【写真】凄まじいパワーでKアリーナ横浜を圧倒したLUNA SEA
2023年10月8日、こけら落としされたばかりのKアリーナ横浜には黒い服に身を包んだ人で溢れかえっていた。老若男女問わぬ顔ぶれは、瞳をキラキラと輝かせ胸の高鳴りを抑えられぬよう。
ライブは1996年時と同様、アルバムのトップを飾る「WITH LOVE」で幕開けとなった。重厚感のあるギター、噛みしめるようなベース、力強く踏みこまれるドラム、渋みの利いたボーカル。アップナンバーのような派手さはないが「レジェンドが現れた」と物語るような堂々たる登場だ。オーディエンスもひとつひとつの音を噛みしめ、吸い込まれるようにステージを見つめる。

SUGIZOがギターを歯切れよく掻き鳴らし「G.」に導かれると、一気にクールなロックンロールの雰囲気へ。バシバシとストロボは瞬き、ステージには花火も噴出。煌びやかな演出もさることながら、5人の演奏が放つパワーは凄まじく、眩暈がしそうになるほどだ。突き上げられた拳はメロディーに合わせて波を描き、この時を待ちわびていたことを鮮明に謳っていた。

RYUICHIの歌声が深く響く「END OF SORROW」、2本のギターが絶妙に絡みあう「LUV U」、ばっちりのタイム感でグルーヴが回転する「SLAVE」と、『STYLE』収録曲を中心としたセットリストを展開。オープニングを駆け抜けていく頃には、オーディエンスの熱気で会場の温度が上がったようだった。
「1999」では、2階席の後方までサイケデリックなレーザービームが貫いた。息のあったドラムのビートと弦のピッキングはズンズンと腹の底に沈み、テクニカルなフレーズはひとつの生き物のように体にのしかかってくる。続く「RA-SE-N」では、感情の海へ一気に引きこんでいく。泣き叫ぶように、憂うように、ぶちまけるように、突き刺すように、RYUICHIは妖しくも哀しいシャウトを響かせる。INORANが「SELVES」でウィスパーボイスを吹きこむと、楽曲もよりメロウな雰囲気へ。SUGIZOの弾くヴァイオリンも甘美なビブラートを唱え、前半パートを締めくくったのだった。

20分間の休憩を経て、真矢のドラムソロからライブは再開。大胆でダイナミックなプレイは華やかながらぶれることがなく、抜群の安定感を魅せつける。その演奏に乗っかるように、ステージ袖からJも登場。「声が聞こえねえな」と言わんばかりに、耳に手を当てるジェスチャーで観客を煽ると、リズムとメロディーで会場を魅了していく。
RYUICHIが「お前らのことを愛してみたいと思います」と告げると、導かれたのは「DESIRE」。SUGIZOとINORANが向き合ってギターをかき鳴らす一幕もあり、そんなふたりをRYUICHIは嬉しそうな表情で眺める。Jが最初期に作曲した伝説のナンバー、「TIME IS DEAD」が投下されるとフロアもここぞとばかりに大盛り上がり。サビのリズムに合わせて突き上げられる拳は、専門的な機関でレッスンでもしてきたのではないかと思うほど揃っていて、ライブの一体感をより一層増していた。「もういっちょ、いくぞ!」という宣言を受け「ROSIER」に繋がれると、オーディエンスも大熱狂。
さらには「スタンドのやつらも! アリーナのやつらも! Kアリーナ全員で飛ばしていくぞ!」と煽りをいれ、最後のパートにパワーを注ぎこんでいった。本編のラストを飾ったのは、刺激的な照明とサウンドで魅せる「HURT」だ。ズシズシとくる音の弾丸で打ちぬき、その凛とした佇まいで魅せていく。想いのたけのステージに刻み付けると、ギターのハウリングがアリーナを埋め尽くすなか、メンバーは舞台から姿を消した。
一瞬で音をぶつっと止める幕引きは、スイッチがパッとオフになり物語が瞬時に終わったような印象を与えたのだった。
本編が終わり程なくすると、アンコールに呼ばれてメンバーは再登場。RYUICHIは、ステージバックのスクリーンに映し出されたアルバム『STYLE』のアートワークを指さしながら「かっこよくない?」と満足そうな表情だ。「IN SILENCE」と曲名をコールすると会場には「ふぅ~!」と歓声が巻き起こりミラーボールがキラキラと輝き始めた。ステップのように弾むクリーントーンのギターに風のように爽やかなアコースティックギター。間違いなく、この日で一番ポップな音が鳴っている。オーディエンスもそれぞれが体を揺らしたり、手を掲げたりして、自由に音を感じているよう。

最後のMCパートでは、メンバーの自己紹介が行われた。観客がそれぞれに呼びかける声も一段と大きくなり、いかに5人がSLAVEから愛されているかということを強く感じさせる。真矢が「じゃあ、一言だけ。お前ら、本当に最高だぞ! 幸せいっぱいのツアーに年末までしたいと思います。みんな、よろしくね」と告げれば、Jは「こんな瞬間2度とこないと思ってました。だけど、年末までみんなで楽しめるね」とメンバーに視線を送ってにんまり。INORANはRYUICHIの元にかけより、RYUICHIにマイクを「どれにしようかな」と選ばせおどけてみせ、SUGIZOは「みんな本当に最高です。Kアリーナ最高です。これから年末まで一緒に、この狂気のLUNA SEAを進化させていきましょう」と未来を見据える。締めを飾ったRYUICHIは、オーディエンスの自分を呼ぶ声を聞きながら、嬉し恥ずかしで口元を緩め、「自分たちの見たいもの、やりたいものを掲げてきたけど、みんなと共にまだまだやれそうだよね。年末まで飛ばしていこうぜ!」と、さらなる飛躍を誓う。「PRESIOUS...」では四方八方から声が湧き出たようなシンガロンが巻き起こり、「WISH」ではイントロ終わりにファンが一体となってジャンプ。


Wアンコールでは、かつてのパフォーマンス映像と共に「FOREVER&EVER」を披露。スクリーンに映し出されるVTRと同じ画角で、リアルタイムの彼らを見せようという意図を感じさせるカメラワークがなんとも粋で、LUNA SEAというバンドが重ねてきた年月の重さを想起させる。その美しい年の重ねかたといったら、成長や進化といった言葉が薄っぺらく感じてしまうほどなのだ。“彼らは自分たちのスタイルを守って時を重ねてきた”という事実が、ただ舞台上には存在していた。今の彼らだからこその説得力を乗せて楽曲を魅せると、ライブ全編を締めくくったのだった。
終演後のスクリーンに映し出されていたのは、「Have you found your STYLE」の文字。自分たちのスタイルを見つけ、自分たちのスタイルを貫いていた彼らだからこそ、軽薄な文字列ではなく熱いメッセージとして胸に突き刺さる。27年という時を経て、以前から愛されていた楽曲たちに、新しい命を吹き込んでしまった彼らだからこそ。そして、この日さえもLUNA SEAにとっては、続いていく歴史の1ページに過ぎない。これからの彼らが、いったいどんな未来を見させてくれるのか。このツアーを駆け抜けていった先の5人に、さらなる期待をしたい。
(取材・テキスト:坂井彩花)
