ。主要因は不明だが、小さな事象がいくつも重なって現在の状況となっているのは事実なのだ。

黒潮の影響

では、黒潮の影響はどうだろうか。釣り人達は口々に『今年は黒潮が沖へ遠ざかっている』『今年は黒潮が接岸し過ぎている』と真反対の意見を持っているようだ。

また『海水温が高い』『海水温が低い』とこれもまた統一性が無い。

気象庁のホームページでは過去38年分の海流と海面水温の詳細が調べられる。38年分全てを確認してみたが、今年の黒潮は平均的な流れで、沖へ遠ざかったり逆に接岸し過ぎたりはしておらず、また水温も平均的だ。潮流も水温もあまりに平均的過ぎて参考にならない。不漁の原因として最も可能性が高いと思われた黒潮の影響は否定された。

リベンジなるか。メジナが釣れるまで諦めたくない

メジナは年中釣れる魚だが、やはり『寒グレ』と呼ばれるシーズンに40cm以上、欲を言えば50cm以上を上げ、枚数も良型揃いで10枚以上は釣りたい。リミットは桜の季節までだろう。桜が散ればイシダイ釣りが待っている。それまでにメジナ前線の南下が間に合うか。例え間に合わなくても釣れるまで諦めたくない。釣り師としての意地を見せたい。

取材協力店舗一覧

最後になりますが、今回情報提供をして下さった大分県、宮崎県、鹿児島県の釣具店各店舗様に改めて御礼申し上げます。ありがとうございました。

釣りのポイント 宮崎恒久店
釣りのポイント 延岡店
釣りのポイント 鹿児島与次郎店
釣りのポイント 大分高城店
キャスティング 鹿屋店
かめや釣具 南宮崎店
かめや釣具 鹿児島姶良店
かめや釣具 城南店
つりぐのBB 川内ムラタ店
フィッシング海遊館
タックルベリー 日向宮崎店
水間釣具店(鹿児島県志布志市)
谷口釣具店(鹿児島県南さつま市)
谷口釣具店(鹿児島県肝属郡)
青井釣具店(鹿児島県肝属郡)
小松つり具店(鹿児島県日置市)
園田釣具店

<楢崎人生/TSURINEWS・WEBライター>

▼この釣り場について
一八宏丸
出船場所:油津港

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