サッカー日本代表が来年のワールドカップ開催地のアメリカで2試合を行なった。W杯への収穫はあったか。
【動画】林陵平のフットボールゼミ 日本代表メキシコ&アメリカ戦総括↓↓↓
【数少ないチャンスを決めるのはW杯でも大事】
メキシコ戦は守備の部分ですごくよかったと思います。メキシコが4-3-3で日本が3-4-2-1。システムでは構造のズレが最初からあったなかで、立ち上がりから相手のセンターバック(CB)には日本のシャドーが、アンカーに対しては1トップが、サイドバック(SB)に対してはウイングバックが出ていく形がすごくしっかりできていました。
そこからショートカウンターも繰り出していましたし、守備の部分はすごく評価できると思います。それに相手の長いボールが入っても、3CBがしっかり対応。特に渡辺剛がすばらしかったですね。
あとはやはり攻撃ですよね。点が取れない部分。ショートカウンターでチャンスは作り出していたので、決めきらないといけなかった。後半には南野拓実の決定機もありました。ああいう数少ないチャンスを決めきれるかどうか。そこが勝利につながってきます。
ワールドカップ本大会のことを考えると、もう間違いなくそんなに多くのチャンスを作れるわけではありません。だから、数少ないチャンスを決めきるところは、すごく大事になってきますよね。
また交代選手があまり機能してなかったのは、少し気になった部分かなと思います。 ウイングバックに前田大然と伊東純也を入れた。スタメンは堂安律と三笘薫で、やはりボール保持の局面ではウイングバックのところで時間ができました。でも特に前田に関しては、ビルドアップでは自分で受けて時間を作るタイプではない。そこで少し難しさを感じたところがありました。
あとは3-1-4-2の形も試したと思います。あれは相手の2CBのところから長いボールが結構入っていたので、シャドーの位置から行って少し時間がかかるのを2トップにして近くで見るようにした。
ただ、そうなると相手の4-3-3のアンカーを誰が見るのか、ハッキリしなくなった。前半は1トップの上田綺世が見ていたところですね。だから、そこは交代した時に誰にどんなタスクを与えるかというのは、もう少しハッキリさせないといけないと思いました。
それと、相手のSBにボールが出た時に、前田大然と伊東純也がSBまで行っていいのか、もしくはインサイドハーフの鈴木唯人と佐野海舟がSBのところまで出ていくのかみたいなところも少しはっきりしていなかったので、そこは気になった部分です。
選手個人でよかったと思うのは、先に挙げた渡辺。これは発見でしたね。所属のフェイエノールトで活躍しているなかで、あそこまで堂々とプレーするとは。後ろの選手はかなりケガ人が出ているので、ああいうパフォーマンスを見せてくれると、すごくありがたいなと思います。
上田綺世のキープ力や強さもかなり目立ちましたね。彼も所属のフェイエノールトでゴールを決めていますし、体の大きさとかを見ても厚みがあって、すごく雰囲気が出てましたね。
【面子の差が出たアメリカ戦】
続くアメリカ戦に関して。僕自身もメキシコ戦の次の日に移動しましたが、5時間くらいかかりました。時差も+3時間あったので、9時くらいの飛行機に乗って5時間乗って14時になるところが、着いたら17時になっている。
つまり選手にとっては、中2日と言っても、この移動でもう一日潰れるようなものなので、やっぱり来年のワールドカップは結構大変だなと。
試合に関しては完全にターンオーバーをしたので、メキシコ戦とは違うものになりました。アメリカも日本も3-4-2-1でミラーゲームになりましたが、かなり厳しい結果と内容だったかなと思います。
まずターンオーバーに関してですが、ワールドカップ本大会に向けて日本代表の選手たちはもうメンバー入りのサバイバルレースになっているわけです。もちろん、競争をすることはすごく重要で、出場した選手たちがどれだけできるかという部分を見たかった面があるでしょう。
ただ、アメリカはMFクリスティン・プリシッチやタイラー・アダムス、後ろではDFティム・リームなど、軸になる選手がしっかり出場していた。そうなると日本としてはやはり面子の差はあったかなと感じました。ターンオーバーにもメリット・デメリットがあると思いますが、デメリットが出てしまった。なかなか収穫がないゲームになってしまいましたね。
このアメリカ戦では選手個人としては、鈴木唯人が前半の途中からボールを触り出して、「もっと見たいな」って思わせる選手でした。望月ヘンリー海輝は、彼の高さは存分に発揮できましたね。ポテンシャルがある選手なので、すごく楽しみだなと思いました。
ただ、現地で見ているとやはりアメリカ代表一人ひとりの能力も高かったですし、日本は即席みたいなチームだったので、簡単ではなかった。少し苦しいゲームにはなりましたよね。
【4バックに収穫がなかった】
それとアメリカ戦では後半4枚(4バック)にしました。
でも、これが全く収穫がなかった。ただ4枚にした、という感じでしたし、後ろの4人の人選も適材適所ではなかった。左SBに入った瀬古歩夢はもともとセンターバックですし、CBの荒木隼人も普段やっている3バックの真ん中と4バックの真ん中の守り方は全く違うものです。右CBは関根大輝でしたが、ここももともとSBの選手。右SBの望月も、基本的には所属のFC町田ゼルビアで3-4-2-1のウイングバックをやっている。
あとは4枚をやったけど、では4枚のトレーニングをしっかりしていたのかと言ったら、僕ははてなマークがつくと思うんです。ここのところずっと3枚でプレーしてきて、その前には4枚でやってたじゃないかと言う人もいると思うんですけど、3バックと4バックって全然違うし、4バックは本当にごまかしが利かないんですよ。
それなので、4バックの仕組みが見えなかったところは......。これはもう終わったことなので、次にどうつなげていくかが大事ですね。でも、本当にもったいないゲームだったなと思います。