高木豊が語る2025年のFA セ・リーグ編
昨季は甲斐拓也(ソフトバンク→巨人)や石川柊太(ソフトバンク→ロッテ)らがFA権を行使したが、今季も各球団の主力級の選手がFA権を取得。経験と実績のある実力者の移籍はチームの順位に影響を及ぼすことも多く、その動向から目が離せない。
セ・リーグのFA動向に対する見解について、かつて大洋(現DeNA)の主力選手として活躍し、現在は野球解説者やYouTuberとしても活動する高木豊氏に聞いた。
【近本は阪神に残留しそうだが......】
――まず、セ・リーグで注目している選手は?
高木豊(以下:高木) 近本光司(阪神)です。阪神にぴったりの選手ですけどね。ファンからの人気やチーム内の選手からのリスペクトも含めて、自分の地位を完全に確立していますし、近本がFA権を行使することは考えにくいのですが......少し気になるのは、近本はバッティングを追求していきたいタイプではないか、という点です。
そんな彼のなかで唯一、不満があるとしたら「違う球場ならもっとホームランを打てる」ということなんじゃないかなと。(ホームランが出にくい)甲子園じゃなければもっと打てるんじゃないか、という思いはあると思うんです。例えば、横浜スタジアムであれば毎年コンスタントに2桁打てるんじゃないかと。ホームランの魅力は近本も感じているはずですが、甲子園などで無理に狙うと自分のバッティングが崩れることもよく知っているはずです。
――狭い球場であれば、自分のバッティングを崩さなくても打てる?
高木 そう考えてもおかしくはないですよ。狭い球場が本拠地のチームで自分を試してみたい、という気持ちもどこかにあるんじゃないかと。だからといって、簡単に動くような男ではないと思いますけどね。強いて言えば、ということで話しましたが、やっぱり彼は甲子園が似合ってますよ。
【中日の柳、「Cランク」となった巨人の左腕は?】
――ほかに注目している選手はいますか?
高木 柳裕也(中日)にも注目しています。
それと、他球団から見れば、やはり先発ピッチャーがなかなかそろわないヤクルトあたりは欲しいピッチャーだと思いますよ。狭い神宮球場を本拠地とするヤクルトは、村上宗隆がメジャーへ移籍するとなった際に、援護点がどのくらい減るのかという問題がありますけどね。その点、DeNAは球場が狭くても必ず援護してくれるのでいいかもしれません。柳は横浜高出身なので、多少の縁もありますし。
――援護してもらえるかどうかは、やはりピッチャーにとって大きい?
高木 ピッチャーとしては、援護してもらえそうな球団を選ぶのは自然だと思います。柳は特に、中日で援護がなかったですからね。ただ、柳は仲間を大事にしていて、キャプテンシーがすごくある選手なんです。そういう点からすると動かないのかなとも思うのですが、やっぱり援護点は欲しいですよね。
――同じくFA権を取得した中川皓太投手(巨人)はいかがですか? 金銭補償や人的補償などがない「Cランク」になり、他球団は手を挙げやすそうですが。
高木 中川に対しては少し言葉が厳しくなってしまうのですが、投げ方がきれいすぎるんです。
ただ、左ピッチャーの中継ぎが不足している球団は欲しいかもしれません。広島は左ピッチャーの中継ぎが多くなってきていますが、DeNAやヤクルトなどはいいかもしれません。日本ハムも、今季は左ピッチャーの上原健太が中継ぎとしていい働きぶりを見せていますが、不足していないか、といえばそうではない。ただ、巨人の中川、日本ハムの松本剛でトレードがあるかもしれませんね。
――走塁のスペシャリストである、阪神の植田海選手もFA権を取得しています。植田選手もCランクですね。
高木 今はピッチャーのレベルが上がり、連打が難しくなっています。
(パ・リーグ編:「FA権を行使すると思う」と語るパ・リーグの選手は? 器用なオリックスの右腕も人気が出そう>>)
【プロフィール】
高木豊(たかぎ・ゆたか)
1958年10月22日、山口県生まれ。1980年のドラフト3位で中央大学から横浜大洋ホエールズ(現・ 横浜DeNAベイスターズ)に入団。二塁手のスタメンを勝ち取り、加藤博一、屋鋪要とともに「スーパーカートリオ」として活躍。ベストナイン3回、盗塁王1回など、数々のタイトルを受賞した。通算打率.297、1716安打、321盗塁といった記録を残して1994年に現役を引退。2004年にはアテネ五輪に臨む日本代表の守備・走塁コーチ、DeNAのヘッドコーチを2012年から2年務めるなど指導者としても活躍。そのほか、野球解説やタレントなど幅広く活動し、2018年に開設したYouTubeチャンネルも人気を博している。