ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪最終予選(カナダ・ケロウナ)に臨む日本代表を選出する『2025ミックスダブルスカーリング日本代表決定戦』は、小穴桃里(小穴鋳造所)と青木豪(新東工業)ペアの小穴・青木が制し、日本代表ペアに内定した。
小穴・青木に、上野美優と山口剛史ペアのSC軽井沢クラブ、松村千秋(中部電力)と谷田康真(北海道クボタ)ペアの松村・谷田と、3チームによって行なわれた代表決定戦。両者の戦いは、ショット成功率やチャンスの数はほぼ互角だった。松村の1投目は乱れることは少なく、谷田のショットセレクトは適切でスイープとショットの相性も噛み合っていた。
それでも、勝負を分けた一因には投げ順の妙があった。1エンド5投のミックスダブルスでは1投目と5投目を女子選手、中盤3投を男子選手が担うことが多い。ハウス内の密集を打開したい時やアングルが悪いケースなどでは、ウエイト(投げる石の速さ)を持つ男子選手のほうが有用と考えられているからだ。
しかし小穴・青木は、青木が1投目と5投目を、小穴が中盤3投を担当。セオリーとは逆の役割で戦ってきたことが功を奏した。
大会前、青木は「世界のどこを見ても男性が真ん中(の3投)を担当することが多いなかで、それに張り合えるだけのショット力を持っている」と、小穴について語っていた。その言葉どおり、彼女が投げ負けなければ、青木のフィニッシュでテイクとドローの幅を持たせることができる。相手はそれを頭に入れてプレーしないといけないプレッシャーが相当あったはずだ。
また、小穴は大会を通してリスクを恐れなかった。ハウス内の石に積極的に干渉していき、常に戦況を動かしていった。もちろん、それがピンチを生むこともあったが、ラストロックを青木が持っていることで広く攻め手が持てた印象だ。
さらに、決定戦の試合では「秘策があった」と小穴が明かす。最後の2試合、曲がりの弱くなってきた自身が投げるストーンを3つ、すべて変更したのだ。
「ドロー勝負で(相手の石よりハウスの)内側を取らなきゃいけないってなったら、やっぱりそこが(最後に)効いてくる」と小穴。ある意味ではギャンブルだったが、「曲がる石を出そう(使おう)。カーリングですからね、カールするにこしたことはない」と、小穴は笑顔で勝因を語った。
リスクの先にあるメリットを選択し、それに対して結果が見事についてきた。
2018年から五輪正式種目に採用されたミックスダブルスにおいて、日本はまだ未出場だ。決定戦を戦った2チームはそれを果たすため、ミックスダブルスに転向、専念し、この4年間を切磋琢磨してきた。
専任ペアとして過ごした時間の意義を問われた谷田は、「本当の意味で評価できるかどうかは、やっぱり小穴・青木がこれでオリンピックにたどり着けるかどうかで、そこでどういう結果を残せるのか」と、激闘を制した相手に彼なりの激励の言葉を送った。
12月に行なわれる五輪最終予選に出場する国と地域は16。イタリア行きのチケットは残り2枚だ。まずは2ブロックに分けられた8カ国で総当たり戦を実施。その後、ブロック1位同士が対戦し、勝者が1枚目の五輪切符を獲得。そして、その敗者とブロック2位同士の対戦による勝者が戦って、勝ったペアが最後の五輪切符を手にする。
倍率は、16分の2。オーストラリア、韓国、中国、ニュージーランド、ドイツ、デンマーク、フィンランドといった中堅国、新鋭国がひしめき、タフな戦いになることは明らかだ。
だが、世界基準の強度かつ、真剣勝負の戦いとなった今回の代表決定戦を経て、「こういうタイトな試合こそが最大の、世界最終予選に向けてのエールだったなというふうには感じています」と小穴。世界のタフな戦いに向けても臆することはない。
小穴・青木はこれから欧州に遠征し、スイスとスウェーデンで3大会に出場予定だ。11月に帰国してメディカルチェックなどを終えてから決戦の地、カナダ・ケロウナに向かう。
ミックスダブルス初の五輪出場。