ブンデスリーガ2025-26 注目日本人選手 後編
多くの日本人選手たちの活躍が期待できる、今季のブンデスリーガ。藤田譲瑠チマ、鈴木唯人など他国リーグから移籍した選手たちなどの開幕時の様子を、現地ドイツで取材を続けるライターが紹介する。
>>前編「堂安律、佐野海舟...存在感を見せるブンデスリーガ日本人の活躍」
【開幕から大きく評価を高める】
藤田譲瑠チマ(ザンクトパウリ)
カップ戦を含め、開幕から3試合が終了した状況で、堂安律とともに大きく評価を高めているのが藤田だ。
シント=トロイデンから今夏に加入した藤田は、昨シーズンを14位で終えたザンクトパウリに加入。攻守に新たな風を吹き込む存在として、大きな期待を持って迎え入れられた。
ここまでは、その期待に応えるパフォーマンスを見せていると言っていいだろう。開幕戦でドルトムントを相手に攻守に光るプレーを見せると、第2節ハンブルクとのダービーマッチでは抜群の存在感を披露。中盤の組み立てに積極的に参加しながら2点目のゴールをアシストすると、守備でも高い貢献度を見せた。このプレー内容には、ドイツ誌『キッカー』もチーム2位タイとなる「2」の高評価をつけて「"ドリームパス"でハンブルクの守備ラインを切り裂いた」と絶賛。第2節のベストイレブンにも選出された。
主将かつボランチの大黒柱だったオーストラリア代表MFジャクソン・アーバインが負傷で出遅れるなか、同ポジションの彼が復帰するまでにどれだけのパフォーマンスを見せられるかがひとつのカギだった。そういう意味では、すでにチームに欠かせない選手へと昇格していきそうな勢いを見せており、チーム、サポーターに対してもいいファーストインパクトを与えたことは間違いない。
ただ、ここからはより厳しいマークを受けることになるだろう。前線と最終ラインをつなぐ架け橋となっているのもあり、対戦相手が藤田を止めるための対策を用意してくる可能性は高い。そのなかで、プレッシャーをうまく掻い潜りながら自身のパフォーマンスを披露していけるかは、今後の指標になりそうだ。
最初の2試合で確かな力を示したことにより、相手から注目される存在になったのは明らか。そんな相手の対策を上回るようなパフォーマンスを見せていければ、チームの主軸として立ち位置を確立していくことができるはずだ。
【先発の座を奪いたい】
町野修斗(ボルシアMG)
昨季、キールで二桁得点を奪い、ドイツ国内を中心に高い評価を受けた町野は、今オフにボルシアMGへの移籍を果たした。
しかし、いいスタートを切れたかというとそうではない。プレシーズンの時に負ったケガが長引き、加入後はなかなか本格的なトレーニングに時間を費やせなかった。新たなクラブでプレシーズンマッチを1試合もこなさないまま開幕を迎えることになった。
開幕直前にケガが癒え、初戦からベンチ入りはできたが、そのハンブルク戦では途中出場で大きく流れを変えることはできず。第2節のシュトゥットガルト戦では急遽スタメン起用されるも、現地メディア『グラットバッハ・ライブ』から「直前に欠場となった(ハリス・)タバコヴィッチに代わって予想外のスターティングラインナップ入り。ただ、前半のグラットバッハの長い攻勢の時間帯にもかかわらず、ペナルティーエリア付近でのスローイン以外はほとんど試合に絡むことができなかった」と厳しい評価を与えられるなど、悔しいスタートとなった。
それでも、町野の本番はこれからと言えるだろう。ケガで出遅れたことで、これまでチームと合わせる時間がそこまで多くなかった。今回の日本代表参加でコンディションも少しずつ上がっている可能性が高く、クラブに戻ってからあらためてチームにフィットしていく必要があるだろう。開幕戦を見てもタバコヴィッチが会心のパフォーマンスを見せているわけではない。
チームの絶対的なエースであるドイツ代表FWティム・クラインディーンストが負傷で離脱している間に、町野自身、どれだけの数字を残せるかで今後の状況は変わってくる。スタメンだろうが途中出場だろうが、まずは得点やアシストといったわかりやすい結果を残すことで周りの信頼を掴みにいく。
【今後のパフォーマンスに注目】
鈴木唯人(フライブルク)
今オフにデンマークのブロンビーからフライブルクへと新天地を求めた鈴木も、難しいスタートを切った一人だ。DFBポカール1回戦で途中出場を果たした鈴木は、その試合で中盤の選手が負傷したこともあり、開幕戦となったアウクスブルク戦でさっそくブンデスリーガデビューを果たした。トップ下のポジションで自身の力を示そうと意気揚々と試合に臨んだ。
だが、前半に迎えた決定的なチャンスを逃してしまうと、後半にPKこそ奪取したが、周りの信頼をつかめていないところもありボールになかなか関われず。大きなインパクトを残すことができなかった。第2節のケルン戦も、決定的な仕事ができないままチームの低調なパフォーマンスも相まって連敗。思い描いていたようなスタートを切ることは叶わなかった。
ただ、こういった状況に対して鈴木は、「負けて悔しいですけど、強くなれる感じがしているので全然落ち込むことはない」と前を向く。難しい状況だからといってネガティブになっている暇はない。
今後、中盤の選手が復帰してくることを考えても、継続してスタメン起用されるかはわからない。それでも、鈴木は次のチャンスを掴むための努力を惜しむつもりはない。9月からヨーロッパリーグの戦いも始まるなか、攻撃面で決定的な仕事をする鈴木の姿を楽しみにしたいところだ。
菅原由勢、長田澪(ブレーメン)
伊藤洋輝(バイエルン)
今後のパフォーマンスが注目されるのは、ブレーメンの菅原由勢と長田澪だ。移籍市場後半に加入した菅原は、第2節のレバークーゼン戦に出場。手薄な右サイドバックで先発の座をさっそく掴んだ。まだまだチームに完全フィットしているわけではないが、最初の試合から先発で起用されたところにクラブからの信頼が透けて見える。攻守に違いを見せることで立ち位置を確立していきたい。
開幕直前に守護神が移籍したことで開幕戦から第1GKに昇格した長田は、ここまで2試合で7失点と悔しいスタートに。それでも、アカデミー育ちということもありチームからの信頼は厚いはずだ。クラブは夏の移籍市場終盤に新たなGKを獲得したが、ポジション争いをしっかり制して守護神の座を掴みたい。
また、ケガからの復活を目指すバイエルンの伊藤洋輝は、ついにトレーニングに復帰した模様。ケガの再発が怖いため焦りは禁物だが、しっかりと回復することでピッチに戻ってきてもらいたいところだ。