Jリーグのキャンプでわかった今年の注目クラブ 後編

2月中旬のJリーグ開幕に向けて、充実のキャンプを行なったクラブはどこか。最も多くのクラブが集まった沖縄県の各キャンプを取材したライター、カメラマンに今年注目のクラブを教えてもらった。

前編「充実のキャンプ、昨年からの変化が期待できるクラブ」>>

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【今シーズン必見の選手たちがいる】

六川則夫(サッカーカメラマン)

京都サンガF.C.

 1月15日から那覇市を拠点に沖縄キャンプ巡りをしているが、フリーの身としては、広く薄くを基準に、どれだけ写真の撮れ高があるかが、チーム評価の軸になってくる。

 たまたま取材に訪れた時の練習メニューや、トレーニングマッチなどの有無によって差が生じるが、シャッターチャンスを"感じさせる"シーンが多ければ多いほど、チーム評価は高くなる。

 練習でわかりやすかったのが、京都サンガF.C.だ。チームの事前情報がなくても、頭から練習を撮影していると、監督がどんな狙いをもって、何を全員に落とし込みたいのかが見えてくる。

 パターンや段取りとはほど遠い、生き残りをかけた激しい局地戦が段階的に展開されていた。そのなかで監督の意図をよく体現していたのは、FWラファエル・エリアス。攻守の切り替えの早さ、ボールへの寄せ、スプリント、ゴール前での想定以上の反応。京都ファンならずとも今年も必見必撮の選手だ。いざ亀岡へ、帰りは保津峡下り!

浦和レッズ

 選手層が厚いチームにあって、ほぼ盤石のイレブンが見えてきた。唯一弱点だったDF陣に、かねてから噂のブラジル人ダニーロ・ボザが加入したことで、不安材料が解消された。

 今シーズンの浦和の命題は、MFマテウス・サヴィオをどこで生かすかに尽きる。柏レイソルでもそうであったように、彼のドリブルから攻撃のスイッチが入る。キャンプでは複数のポジションを試され迷走感を滲ませていたが、主戦場は左のアウトサイドだ。

彼の背後にはメンタル、フィジカルとも「常在戦場」の荻原拓也がいる。この「サビ・オギ」コンビが機能しており、おそらくチーム史上最強のタッグではないか。

 ボランチには安居海渡と渡邊凌麿、トップ下にはまだフィット感が見えないが、松本泰志がいる。おっと、忘れてはいけない。右サイドには金子拓郎がいるのだ。尽きることのない補強が、実を結びそうなのがWE ARE REDS。走れ、埼スタへ。

RB大宮アルディージャ

 取材した当日は、セットプレーの練習が行なわれていた。キッカーは横浜FCから加入したFWカプリーニ(左利き)と、京都から移籍したMF谷内田哲平(右利き)が交互に務めた。共に正確なキックが持ち味である。

 これまでキッカーはMF小島幹敏やDF茂木力也が務めることが多かったが、キッカーの選択肢が増え、セットプレーが大きな武器になりそうだ。

 ボールの受け手にはFW杉本健勇に加えて、FW豊川雄太が加わった。

豊川は杉本とは違うタイプのストライカーなので、お互いのよさを消しあうことはない。頭でも足でも、豊川は面でボールを捉えるのがうまい。加えて振りはシャープでコンパクトだ。杉本とは違うプレーの時間軸をゴール前で持っているので、対面するDFは混乱するに違いない。

 外国籍選手(FWオリオラ・サンデー、FWファビアン・ゴンザレス)も控えている。破壊力をもった前線はJ2屈指だ。大宮は、長崎とともにJ1昇格の可能性十分。牛に引かれてNACK5に。

【新戦力に飛躍の可能性】

松尾祐希(サッカーライター)

ガンバ大阪

 ダニエル・ポヤトス体制2年目のガンバ大阪は、新戦力が飛躍の可能性を漂わせている。

 ベルギー1部のウェステルローに活躍の場を求めた得点源・坂本一彩の流出は痛恨だが、新たな1トップ候補として20歳の南野遥海が台頭しつつある。

 昨季は栃木SCで武者修行を積んだレフティは、パワフルなシュートを武器に1月21日の水戸ホーリーホック戦(45分×3本/2-0)で1得点をマーク。24日の北海道コンサドーレ札幌戦(45分×3本/2-2)でも果敢にゴール前に飛び込んでオウンゴールを誘発するなど、成長の跡を示した。

元チュニジア代表のイッサム・ジェバリ、東京五輪メンバーの林大地といったストライカーたちに割って入る資格は有している。

 ロアッソ熊本から復帰した22歳の唐山翔自も、本職のセンターフォワードではなく右サイドハーフで新境地を開拓中。日本代表歴を持つMF奥抜侃志(ニュルンベルクから加入)は左サイドで得意のドリブルを用い、攻撃にアクセントをつけている。

 宇佐美貴史、食野亮太郎、山田康太、山下諒也といった2列目の選手を脅かす存在になれば、指揮官の頭をいい意味で悩ませるはずだ。

東京ヴェルディ

 昨季16年ぶりにJ1の舞台に戻り、6位でフィニッシュした東京ヴェルディは今季も面白いチームに仕上がっている。沖縄キャンプでは "城福ヴェルディ"の躍進を支えたハードワークとプレー強度に磨きをかけつつ、既存戦力と新戦力の融合に時間を割いた。

 とりわけ目立ったプレーを見せていたのが、G大阪から加わったMF福田湧矢だ。1月20日に行なわれた浦和レッズとのトレーニングマッチ(45分×3本/2-3)では、1本目からピッチに立つと左ウイングバックでプレー。

「我々が要求する守備のことをしっかり理解しようとして、表現をしてくれる。アプローチの速さや攻撃に移っていく迫力はこのチームの武器になるはず」(城福浩監督)

 百戦錬磨の将が賛辞を送ったように、緑の新たな"矢"となる可能性は十分だ。

 ボランチとシャドーで試されていたMF平川怜、昨夏にパリ五輪を経験したDF鈴木海音(ともに磐田から加入)は戦術理解度を深めている最中だが、フィットできれば戦力の拡充が見込めるだろう。

RB大宮アルディージャ

 2年ぶりにJ2に戻ってきたRB大宮アルディージャは、レッドブルグループに加わって初のシーズンとなる。

エンブレム、クラブ名が刷新されたが、変化があったのはグラウンド外だけではない。

 沖縄キャンプでは昨年以上に声が出ており、ポジティブな言葉がそこかしこで飛び交う。その中心にいるのが、京都サンガF.C.から加わったFW豊川雄太だ。3-4-2-1のシャドーを主戦場とするアタッカーは持ち前の明るさでチームを盛り立てており、加入1年目ながら雰囲気作りに一役買っている。

 そうした状況下で行なわれているキャンプでは、FW杉本健勇、DF市原吏音といった面々と11名のニューフェイスが熾烈なレギュラー争いを繰り広げており、期待値は高い。

 また、見逃せないのが、スタッフ陣の充実。DF村上陽介が「まだあまり変化はない」と口にしたが、「スタッフの人数が増えたこと」は"新生アルディージャ"の象徴だ。コーチとテクニカルスタッフがひとりずつ増え、より細部にこだわったトレーニングが可能になった。現時点で目に見える効果を感じ取るのは難しいが、長いシーズンを考えればプラスに働くはずだ。

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