【大谷翔平】投球内容から見る749日ぶりの勝利投手の意味とド...の画像はこちら >>

前編:大谷翔平「二刀流」復活と「一番打者」としての変化 

8月27日(日本時間28日)、ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平が今季11回目の登板でシンシナティ・レッズを相手に最長の5回、最多の87球を投げ、ロサンゼルス・エンゼルス時代の2023年8月9日以来の勝利投手となった。

【全体の39%を占めた4・5番目の球種】

 その瞬間、スタンドに漂っていた緊張が一気に歓声へと変わった。

 大谷翔平がドジャースタジアムのレッズ戦のマウンドで、ついに復活への大きな一歩を刻んだ。

2023年8月以来749日ぶりの勝利投手。5回を投げきり、2安打1失点、そして復帰後最多となる9奪三振。これは単なる一勝ではなく、言うまでもなく二刀流の完全復活を告げる勝利だった。

 勝ち投手の権利を得たのは、5回2死の場面。TJ・フリードルを87球目のスライダーで一ゴロに仕留め、大谷はゆっくりダグアウトへ向かって歩き始めた。額の汗をぬぐいながら浮かべた表情には、安堵と感慨が入り混じっていた。

「本当に元のように投げられるのかなという不安はありました。でも登板を重ねるごとに自信も増してきています。前回は5回を投げきれなかったので、今日はそれを達成できたのが一番大きいです」と胸の内を明かす。

 もっとも、ゆっくり感慨に浸る間もなく、自分が5回裏の先頭打者であることに気づき、慌ててベンチへ駆け戻るというハプニングもあった。紙一重でつかんだ白星を見届けたドジャースのデーブ・ロバーツ監督は「球数の関係で、あとひとりで交代という場面だったので、勝ち投手の権利を得られたのはよかった。翔平のためにもチームのためにも大きな勝利」と称えた。

 この日の投球で特筆すべきは、カーブ23球、スプリット11球という数字だ。シーズン最多の比重で投じた2球種は、大谷にとって「リハビリ最終段階」を意味していた。

「リハビリの段階としては、まずは真っすぐ、ファストボールをしっかりいい球速で投げきるというところ。ドクターとのコミュニケーションを取ってきたなかで、カーブとスプリットを投げきれれば、フルでいける自信になる」と説明した。

 現時点で、4番目、5番目の球種を全87球の39%も使って抑えたことで、完全復活への確信を後押しした。

 主砲としてDHで試合に出続けなければならないため、マイナーでのリハビリ登板を経ずにメジャー本番で調整を重ねてきた異例のプロセス。それでも見事にやり遂げた。

 もっともポストシーズンの役割は、まだ明確ではない。大谷は「現時点で先発投手は整っているし、ブルペンもしっかり充実している状態だとは思うので、自分の役割としては与えられたイニングをしっかり投げきって勝てる確率を少しでも上げること」と話している。

【チームが最も求めているのは「一番打者」としての役割】

 二刀流として復活を果たした大谷翔平だが、今現在チームから最も求められているのは「一番打者」として打線をしっかりけん引することだ。8月10日のトロント・ブルージェイズ戦では、ロバーツ監督が珍しく大谷のプレーを厳しく責めることがあった。

 この試合、ドジャースは序盤の3対1のリードを守れず、最終的に4対5で逆転負け。

9安打に加え13四球をもらい、毎回のようにチャンスを作りながら、今季ワーストとなる16残塁を記録。3度あった満塁の好機も生かせなかった。

 特に指摘を受けたのは、1点を追う9回1死満塁の場面。大谷が空振り三振に倒れたことだった。ロバーツ監督は、手厳しかった

「この試合を落とす理由はまったくなかった。相手チームはブルペンの投手を総動員し、何度も追い詰められていた。最後の(大谷の)打席でも三振に終わるとは予想していなかった。あの投手(メーソン・フルーハティ)は速球派ではない。センター方向を意識して打つべきだったが、低めの球を追いかけてしまった。それは絶対に避けなければならない。もちろん相手投手もよい球を投げたかもしれないが、その前に、まるでティーに置かれたような打ちごろの球(82マイルの真ん中のスイーパー)があったのに、前に飛ばせなかったのは痛恨だった」

 さらに6回、二盗に成功した直後の場面でも問題を指摘。2死一・二塁で打者フレディ・フリーマンを迎えながら、大谷が三盗を狙って失敗したことについて、「彼の判断だったが、いい野球ではなかった」と批判した。

試合後、ロッカールームが開放されると、大谷はいつもならすぐに帰り支度を始めるところだが、この日は自分のロッカーの前の椅子に座り、珍しくしばらくの間、下を向いたまま動かなかった。

 よく観察している人なら気づくだろうが、大谷は以前から、2ストライク後にど真ん中の球に反応できず、見逃し三振となる場面があった。今季はすでにその回数が19回にのぼっている。理由は言うまでもなく「狙い球ではなかったから」だろう。どんな打者でも2ストライクからの成績は悪くなる。今季の大谷は2ストライク時の打率.179、出塁率.276、長打率.404。それでも受け身にならず、自分の最大の武器である「遠くに飛ばす打撃」を貫き、16本塁打、8二塁打、4三塁打を放っている。

 おそらく大谷が最も気をつけているのは、2ストライクからストライクゾーンを広げてしまい、悪い球に手を出すことだろう。悪い球を振れば振るほど、投手はストライクゾーンに投げる必要がなくなり、ますます苦しくなる。だからこそ、大谷はゾーンぎりぎりの球に意識を集中させている。しかし、その結果として、時にど真ん中の球を見逃してしまう。

 MLBデータサイト『ベースボール・サバント』によれば、大谷は今季、2ストライク時に「ど真ん中の球」を144球見ている。

そのうち19球で見逃し三振となったが、一方で18本の長打も生み出している。また、2ストライク時には393球のボール球を見ており、そのうち139球にスイングしている。大谷が今後さらに減らしたいのは、この"悪い球"へのスイングにほかならない。

つづく

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