セルジオ越後の「新・サッカー一蹴両断」(1)
2006年から昨年末まで18年間に渡って『週刊プレイボーイ』で掲載されていた名物コラムが、このほど『web Sportiva』に移籍。第1回のテーマは「2025年の日本代表」だ。
【指標となるのはあくまでW杯本番の結果】
ほんの1年前にアジアカップで2回も負けたことをもう忘れたのかな。今の段階で「史上最強」などと持ち上げるメディアの報道を見ると、そういう気持ちにもなる。さすがに気が早すぎるよ(笑)。
3月20日、埼玉スタジアムで行なわれるバーレーン戦に勝てば、3試合を残して早くも日本代表のW杯出場が決まる。
ここまでの北中米W杯アジア最終予選で、日本は初戦の中国戦(ホーム)に7-0、続くバーレーン戦(アウェー)に5-0と大勝スタートし、その後も順調に勝ち点を積み重ねてきた。唯一、白星を奪えなかったオーストラリア戦(ホーム)にしても、相手に打たれたシュートは、オウンゴールにつながった1本だけ。試合内容では圧倒していた。僕は日本に来て50年以上経つけど、こんなにスリルのないW杯最終予選は初めて。もう「絶対に負けられない戦い」というフレーズもピンとこないね。
じゃあ、それだけ日本は強くなったのか。確かに海外でプレーする選手は増えた。
加えて、日本はグループ分けにも恵まれた。ライバルと目されていたオーストラリアは、以前よりも明らかにレベルが落ちた。日本が苦手にしていた(ティム・)ケーヒルのような選手は見当たらない。Jリーグでスタメンじゃない選手(町田のミッチェル・デューク)が出ているくらいだから。
また、将来のW杯招致に向け、国を挙げて強化に力を入れているサウジアラビアにしても、国内リーグに有力な外国人選手をたくさん呼んだせいで、代表選手が試合に出られなくなるという本末転倒な事態になっている。
そう考えると、史上最強どうこう言うのはやはり時期尚早。アジア最終予選を勝ち抜くのは当然で、指標となるのは、あくまで来年のW杯本番でどこまで勝ち上がれるか。選手もそれはわかっているだろう。
【協会のマッチメイクの頑張りに期待したい】
その意味でまず目を向けたいのが、今年の強化スケジュール。3月20日のバーレーン戦でW杯出場を決めると、最終予選の残り3試合は消化試合になってしまう。
ただ、幸いにも、このグループはまだ全チームが予選突破の可能性を残しているので、相手は生きるか、死ぬかという気持ちで試合に臨んでくる。強化という意味では、レベルのよくわからない観光気分の相手と国内で親善試合をするよりも、全然いいんじゃないかな。2位、3位争いは最後の最後までもつれてほしいよ(笑)。日本としては、試合ごとに選手を入れ替えたり、3バックだけでなく4バックを試すなどしたり、うまく活用してほしいね。
一方で、7月の東アジアE-1選手権(韓国)に関しては、森保一監督としても位置づけが難しい。欧州組を招集できないので国内組が中心。欧州組を脅かすような選手の出現に期待したいけど、現実的じゃない。無難にこなすほかない。
そして、現時点では正式発表されていないけど、9月にアメリカ遠征(アメリカ戦、メキシコ戦)、10、11月には、W杯予選が9月に終わるアルゼンチン、ブラジルといった南米勢との親善試合が計画されているという。これは楽しみだね。アメリカ遠征はW杯本番のシミュレーションになるし、両国ともレベル的に悪くない。
10、11月に関しては、欧州勢とのマッチメイクが難しい状況が続くなか、アルゼンチン、ブラジルとの試合を組めたら最高だ。アルゼンチンは前回カタールW杯の優勝国、ブラジルは南米予選で苦戦していて「弱くなった」という声もあるけど、逆にそういう時ほど意外とW杯本番で結果を出すからね(笑)。
森保監督も日ごろから「強い相手と戦いたい」と言っているので、ここは日本サッカー協会の頑張りどころ。ぜひこの2試合を実現させてほしい。それも、できれば国内開催ではなく、欧州開催がいい。相手も含めて、代表の大半を占める欧州組の移動や時差の負担を減らすことを考えれば、そのほうが合理的。選手ではなくスタッフが長距離移動すればいいんだよ。
(2)につづく>>セルジオ越後による今季の欧州組評「全体的に苦戦ぎみ。三笘と久保には早くビッグクラブの壁に挑んでほしい」