9月11日から北海道稚内市のみどりスポーツパークで『2025カーリング日本代表決定戦』が行なわれる。

 女子は、2024年日本選手権優勝のSC軽井沢クラブ、2025年の同選手権を制したフォルティウス、世界ランキング国内最上位のロコ・ソラーレの3チームによって争われる。

 大会はまず、総当たりの予選リーグを2度行なう「ダブルラウンドロビン」を実施。上位2チームが決定戦に進む。決定戦は、当該チーム同士の予選の成績を含めた「ベストオブ5」方式で、5試合のうち先に3勝したほうが勝ちになる。たとえば、予選リーグを全勝で突破すると、決定戦で1勝すれば、日本代表チームに内定となる。各チームにとっては、1試合も落とせない厳しい戦いだ。

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 3チームで唯一オリンピアンがおらず、平均年齢が最も若いチームであるSC軽井沢クラブは、さらに若い選手を補強した。札幌国際大学の21歳、三浦由唯菜だ。

 三浦は、ドローもテイクも高い精度で投げ、追う展開でもセーフティに進めたい局面でも、その状況に応じたプレーができるカーリングIQの高い選手だ。上野美優・結生姉妹とは、2022年の世界ジュニア選手権で共闘。日本カーリング史上初の世界大会での金メダル獲得という快挙を果たしている。

 チームには9月に入ってから軽井沢での最終合宿で合流し、上野美は「冷静にチームを見てくれて、でもすぐに(チームに)馴染んでくれた心強い存在」と感謝。三浦自身も、「(SC軽井沢クラブの選手と)積極的にコミュニケーションをとって、プレー面でも安定して次につながるショットを投げたい」と抱負を語った。

 いずれにしても、SC軽井沢クラブは若いチームだけに、ポイントとなるのはやはり初戦のロコ・ソラーレ戦だろう。大会初日の朝、ロコ・ソラーレとフォルティウスが先に1試合を消化するが、そこでアイスの状況を客観的に分析できることをメリットとして、先手を取りたいところだ。

「自分たちがやりたいことをやりきる」(金井亜翠香)
「自分たちが(国内チームと比較して)どこ(のポジション)にいるのか、確認しながら一歩ずつ成長したい」(上野結)
オリンピックに向けて(チームは)日々成長している。それをみなさんにどうお見せできるのか、ワクワクで仕方ない」(上野美)

 選手それぞれがそうコメントしたように、SC軽井沢クラブはどちらかといえば挑戦者の立場にあるかもしれない。だが、持ち味であるリスクを恐れないカーリングは、そのマインドにマッチしている。三浦の加入が起爆剤になれば、夢舞台も見えてくる。

 一方、昨季の女王フォルティウス。日本代表決定戦を前にして、この夏は北海道ツアー2大会に出場したが、初戦の稚内みどりチャレンジカップでは、ミスが生まれたり、ショットがつながらなかったエンドで負の連鎖が発生。傷口を広げてしまい、大敗するゲームも見られた。

 スキップの吉村紗也香は、「プランどおりにいかなかった時、プラン変更の意思疎通を意識したい」と反省。翌週にホームアイスで迎えたどうぎんクラシック(札幌市)では、予選のSC軽井沢クラブ戦こそ大敗を喫したものの、その後のプレーオフでは切り替えて、見事に優勝を飾った。

 チームとして、修正力の高さを身につけつつあるようだ。

また、フィフスにどのポジションもこなすことができる小林未奈が控えているのも、堅実な武器と言える。

 どうぎんクラシックを終えたあと、8月中旬からは韓国に渡航。2018年の五輪会場である江陵カーリングセンターで、日本でも「メガネ先輩」の愛称で知られるキム・ウンジョン率いるチームなど韓国トップクラスの3チームを相手に、日本代表決定戦と同じスケジュールで8試合を消化し、予行演習を行なった。その後、8月末からは稚内で最終調整するなど、念入りな準備を重ねた。

 もともと実績と経験は備えている。昨季の日本選手権でMVPを獲得したサードの小野寺佳歩、世界選手権でショット率93%を超えたリードの近江谷杏菜。彼女らのハイパフォーマンスをつなぐセカンドの小谷優奈が2本のショットをそろえることができれば、吉村の決定力でロコ・ソラーレとも、SC軽井沢クラブとも、互角以上に戦えるだろう。

 吉村はこの代表決定戦に向けて「プレッシャーはあるか?」と質問を受け、「しっかり準備ができていると、同じ緊張でもソワソワではなく、ワクワクのほうが強い。緊張に関しては、怖いものではなく、逆に自分がいい状態に持っていけている証拠。緊張できないと怖いですね」と回答。精神状態も理想的なところにたどり着いているようだ。

 4年前の代表決定戦も稚内だった。

いわば、因縁の地での再挑戦だ。

 前日会見で吉村は、「同じ地、同じ舞台に戻って来られて、チームとして本当に誇らしく思う」と感慨深げに語った。

 近江谷も北海道ツアー中に「あっという間の4年だった」と振り返り、「これまで、チーム一丸で積み上げてきたものが確かなものだと思う。4年前よりパフォーマンスでも戦術でも格段に成長しています」と、意気込みを語った。

 フォルティウスのメンタル・チームビルディングコーチが、チームに伝える言葉のひとつに「前後裁断」がある。今は、4年前の悔しさも、半年後の五輪も忘れて、目の前のゲームにフォーカスする。一意専心、一戦必勝――そんなモードに入ったフォルティウスは間違いなく強い。

 2018年の平昌五輪以降、カーリング界の主役はロコ・ソラーレだった。はたして、その時代は移り変わるのか。もしそうなるとしたら、新たな時代を築くのは、若い才能か、辛抱強く咲き続けていた月見草か。その答えは、週末に出る。

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