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【悔しい銅メダル】

 世界各国から招待された8名の有力選手によって争われる冬季X Games 2025が、現地時間の23日(木)にアメリカ・コロラド州のアスペンで開催された。

 初日の男子スーパーパイプ(ハーフパイプ)に出場した日本の平野歩夢は、予選1本目の滑走で86.33をマークして決勝進出を果たすと、上位4名による決勝では、途中転倒で終わった1本目を経て、2本目に92.33の高得点を記録し、会場を沸かせた。

 後続で世界ランキング1位のスコッティ・ジェームス(オーストラリア)、日本の戸塚優斗にはわずかに及ばず3位で大会を終えた平野は「自分の感覚では、結構いいパフォーマンスが出せたと思います。

たったひとりしか勝てない世界で戦っているので仕方ない部分はありますけど、僕もスノーボードに人生を懸けているところがあるので、負けた試合の後にはいつも悔しさが残ります」と唇を噛んだ。

「当初思い描いていた作戦とは違う形で戦わなければいけなくなり、この日のX Gamesに合わせて、いろいろと構成を変えながら試合に臨みました」と振り返った試合では、通常のワールドカップで使用されているものよりもサイズが小さいハーフパイプが使用された。

 そのため滞空時間の長い技を繰り出しにくい状況での戦いが求められ、平野は自身の代名詞でもある「トリプルコーク1440」を封印せざるを得ない状況に。得意技を使えないなかで、この試合に向けた演技を新たに構成して本番に挑むこととなった。

「自分がやりたかった本来の滑りが見せられないようなコンディションだったので、自分の今後を見据えたパフォーマンスが十分に見せられなかった点は残念でした。今回の試合はタイトな部分も感じながら、試合に向けた調整を進めていくことになりましたが、それでも自分としては納得できる部分もあったので、そこは収穫だったのかなと思います」 悔しさと微かな手応えを感じた試合をそのように振り返った平野だが、自身の持ち味を発揮しにくい状況でも、試合では高さのある5つのエアーを織り交ぜながら、安定した滑りを披露。終盤には約8年振りに披露した「スイッチダブルロデオ」もしっかり決め、ベストスコア92.33を記録。やや得点は伸び悩んだ印象も受けたが、それでも全体3位でX Gamesを締めくくった。

「自分としては、思ったよりも点数が伸びなかったという残念な思いや、少し納得いかない部分も正直ありました。ただ、(選手の演技を)ジャッジが評価する世界ですし、自分がその場で何かを伝えられるわけでもありません。自分の気持ちをしっかり受け止めて、自分の力に変えていくことが、悔しさのなかにある唯一のメリットだと思う。その意味では自分をやる気にさせてくれる結果になったと思うので、それをきちんと受け止めて、次の試合に向けて気持ちを切り替えて準備をしていけたらなと思っています」

平野歩夢が得意技を封印しながらもX Gamesで銅メダル獲得 冬季五輪連覇に向けた「唯一のメリット」とは
観衆を沸かせた平野 ©Kosuke Shinozaki

【目標は冬季五輪連覇】

 そう思いを語る平野が「今後の一番の目標」としているミラノ・コルティナダンペッツォオリンピックが、約1年後に迫っている。

北京大会に続く2大会連続の金メダリストへの期待も高まるが......。

「もちろん自分らしい滑りを突き詰めて、圧倒的な滑りを見せて1番になれたらいいなと思っていますが、一方では大会のレベルも年々上がっているので、誰かの滑りを気にするのではなく、自分の身体やいろいろな技術と向き合いながら、自分自身の滑りに集中していくことが大切なのかな。ここまで成長してこられた自分のことを一番大事にしていきたいですし、ここから1年間成長を続けたその先にオリンピックの好結果があることを信じて、これからも頑張っていきたいなと思います」

 昨年12月には通算7勝目のワールドカップ優勝を成し遂げるなど、今季も安定したパフォーマンスを見せる平野は、"らしさ"を追い求めたその先にあるオリンピック連覇の栄冠を掴むことができるだろうか。

【Profile】
平野歩夢(ひらの・あゆむ)
1998年11月29日生まれ。新潟県村上市出身。15歳で出場したソチ2014冬季オリンピックで、銀メダルを獲得。冬季オリンピック日本人選手史上最年少メダリストに輝く。平昌2018冬季オリンピックでは2大会連続銀メダルを獲得。2018年秋からはスノーボードとスケートボードの二刀流に挑む。東京2020夏季オリンピックスケートボード日本代表。北京2022冬季オリンピックで金メダルを獲得。ユニクログローバルブランドアンバサダー。

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