これまでの日本代表戦(特にワールドカップ最終予選)で出場機会が少なかった選手が従来の主力組のなかに入り、どれだけのパフォーマンスを見せるのか。
また、中2日で2試合をこなすにあたり、1試合目と2試合目で大きくメンバーを入れ替えてもなお、チームとしての機能性を保てるのか。
この2点である。
ふたつ目のポイントについては、2戦目のアメリカ戦を待つことになるが、ひとつ目については、メキシコ戦で確認することができた。
というのも、今回の代表活動では、ケガやコンディション不良で招集されなかった従来の主力組が多く、これまで出場機会が少なかった選手に、図らずも出番が巡ってきたからだ。
具体的にメキシコ戦のメンバーで言えば、先発出場のDF渡辺剛、DF瀬古歩夢、交代出場のDF関根大輝、MF佐野海舟、FW町野修斗を挙げることができるだろう。
結論から言うと、先発組のふたりについては、及第点に値するものだったと言っていい。
前線の選手が守備でもハードワークできる今の日本代表にあって、この日のメキシコのように愚直にショートパスでのつなぎを狙ってくるチームは、比較的くみしやすい。そんな相性のよさも手伝い、最終ラインに位置する渡辺や瀬古が前向きにボールを奪い取るシーンは多かった。
「最初の20分はハイプレスでいこうと話をして、そこはしっかりハマったが、全部は前から行けないので、そこからローブロックやミドルブロックにうまく切り替えることができた。自分たちのゲームプランどおりで、(対戦相手の)分析がうまくいっている試合だった」(渡辺)
とはいえ、いわばメキシコ戦は、"日本の組手"で戦えた試合であり、相手が日本の嫌がることを徹底してやってくるような場面は少なかった。
渡辺は、攻撃面でもロングフィードからチャンスを作り出しており、その点でも特長を発揮したと言えるが、攻守両面で余裕を持ってプレーできたのは、そうした戦いやすさがあったのも確かだろう。
それは瀬古、あるいは途中出場で3バックの右に入った関根にも言えることだ。
与えられた役割をソツなくこなしたことに間違いはないが、主力組を脅かす、あるいはその穴を遜色なく埋められる存在かというと、まだ計りかねる部分はかなり大きい。
誰が出ても大きくチームパフォーマンスが落ちることはないという意味においては、メキシコ戦はそれなりの収穫があったのかもしれないが、このチームが目指しているのは、ワールドカップでのベスト8進出(それどころか、監督、選手によれば優勝)のはずである。
だとすれば、このレベル(ワールドカップでのベスト8進出経験を持つ、世界のセカンドグループ)の相手に勝ちきることが必要になるはずだが、引き分けたという結果だけの話ではなく、それを予感させる内容を示せていたとも言い難い。
メキシコ戦で示されたのは、よくも悪くも、"誰が出ても試合を作れる"というところまでだ。
その意味で言えば、ひとまず先発メンバーが試合を作ったあとの選手交代と、それにともなう戦略変更も物足りないものに映った。
選手交代によって、MF伊東純也とMF前田大然を両ウイングバックに配し、さらに町野を2トップに近い役割で投入するも、得点の可能性を感じさせるクロスが特段増えることはなく、決勝点を奪うべく攻撃のギアが一段上がった印象は受けなかった。
仮に試合終了間際のシーンで、DFラインの背後に抜け出したFW上田綺世がファールで止められることなくゴールを決めていたとしても、それは日本の怒涛の連続攻撃から生まれたわけではない。全体的な印象を変えるほどのものではなかっただろう。
佐野と町野についても、瀬古や関根同様、特に個人としての出来が悪かったわけではない。だが、結果的に"あの試合展開のあの時間帯に投入された選手"としては、十分な働きを見せたわけではなかった。
「勝ちにいっていたし、得点を取りにいく姿勢は見せられたと思う。でも、そのなかでやるべきことと、どんどん自分が前に行くところは、バランスを見てやらないといけない。
もちろん、そこでは個人のパフォーマンスばかりを責められない。交代カードがうまく活用されなかったことも含め、森保一監督の狙いが有効に作用しなかった結果である。
アジア予選がすべて終わり、これからはワールドカップ本番をより強く意識した準備に入っていかなければならないはず。ところが、そのスタートとなる試合が、なんとも煮えきらない内容に終わった印象は拭えない。
それは誰より、ワールドカップ優勝を目標に掲げる選手たちが一番よくわかっているのではないだろうか。
強豪相手に「いい試合だった」で満足する時代は終わったのだ、と。
確かに収穫はあった。
だが、それ以上に物足りなさが強く残る試合だった。