2025-26シーズンのチャンピオンズリーグ(CL)。ハンガリーのブタペストで行なわれる決勝戦は5月31日で、2026年ワールドカップ北中米大会はその12日後(6月11日)に開幕する。
ところが、所属クラブがCLに出場する選手、つまり出場の可能性を秘めた日本人選手は今季、以下の9人のみだ。
南野拓実(モナコ)、守田英正(スポルティング)、遠藤航(リバプール)、伊藤洋輝(バイエルン)、高井幸大(トッテナム)、橋岡大樹(スラビアプラハ)、板倉滉(アヤックス)、堂安律(フランクフルト)、鈴木淳之介(コペンハーゲン)。
昨季の12人から3人、数を減らしている。右肩上がりの状況とは言いにくい。しかもこのなかには、ケガで開幕戦に間に合いそうもない選手も含まれる。チーム内の序列が不確かな選手もいる。大きな活躍が期待できそうな勢いのある選手は、現段階ではけっして多くない。
そのなかで、今季、いい滑り出しを切ったのは板倉と堂安だ。数字に残るアピール度の高い活躍が期待できる選手となると、アタッカーの堂安に絞られる。日本代表の頼みの綱といっても言い過ぎではない。
昨季、オリバー・グラスナー監督(現クリスタルパレス監督)の後任としてその座に就いたディノ・トップメラーの手腕が光る。2001-02シーズンにレバークーゼンの監督としてチームをCL決勝に導いたクラウス・トップメラーの息子である。
父親は攻撃的サッカーの信奉者として知られていた。ハムデンパークで行なわれた2001-02シーズンのCL決勝でも、強者レアル・マドリード相手に最後まで攻め続け、試合を大いに盛り上げた。ただし、その息子が披露した過去2シーズンのサッカーは、父親似とは言い難かった。5バックで後ろを固めるサッカーで6位、3位とブンデスリーガ内での地位を上げてきた。
【ホッフェンハイム戦で2ゴール】
堂安のフランクフルト入りが報じられたとき、ウイングではなくウイングバック(WB)としてプレーさせられるのかと思った。左利きの右WBといえば、堂安の日本代表におけるポジションだ。左利きの右ウイングは世界的に普通に存在するが、左利きの右WBはそうではない。大外で構えるにもかかわらず利き足が内側に当たる左足では"膨らみ感"を演出しにくいからである。
フランクフルトは昨季、堂安の前所属チームであるフライブルクと最終戦を戦っている。フライブルクは敗れたが、堂安は気を吐いた。そこでトップメラー監督のお眼鏡に叶ったのだろう。堂安は晴れてチャンピオンズリーガーとなった。
気掛かりだったポジションの問題も、トップメラー監督が昨季までの5バックから4-2-3-1に変更したことで解消した。今季も堂安はWBではなく右ウイングとしてプレーすることになった。ブンデスリーガ第2節、ホッフェンハイム戦では2ゴールをマーク。出色の出来を披露した。
CLの開幕は代表ウィークが明けた9月19日。フランクフルトの初戦はホームでのガラタサライ戦だ。ガラタサライはトルコリーグで開幕4連勝。首位に立つ。
2節/アトレティコ・マドリード(A)
3節/リバプール(H)
4節/ナポリ(A)
5節/アタランタ(H)
6節/バルセロナ(A)
7節/カラバフ(A)
8節/トッテナム(H)
昨季を例に取れば、決勝トーナメント1回戦にストレートイン(8位以内)するためには勝ち点16が必要だった。プレーオフ進出(24位以内)となると、勝ち点は11~12必要になる。3勝2分3敗という五分五分の成績でも届かないチームがあった。
バルサ、リバプール、アトレティコ、トッテナムは明らかに格上だ。ナポリ、アタランタも対等な関係にあるとは言い難い。フランクフルトがクジ運に恵まれなかったことは確かである。
【対峙する左SBとの1対1にどれだけ勝てるか】
しかし、堂安にとっては強豪との対戦は貴重な経験になる。キャリアハイのシーズンを迎えることが鮮明になっている。W杯直前のシーズンに、である。風は堂安に吹いていると言うべきだろう。
ビッグクラブとの一戦には世界が注目する。そこで目立った活躍をすれば、堂安という名前は世界に知れ渡る。何より対戦チームから注目される。引き抜かれる可能性もなきにしもあらず、なのだ。過去のCLにそうした例はたくさんある。
そもそも今回のフライブルクからフランクフルトへの移籍が、直接対決で活躍したことによる産物だった。CLにも同じことが言える。わかりやすい例がザルツブルク時代の南野だ。CLのリバプール戦で活躍したことがリバプール入りのきっかけになった。堂安も南野にあやかりたい。
堂安と対峙する各クラブの左SB(左WB)は以下のとおりだ。手強い相手が並ぶ。
エレン・エルマリ(ガラタサライ・トルコ代表)、ダビド・ハンツコ(アトレティコ/スロバキア代表)、ミロシュ・ケルケズ(リバプール/ハンガリー代表)、マティアス・オリベイラ(ナポリ/ウルグアイ代表)、ニコラ・ゼレウスキー(アタランタ/ポーランド代表)、アレハンドロ・バルデ(バルサ/スペイン代表)、ジェド・スペンス(トッテナム/元U-21イングランド代表)......。
それぞれの1対1にどれほど勝てるか。堂安の武器は切れ込んでの左足のシュートだ。しかし毎度同じでは読まれる。縦と内とのバランスを取る必要がある。比率的に少ない縦突破をどれほど敢行できるか。
蛇足になるが、日本代表での堂安は右WBだ。ウイングを張るフランクフルトに比べると平均ポジションで20メートル近く低い。左利きの右WBに内へ切れ込む動きが多ければ、真ん中低めの位置でボールを奪われる可能性が高まる。堂安を使うならウイングで。より高い位置で決定的な仕事に絡ませてほしいものだ。