第2回(全4回):2025-26シーズン プレミアリーグ展望

プレミアリーグの新シーズンが、現地時間8月15日にいよいよ開幕する。英国の高級紙『ガーディアン』で長年にわたって執筆し、同メディアのポッドキャスト『フットボール・ウィークリー』にも頻繁に出演するジョン・ブルーウィン記者が順位を予想し、注目選手を挙げ、日本人選手の期待値を示す(全4編)。

2025-26シーズン プレミアリーグ順位予想(下位10チーム)
11位 クリスタル・パレス
12位 エバートン
13位 フラム
14位 ノッティンガム・フォレスト
15位 ウォルバーハンプトン・ワンダラーズ
16位 ブレントフォード
17位 リーズ・ユナイテッド
18位 バーンリー
19位 ウェストハム・ユナイテッド
20位 サンダーランド

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【ELに出場できない見込みのクリスタル・パレス、エバートンは新時代へ】

 昨季のFAカップを制して初のメジャータイトルを獲得したクリスタル・パレスだが、その後、マルチクラブ・オーナーシップの問題(訳者注:同一オーナーが複数のクラブを保有している場合、同じ大会への参加が制限される)で、新シーズンのヨーロッパリーグ(EL)には出場できなくなり、カンファレンスリーグに参戦することに。この状況により、戦力補強がままならず、残り契約が1年となったエベレチ・エゼとマーク・ゲイの攻守の軸も、移籍が濃厚と観られている。

 それでも知的なオーストリア人指揮官オリバー・グラスナーは、「昨年より、シンプルに心地よく準備を進められている」とポジティブな姿勢を保っている。コミュニティーシールドでプレミアリーグ王者リバプールをPK戦の末に下したことで、より前向きにシーズンに入れそうだ。

 イングランドでもっとも伝統的なクラブのひとつ、エバートンが新たな時代へ突入する。第2節ブライトン&ホーブ・アルビオン戦で、新本拠地ヒル=ディッキンソン・スタジアムがお披露目されるのだ。チームは昨季、12年ぶりに復帰したデイビッド・モイーズ監督のもとで安定感を取り戻し、騒動の多かったフロントもついに落ち着きを取り戻した。

 彼らは指揮官の望みに応えるように、キーラン・デュースベリー=ホールら即戦力を補強。「マーケットが閉まるまでに、あと1、2人の選手が加わると信じている」とモイーズ監督は経営陣をまだまだプッシュしている。トップハーフに入れるかどうかは、そこに左右されそうだ。

【ノッティンガム・フォレストのお騒がせオーナーがパレスに物言い】

 ロンドンの中堅クラブ、フラムは実に動きの少ない夏を過ごしている。本稿執筆時点で、新戦力は34歳のフランス人GKバンジャマン・ルコントのみ。マルコ・シウバ監督は攻撃的なスタイルでチームをプレミアリーグの常連に仕立てあげたが、最近、出身地ポルトガルのメディアにこう漏らしている。

「短期間なら、フラムに集中しようと思うが、来季は何が起きるかわからない」と。

アレックス・イウォビやアンドレアス・ペレイラら、エリートクラブから見放されたタレントを再生させる手腕を持つ指導者も、経営陣の協力が得られないなら、より良い職場を求めるか。降格はなさそうだが、ボトムハーフのこの辺りに落ち着きそうだ。

 ノッティンガム・フォレストのギリシャ人オーナー、エヴァンゲロス・マリナキスはリーグのお騒がせ者だ。自身もオリンピアコスを保有しているにもかかわらず、パレスのマルチクラブ・オーナーシップを指摘したり、トッテナム行きがほぼ決まっていたキーラン・ギブスの移籍に待ったをかけて、新たに3年契約を結んだりしている。

 チームは昨季、ヌーノ・エスピリト・サント監督のもと、信じられないほどの快進撃を見せたが、最終盤に失速して7位に。主砲クリス・ウッドが33歳となり、その相棒エランガを放出した今シーズンは、本来のポジションに戻るような気がする。

 ポルトガルとの太いパイプを持つウォルバーハンプトン・ワンダラーズは昨季途中に、同国人指揮官ヴィトール・ペレイラを招き、クラブ史上最多連勝を記録するなど、事態を好転させて悠々と残留した。ただしその後、マテウス・クーニャ、ネルソン・セメド、ラヤン・アイト=ヌーリという主軸を一挙に放出。ジョン・アリアスやフェル・ロペスら、新加入組のほうが印象は薄く、飛躍は望めそうにないか。

 ブレントフォードをプレミアリーグの常連に仕立て上げたトーマス・フランク監督がトッテナムに引き抜かれ、チームは様変わりしそうだ。後任にはセットプレー・コーチの元アイルランド代表MFキース・アンドルースが格上げされる形で就いたものの、監督経験はなく一抹の不安がよぎる。過渡期に残留を果たせば、御の字だろう。

【田中碧を中心に据えるリーズ・ユナイテッドが昇格組で唯一の残留か】

 昇格組のなかで唯一、リーズ・ユナイテッドは残留を果たしそうに思える。田中碧を中盤の軸に据え、昨季のチャンピオンシップを制したチームは、イングランド屈指の熱いファンのサポートを誇る。ダニエル・ファルケ監督は過去にノリッチで2度の降格を経験しているが、逆にその経験を生かすこともできるのではないか。

 こちらも北部に本拠を据えるバーンリーも、昇降格を繰り返す"ヨーヨークラブ"にはなりたくないはずだが、その堅実な戦いがプレミアリーグのクオリティーに通用するかは疑問だ。昨季チャンピオンシップで実に16失点しかしなかったチームは、攻撃力に難があり、耐え忍んでも結果につながらない試合も出てきそう。カイル・ウォーカーは経験をもたらすはずだが、それでも......。

 混乱の続くウェストハムが、14シーズン戦ったプレミアリーグに別れを告げそうな予感。大胆な予想ではあるが、昨季途中に招いたグレアム・ポッター監督は、理論と人柄に優れるが、一度うまくいかなくなると、盛り返せなくなりがちだ。放出したモハメド・クドゥスの後釜も獲れておらず、ファンは不満を溜め込んでいる。失敗するクラブの条件は揃っている。

 1879年に創設された北部の古豪サンダーランドが、9シーズンぶりにプレミアリーグに戻ってくる。プレーオフを勝ち上がって昇格を決めた際は、ファンの感情が爆発し、新シーズンへの期待も大きい。

グラニト・ジャカ、シモン・アディングラら、ベテランと若手の実力者が加入し、経営サイドもチームをバックアップしているが、久々のプレミアリーグは困難なものとなると予想する。

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