日本は国際舞台でビッグチームの仲間入りを果たし、大きな成功にあと一歩と迫っていたチームである。ここ数シーズン、トップレベルの国際大会(オリンピック、ワールドカップ、ネーションズリーグ)でイタリア、ポーランド、フランスといった強豪と互角に渡り合ってきたチームだ。

その日本に何が起きたのか?

 パリ五輪では準々決勝でイタリア相手に2-0でリードしたものの追いつかれ、最終セットで敗れた。2024年にはネーションズリーグでは決勝まで勝ち残った(フランスにセットカウント3-1で敗れた)。これらの試合は日本が世界の主役になりつつある予兆をはっきりと感じさせていた。

 しかし2025年夏、決定的な躍進を遂げるはずだった舞台で日本は後退した。ネーションズリーグでは準々決勝で敗退(ポーランドに0-3)、フィリピンのマニラで開催された世界選手権(世界バレー)では予選リーグ敗退という痛手を負った。

 2024年、日本バレーボール協会はさらなる飛躍を目指し、監督の交代を決断した。フィリップ・ブラン(2017年から2021年までアシスタント、2022年から2024年までヘッドコーチ)に別れを告げ、2021年にフランス代表を率いて東京五輪を制したロラン・ティリをベンチに迎えた。しかし、経験豊富なこの指揮官は、残念ながら期待されたようなインパクトを与えることはできなかった。

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 日本は石川祐希と髙橋藍のアタッカーコンビという盤石なベースの上に成り立ついいチームだった。石川はイタリアのセリエAやヨーロッパで最も重要な大会でトップスターであり続けている。髙橋はイタリアでモンツァのユニホームを着てプレーした後、日本に戻り、その実力を存分に発揮している。しかし、彼らの力をもってしても十分でなかった。
フィリピンでトルコ戦、カナダ戦と、2度の痛烈な敗北を喫し、世界トップへの道は危うくなった。

「この結果で、自分たちはまだまだ強豪国のレベルには達していないことを思い知らされた」と石川は説明し、「今シーズンは何もできないまま終わってしまったので、個人個人が成長していかなければならない。失敗から学んで前に進まないといけない」と続けた。

【どういう体制で再出発するか】

 一方、髙橋は同じような思いを「もっとできなかったかという悔いが残る。このふたつの敗戦を忘れることなく、この経験を糧にして強くなっていきたい」と、表現した。

 左利きのオポジット、西田有志の不在が重くのしかかったのは確かだろう。2024年シーズン終了後、大阪ブルテオンの西田は、体調を考慮して1年間代表から遠ざかることを決断した。その代役として期待されたのは宮浦健人だったが、十分ではなかった。

 その宮浦は「これが今の僕らのレベルだと受け入れるしかない。すぐに次の大会があるわけではないが、次に向けて準備しなければならない」と語っている。

 とにかく日本は自信を持って未来を見据え、前進していかなければならない。タレントはいるのだから。

また、SVリーグのルールの変化は大いなる助けとなるはずだ。2026~27シーズンから1チームあたりの外国人選手枠を3人に増やすことは、リーグ自体のレベルを上げ、選手は年間を通して世界のトップレベルと対峙することになる。日本人選手の成長をあと押しすることになるだろう。

 この点で、日本が見習うべきはポーランドとイタリアだ。

 さらにイタリア代表に関して言えば、東京五輪での失敗(準々決勝でアルゼンチンに敗退)のあと、新しい監督と若手中心のチームで再出発した。2021年欧州選手権金メダル、2022年世界選手権金メダル、2023年欧州選手権銀メダル、2024年パリ五輪4位。そして2025年世界選手権では優勝、連覇を果たした。4年間、主要大会すべてで上位に食い込んでいることが重要だ。

 今、日本は同じことをすべきだろう。今後のシーズンで活躍する最も有望な若手を取り込むこと、そして監督――。そう、日本がまず考えなくてはいけないのは、どういう体制で再出発を目指すのが適切か、だ。確かにロラン・ティリは優秀な監督であり、日本は2028年のロサンゼルス五輪まで契約を結んでいる。

しかしそれだけの理由で、今後の日本を任せてもいいのか。場合によってはもう一度、考える必要があるのではないか。

 確かに、今回のこの結果は誰も予想していなかった。「この悔しさをバネに、今後待ち受けるより重要な戦いへ跳躍しないといけない」と、石川は強調する。

まずは2026年に予定されているアジア選手権だ。そのためにはまさに今、何がうまくいかなかったのかを真剣に検証しなければならない。2025年の出来事が"成長段階にありがちな単なるアクシデント"とみなされるためにも。

 特にこれからの2年の試合は、ロサンゼルス五輪への出場権をかけた戦いとなる。まだ正式発表はないが、五輪の出場権は次のように配分される見込みだという。2026年の各大陸選手権の優勝チーム、2027年世界選手権(開催地はポーランド)の上位3チーム、最後に世界ランキング上位の残り3枠。つまり五輪に出場するためには、日本は常にバレーボール界の最高峰にいなければならない。世界の強豪への仲間入りを逃がすわけにはいかない。

 だからこそ、この失望を未来への野心に変えなくてはならないのだ。

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