脚本家・演出家の山田能龍、いとうあさこによる劇団山田ジャパンの2025年9月公演「ドラマプランニング」にtimeleszの原嘉孝が出演する。

 本作は、テレビ業界におけるドラマ制作現場を舞台とし、ほれ込んだ漫画の映像化で初のチーフ作品を担当する若手プロデューサーが様々なトラブルに直面するというリアリティー溢れる物語。

若手プロデューサーを演じる原、ドラマの主演俳優のマネジャーを演じるいとうに出演への思いや役柄などについて聞いた。

-原さんは2024年3月の山田ジャパンの舞台「愛称⇆蔑称」以来、2度目の山田ジャパン作品への出演となりますが、出演が決まったときの心境はどうでしたか。

原 timeleszへ加入前の話でしたが、「愛称⇆蔑称」が終わってすぐに来年の作品への出演オファーがありました。

いとう 山田ジャパンの劇団員もお客さまも、“原嘉孝”という役者がすばらし過ぎて、また会いたいなと思わされたこともあって、「愛称⇆蔑称」の打ち上げのときに「またお願いしますよ!」という空気が双方から出ていました。

原 「またお願いします」と言いながら、結局はやらないということもよくあるじゃないですか。ですが、スケジュール詰めが始まって、本当のことだと驚きました(笑)。こんなに短いスパンで同じ劇団の舞台に出演するというのは、あまり経験がなかったので、本当にうれしかったです。それに劇団自体がすてきなんです。

いとう 本当に山田ジャパンの舞台を見ていただきたいです。

原 そうですね。「愛称⇆蔑称」へ出演した当時は、僕がSTARTO ENTERTAINMENTのタレントだと知らないお客さまも多くて、その方たちも僕に興味を示してくれた作品が「愛称⇆蔑称」でした。timeleszへ加入する前は、出演者クレジットで「原嘉孝」の後に「STARTO ENTERTAINMENT」とか「ジュニア」みたいなものが入っていましたが、クレジットにそれが入ると、お客さまも見る前からフィルターがかかりますし、“原嘉孝”個人として戦っていきたいという思いから、事務所の俳優部に「それはやめてくれ」とお願いしていました。

そういった意味では、「愛称⇆蔑称」で僕がSTARTO ENTERTAINMENT所属だと知らない人が見て評価してくださったのがうれしくて、そこに導いてくださった山田ジャパンに再び出演できるということにうれしさを感じています。

-ただ、今回はtimeleszというグループに加入してから初の舞台主演ということになります。

いとう まだパンフレットは間に合うと思うけど、どっちにするんですか?(笑)。

原 グループを広めたいですし、僕もtimeleszを背負っていますから、今後はクレジットの「原嘉孝」の後に「timelesz」と書かせてください。

-いとうさんは、「愛称⇆蔑称」で原さんのどのようなところに魅力を感じたのですか。

いとう 私が言うのもおこがましいですが、演技力は申し分ないですし、作品に対する向き合い方がプロ中のプロ。せりふ入れの速さや、それを役である自分の中に入れて、その音で発する力のすごさみたいなものがありました。性格も明るく優しく、それでいて強いのか柔らかいのか分からない、多面的で人間力がある。どこかが悪いと言ったほうがリアリティーはあると思いますが、本当に魅力的な人なんです。

原 うれしいです。

-本作はドラマ制作の現場が舞台の物語で、いとうさんはドラマ主演俳優の癖のあるマネジャー役です。

いとう 役者さんのマネジャーさんについて正直知らないこともありますが、ある意味役者をよく見せたい、役者の魅力を伝えたいという芯は想像できます。

ただ、名物マネジャーという役なので、たぶん年齢もかなり上で、マネジャー歴も長くて、「私で回っていますよ、この現場!」という圧みたいなものが絶対に出ていると思っています(笑)。それと、私と同じトレンディードラマに夢中だった世代だと思うので、ドラマ愛とか人間性が出せたらすてきだなと思っています。

-原さんは、ドラマ制作会社の若手プロデューサーという役についてどう思いますか。

原 プロデューサーは重圧やお金の問題、それに人の間を取り持ったりといろいろな責任を問われる中で、いい作品ができたと思っても、それが評価されなければ、自分が評価されません。それはイコール次の作品を任されないということ。この役がきたときに今まで僕が出演していたドラマのプロデューサーさんの顔を思い浮かべて、僕が出演するにあたって何かしらの圧があったのかと想像したり、事務所のプッシュがあったのかと想像しています(笑)。

いとう 役者“原嘉孝”を見つけてくださったのだと思うよ。プロデューサーもきっと千差万別でいろいろいると思う(笑)。

原 そうですね。本当にいろいろと思い浮かべています(笑)。僕にも山田ジャパンさんの舞台への出演がtimeleszに入る前から決まっていたということや、そのような繋がりがほかにもいくつかありながらも、timeleszに入ってから知ってくださる方もたくさんいて、全部に愛を感じています。山田ジャパンさんも愛があって、僕がtimeleszに入ってから知ってくださった方も愛がある。

もしかして、今までの決まった仕事に事務所のプッシュがあったならば、それも愛だと思います。そのような要因をたくさん担っているのがこのドラマプロデューサーという役柄で、いろいろな問題があるということに直面すると思います。しかも若くて、初チーフ・プロデューサーです。

いとう 実年齢くらいだよね。せめてやる気は絶対にあってほしい(笑)。そんな若いプロデューサーが流してほしくはない(笑)。なので、そのプロデューサーがマネジャーとどう対立するかというところが見どころです。

-上演劇場が下北沢の本多劇場ですが、下北沢という街や本多劇場に対する思いはありますか。

いとう 本多劇場の横にある小劇場 楽園が山田ジャパンの旗揚げの劇場で、山田と羽鳥(由記)の3人で、「いつか本多劇場に立ちたいね」と話したことがありました。2021年に山田ジャパンの舞台「優秀病棟 素通り科」で一度だけ本多劇場に立ちましたが、私は小屋入りから泣いていました(笑)。山田と(劇場内で)写真を撮りながら「やっとここまでたどり着いた!」などと言っていましたが、コロナ禍のために一席おきでしか客席が解放できなくて、みんながマスクをしなければならなくて。本多劇場に立てた喜びも大きかったんですが、完成形をまだ見られてないので、そういう意味では今回はヤバイです。

原 それはヤバイですね。

いとう 初の本多劇場という喜びとはまた別に、満席の本多劇場が初なので、そこから見た風景はどんな気持ちになるんだろうかと、それが今から震えるぐらいうれしいです。そういう意味では今回の本多劇場は超スペシャルです。

原 僕は演劇を始めた当時はジュニアで、仕事が多いわけでもなかったので、お金がありませんでした。そのような状況で、舞台のお仕事が入ったから勉強しようと、当日券で下北沢の小劇場を回っていました。当時は3000円くらいで見ることができたので、1人でメモ帳を片手に見に行っていました。

いとう 何を書いていたの?

原 本当に演劇のことが分かっていなかったから、「この役者さんのこのペットボトルの飲み方が良かった」とか、役者さんの演技に違和感があれば、なぜ違和感を覚えたのかを、殴り書きでメモ帳に書いて、終演後に見直すということをしていました。それが僕の演劇の始まりで、その始まりの場所が下北沢でした。でも、本多劇場は3000円で見ることができないので、その当時は行けませんでしたし、どの役者の先輩に聞いても「本多劇場って、ちょっと特別だよね」とおっしゃっていたので、僕の中でも本多劇場に対する思いが募ってきています。そして、本作で初めて本多劇場に立ちます。

いとう 千秋楽に2人で泣いているかもね(笑)。

原 (笑)。

しかも、僕は数年前まで下北沢に5年間ぐらい住んでいたんです。下北沢はアーティスティックな街で、その夢を追う人が集まる街という憧れと執着もあります。

(取材・文・写真/櫻井宏充)

山田ジャパン2025年9月公演「ドラマプランニング」は、9月26日~10月5日に都内・本多劇場で上演。

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