アダム・ウォーカー インタビュー 後編

(前編:巨人でもプレーしたアダム・ウォーカーがBCリーグで二冠王に「1日でも長く野球を続けたい」>>)

【リーグ優勝をかけた試合でも活躍】

 最終戦まで3チームに優勝の可能性が残っていたルートインBCリーグ・BC-Westは、9月7日の最終戦に勝利した神奈川フューチャードリームスの優勝で幕を下ろした。

 終盤戦の失速もあり、一時はBC信濃グランセローズに首位を明け渡すなど苦しいチームを支えたのは、2022年からの3年間、巨人とソフトバンクでプレーしたアダム・ウォーカーだ。開幕後の5月にBC神奈川に加入したウォーカーは、本塁打王(18本塁打)と打点王(58打点)の二冠を手にした。

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 優勝を懸けた7日の埼玉武蔵ヒートベアーズ戦も、4番・レフトで出場。「その前日はチャンスで凡退してしまったので、なんとしてもヒットを打ちたかった」と、初回に先制タイムリーを放ってチームに勢いをもたらすと、チームはその後も効果的に得点を重ね、15対3の大量得点で勝利。優勝マジック1が点灯していた信濃が敗れ、再び1位に返り咲いたBC神奈川が優勝を掴み取った。

 チームは、13日から開催されるリーグチャンピオンシップの出場権を獲得。ルートインBCリーグ王座を決める戦いに勝利すれば、独立日本一を決めるグランドチャンピオンシップも控えている。

 ウォーカーは昨年に在籍したソフトバンクでのリーグ優勝を振り返りながら意気込みを語った。

「チームメイトと一緒にビールかけをして、頑張りを讃え合ったかけがえのない時間は、僕にとって本当に特別で、今でも大切な思い出として刻まれています。今年もシーズンを終えた時に、その瞬間が迎えられたら本当に最高ですよね」

 2022年、巨人に加入。「東京ドームで見た満員の観衆や、応援してくださるみなさんの熱い思いが今でも忘れられません」と話すウォーカーは、124試合に出場して打率.272、23本塁打と活躍し、オールスターゲームにも出場した。

 一軍での出場機会を減らした2023年のオフには、打撃面での活躍を期待されてソフトバンクにトレードで移籍するも、レギュラー獲得には至らず。チームはリーグ優勝を成し遂げるなかで出場機会は限られ、2024年はわずか20試合の出場。打率.169、1本塁打の成績に終わり、この年限りでの退団を余儀なくされた。

 その後は、故郷のアメリカ・ミルウォーキーなどでのトレーニング期間を経て、5月にBC神奈川への入団を発表。「プレーヤーとしてさらに成長できると思い、このチームを選びました。若いプレーヤーが多いチームですが、僕は選手として長い時間を過ごしてきましたから、きっとさまざまなアドバイスができると思います」と意欲を語ったウォーカーは、主軸としてはもちろん、ムードメーカーとしてもチームに貢献した。

【NPBより環境は過酷だが、ポジティブに向き合う】

 今季は東西2リーグ、8チーム体制によるリーグ戦が行なわれたルートインBCリーグ。全52試合制のリーグ戦を戦う選手の多くは、NPBでのプレーを夢見る若手プレーヤーだ。10月に34歳を迎えるウォーカーとは、年齢がひと回り以上離れていることも珍しくない。

「若い選手と一緒に過ごしていると、僕も『まだまだ十分にやれる!』という気持ちが湧き上がってきますし、彼らの野球と向き合う姿勢からたくさんのことを学ばせてもらっています」

 充実した日々をそのように語るウォーカーは、猛暑のなかでの連戦が続く独立リーグの環境に対しても、いたって前向きだ。

「確かに過密な試合スケジュールが組まれていますけど、それも野球の一部ですし、多くの試合に出れば、そのぶん自分が活躍するチャンスも増える。何よりも、毎日仲間と一緒に球場で過ごす時間をいつも楽しみにしていますし、自分自身の課題に向き合い、ファンに勝利を届けるためにプレーすることが、僕の充実した人生につながっているように思います」

 昨年末には、日本人の女性と結婚。SNSには、プライベートや練習の合間に出向いたスポットの写真もアップロードされており、慣れ親しんだ異国での生活を楽しんでいる様子も伺える。

「去年までは、遠征に行った時の"お決まりコース"があって、空いた時間にいろいろなところに出かけていました。今季は、試合終了後すぐに移動しなければならないケースも多く、観光に費やす時間はあまり持てていませんが、それでも山梨に向かうバスの窓から見た大きくて美しい富士山の姿は忘れられなくて、遠征の時は毎回楽しみにしていました」

【自身初の日本一へ】

 BC神奈川は、ドラフト候補で最優秀防御率のタイトルを手にした冨重英二郎らの活躍もあり、順調に勝利を積み重ねていった。

「試合後にみんなでミーティングをして、次の試合に向けた反省点を話し合いながら、気持ちを切り替えて次の試合に臨めていたように思う」

 チームは中盤までBC-Westの首位を走り、前年王座の実力を示したが......。

終盤戦にかけてチームは失速。勝てばリーグ優勝が決まる9月6日の本拠地最終戦では、延長戦の末にBC埼玉武蔵に敗れて2位に順位を落とし、同カードで行なわれる最終戦に、わずかな優勝の可能性を懸けて臨んだ。

「前日はよくない試合をしてしまいましたが、試合後はいつもと同じように家に帰り、おいしい夕食を食べた後にゆっくり休んで、再び球場にやってきました。僕らにとっていい1日になるように全力で臨みました」

 そんな最終戦は先述のとおり、ウォーカーの活躍もあって15対3の快勝。BC信濃が敗れて逆転で1位となり、リーグチャンピオンシップへの出場を決めた。

「昨年に続いて、私が加入した今年もリーグチャンピオンシップ出場を決められたことが本当にうれしいです」

 昨年在籍したソフトバンクはパ・リーグで優勝。巨人時代の2023年も二軍優勝を経験しているが、日本一の経験はまだない。

「ファンのみなさんに『熱いプレーを見ていただきたい』との思いで努力を惜しまずにプレーした結果、最高の勝利を届けることができた。みなさんには本当に感謝していますし、僕も期待に応えられるように頑張りますから、引き続き頼もしい声援をいただけたらうれしいです」

 13日から開催されるリーグチャンピオンシップから、ポストシーズンの戦いに突入するBC神奈川。ウォーカーのあくなき勝利への思いは、果たして報われるだろうか。熱い戦いが始まろうとしている。

(通訳:岡﨑菜穂)

【プロフィール】

アダム・ウォーカー

1991年10月18日生まれ、アメリカ合衆国・ウィスコンシン州ミルウォーキー出身。

外野手。2012年にMLBドラフト3巡目(全体97位)でミネソタ・ツインズに指名されプロ入り。メジャー昇格は叶わず、数チームのマイナーを渡り歩いたのちに独立リーグへ。2020年、2021年と2年連続で本塁打王とシーズンMVPを獲得する。2022年に巨人に入団。2023年のオフにトレードでソフトバンクに移籍した。2025年4月、独立リーグ・ルートインBCリーグの神奈川フューチャードリームスに入団した。

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