アダム・ウォーカー インタビュー 前編
【独立リーグは「すばらしい選手が揃っている」】
2022年に来日し、巨人とソフトバンクで合計3シーズンを過ごしたアダム・ウォーカー(33歳)は、今年5月にルートインBCリーグの神奈川フューチャードリームスに入団し、変わらぬ存在感を示している。
「巨人に入団する前は、アメリカの独立リーグでプレーしたこともありますが、そこには野球が好きで、高い目標を持ち、そこに向かって努力を続ける選手たちが集まっていました。きっと日本も同じでしょうし、プレーをするからには勝ちたいと思っています」
4月30日の入団記者会見で、BC神奈川を選んだ理由についてそう語ったウォーカーは、5月5日に初出場を果たすと、50 試合に出場して打率.293、18本塁打、58打点。
9月13日から始まるBCリーグチャンピオンシップや、独立リーグ日本一を決めるグランドチャンピオンシップが控えるなか、インタビューに応じたウォーカーは強い決意を口にした。
「僕も『安定したプレーで貢献できれば......』という気持ちでこれまで頑張ってきましたが、おかげさまでチームも好調で、とにかくみんなで楽しみながらプレーができているように思います。それでも現状に満足することなく、これからもチームの勝利のために努力を惜しまずに過ごしていきたい」
日本2番目の独立リーグとして、2006年に誕生したルートインBCリーグ(2007年にリーグが開幕した当初は「北信越ベースボール・チャレンジ・リーグ」と名乗っていた)は、20年に迫る歴史のなかで、NPBを目指す若者たちの"受け皿"として定着。昨季は同リーグだけで5名の選手が、ドラフト指名を受けてNPBの扉を開いた。
過去にはマイナーやアメリカの独立リーグでキャリアを過ごしていたウォーカーは、かつての自身のように夢を追いかける若手選手に対し、熱いエールを送った。
「アメリカも日本も独立リーグのレベルが高く、日々ひたむきな努力を怠らない。そんなすばらしい選手が揃っていると思います。日本のドラフトがどのような仕組みで行なわれるのかはあまりわかりませんが、ともに過ごすチームメイトたちの前向きな姿を見ていると、自ずと『一緒にプレーできてよかった』という気持ちが込み上げてくるんですよ」
BC神奈川には、最速151キロ左腕の冨重英二郎ら、ドラフト候補と目される選手も在籍している。運命の瞬間が迫る選手たちに対し、ウォーカーが日頃から伝えているのは、「とにかく自分を信じる気持ちを持つこと」だ。
「野球は本当にアップダウンの激しい競技ですが、たとえ悪いことがあっても、いつか必ず挽回できる。
【NPB復帰も視野に】
2022年に巨人に入団したウォーカーは、持ち前の長打力を武器に左翼のレギュラーポジションを手にすると、同年に124試合に出場し、打率.271、23本塁打、52打点。明るいキャラクターやドレッドヘアー、バンダナを頭に巻いて試合に臨む姿で人気を博し、この年のオールスターゲームにも出場を果たした。
その後、2023年のオフには高橋礼、泉圭輔とのトレードでソフトバンクに移籍。チームはリーグ優勝を達成したが、わずか20試合の出場にとどまると、2024年のオフにはチームを退団することになった。
「おかげさまで、10年以上もプロの世界でプレーさせてもらっていて、巨人に在籍していた頃にはオールスターにも選んでもらい、ソフトバンクでプレーした昨年は優勝を経験することができました。でも、僕のキャリアはいつも順風満帆だったわけではなくて、過去には1年間で3度のリリースをされたこともありましたし、今に至るまでに、いいことも悪いこともすべてを乗り越えてきたんです」
来日前にメジャーでプレーした経験はない。マイナーや独立リーグで積み重ねてきた自身のキャリアを振り返るウォーカーは、今季プレーするBC神奈川について、こう続けた。
「チームは本当に雰囲気がよく、いつも楽しく過ごしていますし、僕にとっては自然な笑顔でいられる場所でもあります。チームに対する愛情も深いので、勝利をひとつずつ積み重ね、『シーズンの最後に笑って終われたら』という思いです。優勝した時の達成感はこれ以上ないものですから、(グランドチャンピオンシップまで勝って)最高の瞬間をみんなで迎えられたらいいですね」
BC神奈川への入団会見では、NPBへの復帰に向けた意欲とともに、「大学でスポーツビジネスを勉強しましたし、選手としての経験を生かして、どこかの球団のスタッフやコーチとして、これまでに培った経験を将来のプレーヤーに届けてみたい思いもあります」と、引退後のキャリアについて語るひと幕もあったが......。
「来季以降の予定は今のところ何も決まっていませんが、今は純粋に1日でも長く野球を続けたい。あまり将来のことは考えずに、目先の試合に全力で向かい、それを明日につなげていく。失敗からの学びを成功につなげながら、少しずつ上を目指していけたらいいですし、その先にNPB復帰などの未来があれば、それはとてもうれしく思います」
最終戦まで3チームに優勝の可能性が残る熾烈な優勝争いを制し、9月7日にBC-West優勝を決めたBC神奈川は、13日から行われる群馬ダイヤモンドペガサスとのBCリーグチャンピオンシップに挑む。
「優勝を掴み取るわずかなチャンスが残された試合に、チーム全員で前向きな気持ちで臨み、最高の勝利を挙げられた。勝負の行方は野球の神様にしかわからないけれど、いつも変わらずに応援してくれているファンのためにも、日本一になって、気分よくシーズンを締めくくりたいですね」
BC神奈川を頂上まで導くため、ウォーカーは最後まで力を出し切る。
(後編:アダム・ウォーカーはBC神奈川の主砲として、巨人、ソフトバンク時代も経験しなかった日本一を目指す>>)
(通訳:岡﨑菜穂)
【プロフィール】
アダム・ウォーカー
1991年10月18日生まれ、アメリカ合衆国・ウィスコンシン州ミルウォーキー出身。外野手。2012年にMLBドラフト3巡目(全体97位)でミネソタ・ツインズに指名されプロ入り。メジャー昇格は叶わず、数チームのマイナーを渡り歩いたのちに独立リーグへ。2020年、2021年と2年連続で本塁打王とシーズンMVPを獲得する。2022年に巨人に入団。2023年のオフにトレードでソフトバンクに移籍した。