どれだけ周りが熱狂し、その一挙手一投足に注目が集まったとしても、大谷翔平は常にこう言うのだ。

「積み重ねですね」

 大谷のメジャー4年目の今シーズン、前半戦は投手として4勝1敗、打者としては打率.279、33本塁打、70打点、12盗塁の成績を収めた。

その活躍が認められ、日本人選手として初めてホームランダービーに出場し、オールスターでは史上初となる投打"二刀流"でプレーした。

大谷翔平が語る得だと思う自己評価。「いい状態の時もそれを超え...の画像はこちら >>

MLBオールスターで史上初の投打「二刀流」で出場した大谷翔平

 その歴史を塗り替える数々の偉業は、日々の積み重ねが大事なんだという思考と、現状に満足しない姿勢のもとで生み出されているものだと思う。

 右ヒジの靭帯再建手術(トミー・ジョン手術)、さらに左ヒザの二分膝蓋骨の除去手術を経て迎えた2019年の冬、大谷はこのように語っていた。

「毎年『大事だな』という積み重ねですね。日本でのプロ1年目も『すごく大事だな』と思っていました。レギュラーを獲るとか、試合に安定して出場するとか、結果を残すとか......次の年に向けてかなり大事な年だと思っていました。

そして2年目も『ここが勝負の年』と思ってやりましたし、3年目は最多勝などいろいろ受賞できましたけど、バッティングが悪かったので次の年はそこを頑張って、(投打)どっちもいい成績を収めたい......だからまた『勝負の年だな』と。メジャー1年目もそうでしたし、バッター1本でいった2年目もその地位を確立する『勝負の年』と思ってプレーしていました。本当、そんな感じです」

 今でこそ『Two-Way-Player(二刀流選手)』としての地位を確実なものとしたが、2018年に海を渡った当初は、アメリカ国内に『二刀流』に対して懐疑的な目を向けられていたのは事実だ。

 メジャー1年目は前半戦の活躍はあったものの、投手としてはシーズン途中で離脱してオフシーズンには右ヒジを手術。2019年は打者一本で挑むシーズンとなったが、秋に左ヒザを手術した。そして2020年シーズンは、コロナ禍でゲーム数が極端に減少したとはいえ、投手としてはわずか2試合に先発しただけで、打者としても打率1割台、7本塁打に終わった。

 ピッチングについて、「結果的に状態、フィジカル的に(マウンドに上がるのが)早かったですね」と言い、バッティングについては「(7本目のホームランが)唯一よかったぐらい」と悔しさを押し殺した。

 順風満帆どころか逆境の連続だったが、積み重ねてきた日々が結果として表れ始めたのが今シーズン。「二刀流」に対しての懐疑的な目が、期待と歓喜に変わっていった。かつて大谷は、メジャーでの二刀流についてこのように語っていた。

「バッターとしてその地位を確立して、信頼を築きたい。ピッチャーとしてはなおさらですね。

(メジャー移籍)1年目に少ししか投げていないので、はたして本当に投げられるのかという疑問をチームメイトやスタッフ、ファンの方は持っていると思うので、なんとかチームを勝利に導いて、信頼を勝ち取らなければいけないと思っています。それは1試合や2試合で確立できるものではないので、1年を通してアピールしたい」

 まだまだ道半ばである。今シーズン前半戦の成績に対しても、もっとやれたと思っていたところはあるだろうし、満足などしていないはずだ。「大谷翔平」というプレーヤーを、自分自身こう表現する。

「良くても悪くても、どんどん変えていくというのはいいところじゃないかなと思います。現状を守りにいかないという性格ではあるので......すごくいい状態の時でも、それを維持していこうというよりも、それを超える技術をもうひとつ試してみようかなと思います。

挑戦してみようかなというマインドがあるのは、得なところだと思います」

 立ち止まらない、挑み続ける──そのマインドで、大谷翔平はこれからも新たな歴史を刻んでいくに違いない。