ブンデスリーガ2025-26 注目日本人選手 前編

 ブンデスリーガは今週末第3節が行なわれる。今シーズンは例年以上に日本人選手たちが存在感を出している。

活躍が期待される各選手たちの様子を、現地ドイツで取材を続けるライターがレポートする。

堂安律、佐野海舟...ブンデスリーガ日本人選手の新シーズン予...の画像はこちら >>

【いきなりの活躍で信頼を掴み取る】

堂安律(フライブルク)

 これ以上ない最高のスタートを切ったと言えるだろう。

 8月にフライブルクからフランクフルトへと移籍を果たした堂安は、ブンデスリーガ開幕の1週間前に行なわれたDFBポカール1回戦でさっそく2ゴールを決めると、開幕戦では攻守に存在感を示し、第2節のホッフェンハイム戦では見事なミドルシュートを含む、2ゴール、1アシストのハイパフォーマンスで勝利に貢献。ブンデスリーガ公式サイトで「サポーターの記憶に残る卓越したパフォーマンスを披露した」と絶賛されるなど、マン・オブ・ザ・マッチに輝いて多くの称賛の言葉が届いている。

 いきなりここまでの活躍を見せるとは想像していなかった。すでに慣れ親しんだブンデスリーガの舞台というのも影響しているだろうが、加入して間もなくのタイミングでスタメンに抜擢されたにもかかわらず、新たなチームの戦術に素早くフィット。個でクオリティーを発揮するのはもちろんのこと、コンビネーションプレーでも違いを作っており、ピッチ上で確かな存在感を放っている。

 特に第2節のパフォーマンスは、今後に向けても大きな意味を持つだろう。実際、試合としては難しい内容だった。試合後にディノ・トップメラー監督が認めたように、ホッフェンハイムがいい入りを見せ、攻守において相手を下回る時間も長かった。そのなかで、堂安が"個"で違いを発揮し、チャンスとも言えない状況からゴールを叩き込んで形勢が逆転。その後も堂安がピッチ上で輝きを放ったことで、フランクフルトを勝利に導いたのである。

 この活躍により監督やスタッフ、チームメイト、サポーターからの信頼を掴み取ったことは間違いない。

ホッフェンハイム戦後、現地『DAZN』のインタビューに答えた堂安は、サポーターについてこう表現している。

「試合前からチームメイトが『このスタジアムにはたくさんのアイントラハトサポーターが来るから、すごいことになるよ』と教えてくれていた。知ってはいましたが、期待以上でした。選手としてファンにいい気持ちを与えられて、いい答えを示すことができたと思います。とてもいいスタートを切れました」

 堂安に対する信頼がさらに高まれば、より結果に直結するようなプレーが増えてくるはずだ。9月中旬からはチャンピオンズリーグが開幕するが、欧州最高峰の舞台で堂安はどんなパフォーマンスを見せることになるか。今後の活躍を大いに期待したい。

【課題に向き合う1年に】

佐野海舟(マインツ)

 今季は試練が待ち受けているかもしれない。そんなことを感じさせる開幕となった。

 昨季のマインツで一躍、チームの中心となった佐野は、今季も開幕戦からチームに欠かせない選手のひとりとしてスタメン出場。突破を決めたUEFAカンファレンスリーグ予選でも先発出場を果たすなど、チームからの信頼を感じさせる起用が続いている。

 ただ、チームがパッとしない。カンファレンスリーグ予選こそ勝利を手にしたものの、ここまでブンデスリーガでは1分1敗と苦戦。

開幕戦となった昇格組のケルン戦も、チームとして低調なパフォーマンスに終始し、佐野もピッチ上で苦闘する姿が見られた。

 大きな理由として挙げられるのは、昨季に比べてチームがよりボールを動かしていくことに意識を傾けている点だ。昨季は前線からプレッシングをかけ、佐野を中心にボールを奪取したところから攻撃を繰り出していくパターンが多かったが、今季は後方からのビルドアップにもトライ。チャレンジはプラスに捉えるべきだが、現在はそこでうまく前進できず、中途半端にボールを奪われてはピンチを招くシーンが増えている。

 開幕戦後、チームの苦悩ぶりを佐野は的確に捉えていた。

「昨季から変わっているところはありますけど、もうちょっと狙いを持って全員が共通認識を持ってやらないといけないと思います。去年はもっと割りきっていた部分もあるし、そこでエネルギーを全員がかけられていたと思う。そういうところを含め、割りきって前に行くのか、後ろでつなぐのかというのが今はチグハグになっているのかなと思います」

 最前線のエースだったヨナタン・ブルカルトが移籍してしまったのも苦戦している要因のひとつだ。前線にボールをキープできるターゲットがいなくなってしまったこともあり、攻撃面でどうしても機能不全が起きてしまっている。

 それでも、この状況は佐野にとってチャンスとも言えるだろう。「自分の武器というのは守備ですし、そこは最低限必要かなと思います。そのベースがあっての攻撃というのはより求められている」というように、攻撃にどう関わっていくかは個人としての課題となっている。

チームに新たな変化が起きているなかで、どう攻撃面で違いを作っていくか。簡単ではないが、この1年を乗りきれれば、新たな佐野が見えてくるかもしれない。

【我慢のスタート】

川﨑颯太(マインツ)

 我慢のスタートだ。

 今夏の移籍市場で京都サンガF.C.からマインツに加わった川﨑は、ここまでカンファレンスリーグ予選で途中出場を果たしたのみで、リーグ戦では未だ出場機会を得ることができていない。初の欧州挑戦とあって期待感を持ってシーズンの開幕を迎えたが、悔しいスタートになったと言っていいだろう。

 現地報道やプレシーズンの内容を含め、マインツではシャドーのポジションでの起用を考えられているようだが、まだまだ主力を脅かすようなパフォーマンスは披露することができていない。シャドーにはドイツ代表に初選出されたばかりのパウル・ネベルや韓国代表のイ・ジェソンら有能なアタッカーが多く、定位置を確保するには彼らを超えていかなければならない。

 ここからカンファレンスリーグを含め、スケジュールがタイトになるなかで、少なからずチャンスは訪れるはず。英語力が高く、すでにチーム内でのコミュニケーションなどには問題がないとも言われている。だからこそ、あとはピッチ上でどういったプレーができるかを示していきたいところだ。

町田浩樹(ホッフェンハイム)

 今季、ユニオン=サンジロワーズからホッフェンハイムに加入した町田は、開幕前から評価が高く、カップ戦、開幕戦と先発出場を果たした。だが、開幕戦となったレバークーゼン戦の前半終了間際に左ヒザを負傷。

その後の診断結果の末、左ヒザの前十字靭帯を断裂していることが判明し、長期の離脱が決まってしまった。

 ワールドカップイヤーに初の5大リーグ挑戦を決断した町田にとっては、悔しいケガであるに違いない。それでも、鹿島アントラーズ時代を含め、苦しい状況から這い上がってきた選手でもある。まずはしっかりとケガを治し、シーズン中に復帰できることを願ってやまない。

>>後編「藤田譲瑠チマ、町野修斗、鈴木唯人の今季活躍予想」につづく

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