「酒飲みの舌」を持って生まれたOL・村崎ワカコがさまざまな酒場をさすらい、女ひとり酒を堪能する人気ドラマシリーズ「ワカコ酒」。今年初めのSeason8に続き、早くもSeason9が10月1日(水)からBSテレ東で放送中だ。

年に2Seasonの放送は番組史上初の快挙で、今回は地方ロケも北海道と福島の2カ所を巡るなど、開始から10年を迎えて絶好調。主人公・ワカコ役の武田梨奈が、Season9の見どころや番組に懸ける思いを語ってくれた。

-今年初めに放送されたSeason8で10年目に突入したと思ったら、早くもSeason9を迎えました。お気持ちはいかがですか。

 すごくうれしいです。実はSeason8の放送前に「今年はSeason9もやります」とお聞きして、私も驚いたんです(笑)。毎年撮影させていただくだけでも奇跡的なことなのに、年に二回なんて夢にも思わなくて。俳優の先輩方が「役者をやっていて、そんな機会はめったにないよ」とおっしゃるので、その幸せをかみ締めています。

-しかも、今回は地方ロケも2カ所を巡る豪華版ですね。

 1年に2Season放送だけでもありがたいお話なのに、その上2度も地方ロケに行けるなんて、思ってもいませんでした。2話にわたる北海道(留萌市と増毛町)には少し長く滞在し、撮影の合間に色々なお店に伺うなど、濃密な時間を過ごしました。その上、SUP(スタンドアップパドルボード。

サーフボードのようなボードの上に立ち、1本のパドルで水面を漕ぎながら進むウォータースポーツ)にも挑戦させていただいて。今までで最もアクティブなワカコかもしれません(笑)。北海道の雄大な自然の風景を捉えるため、ドローン撮影も行ったので、「これが『ワカコ酒』!?」と驚くような迫力の映像になったと思います。

-SUPは初挑戦でしょうか。

 そうなんです。だから、もしボードから落ちてずぶ濡れになると、撮影スケジュールが大きく変わってしまうというプレッシャーもあって。スタッフの皆さんは、私が落ちた場合と落ちなかった場合、2パターンのスケジュールを用意していたようですが(笑)。

-とはいえ、アクションが得意な武田さんとしては、失敗するわけにはいきませんね。

 おかげさまで、何とか無事にクリアできました(笑)。でも、静寂の中で行うSUPは、単なるスポーツではなく、ヨガのような精神の鍛錬に近いものだと感じました。息抜きしたいときに、また行ってみたいです。

-そして、もう一つの地方ロケは福島県の北塩原村。

磐梯山も近い風光明媚(めいび)な土地で、こちらはワカコの会社の同僚、みぃさん(山田キヌヲ)、アベちゃん(渡部瑞貴)と3人で女子旅ですね。

 とても新鮮でした。撮影後は3人で温泉に入り、「10年続いたんだよね。すごいね」としみじみ語ったりして。初めて訪れた五色沼の美しさにも感動しました。人に手を加えられることなく、こんなに美しい風景が自然に生まれ、そのまま残っているなんて本当にすてきだなと。

-どちらも、地元の方から歓迎されたのではありませんか。

 皆さん、とても歓迎してくださいました。撮影後には打ち上げまで開いてくださって。普段は東京近郊での撮影が多く、地方の反響を知る機会はなかなかありませんが、今回は各地に「ワカコ酒」をご存じの方がいて、幅広い方々に届いていることを知り、励みになると同時に責任も感じました。おいしいものを実際に味わったからこそ、それをきちんと作品として世の中に届けなければいけないなと。そのために、現場では常に皆さんと話し合い、日々試行錯誤し、よりおいしく見せる方法や伝え方を探りながら撮影を進めています。

-そういう心掛けが、番組が10年続いた理由の一つというわけですね。

 私だけではありません。視聴者にもおなじみの野添義弘(ワカコ行きつけの店「逢楽」の大将・石田勝一役)さんやSeason8から参加してくださっている津田寛治(「こもり亭」の大将・小森賢役)さんは、カメラが回っていないときも、包丁の練習をしているんです。鎌苅健太(「こもり亭」に移った元「逢楽」の従業員・青柳翔太役)さんは、撮影の1週間くらい前から、実際にお店で練習していますし。そんなふうに、誰もが役に対して真っすぐ向き合っているんです。それがきっと、出演してくださる実際の店員の方や酒蔵の方に対する皆さんの敬意の示し方なんだろうなと。そういう方々が集まっているこの番組は、本当にすてきだなと改めて思いました。

-一方の東京近郊では、武田さんの地元・神奈川県の有名な飲み屋街、横浜の野毛でもロケしていますね。

 映画館も近く、野毛にはよく通っていたので、ずっと取り上げてほしいと思っていたんです。だから今回は「ついに来た!」と(笑)。

-ただ、野毛は通の方が通うイメージがあり、初心者にはやや敷居が高そうですが…。

 確かに、初めての方が1人でお店に入るのは勇気がいるかもしれません。

でも、今回の「ワカコ酒」を見たら、皆さんも気軽に行けるようになると思います。女性の常連客もいらっしゃいますし、昔から知っているような親しみやすい雰囲気のお店ばかりですから。おかげで、ゲストで出演してくださった玉袋筋太郎さんも「結構酔った」とおっしゃっていましたし、私もSeason9の中で最もほろ酔いした回でした。それくらい楽しかったです。

-そういうお話を伺うと、実際に行ってみたくなります。

 遠方から野毛に行かれる場合、夜は終電が気になる方も多いと思います。その点、今回のワカコは、昼間に動物園へ行った後、早い時間から野毛の街に繰り出す形でベストな一日の過ごし方をしているので、ぜひ参考にしてください。

-Season9も見どころ満載ですね。ところで、長寿番組はマンネリ化する可能性もありますが、その点についてはどのように考えていますか。

 その葛藤は、以前はありました。でもあるとき、監督に相談してみたら、「『ワカコ酒』の良さは、変わらないことだから」とおっしゃってくださって。日常の中でワカコがお店に入り、目の前に出されたお酒とお料理をおいしく食べる姿を、皆さんは楽しんでいるんだよ、と。

お店は毎回違いますし、いつものビールも、組み合わせる料理や空間が変われば、リアクションも自然と変わってくる。そう考えると、毎回同じように過ごしているように見えて、実はそうではないんだなと。それ以来、「今回はこうしよう」みたいなことは考えないようになりました。

-変わらない良さもありますね。

 同時に、普段の仕事帰りにお酒を飲むだけでなく地方に足を運ぶことで、日常の素晴らしさと非日常の特別感が味わえることを、今回は改めて確認できたSeasonでした。

-それでは最後に、今後の武田さんの予定とSeason9に向けての意気込みをお聞かせください。

 久しぶりに主演したアクション映画『By 6 am 夜が明ける前に』が10月3日から公開し、インドとの合作映画『シャンバラストーリー』も大阪アジアン映画祭でお披露目しました。「ワカコ酒」については、皆さんとSeason10を目標に頑張ってきましたが、それがこんなに早く近づくとは思いませんでした。おかげで、今はさらに大きな目標を描いています。ただそれも、すべてはSeason9の反響次第です。まずは、皆さんと一緒にSeason9を盛り上げ、Season10につなげていけたらと思っています。応援よろしくお願いします!

(取材・文・写真/井上健一)

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