森脇良太が選ぶJリーグ最強ベストイレブン

 昨シーズンを最後に現役引退した森脇良太氏に、自身が見てきた、対戦した、一緒にプレーした選手を振り返ってもらい、Jリーグ最強ベストイレブンを選んでもらった。攻撃的なDFとして鳴らした森脇氏は、はたしてどんな11人を選んだか。

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【すべてにおいて完璧なGK】

 基準は自分が現役の時に一緒にプレーした選手、対戦した選手のなかから選びました。現在、海外でプレーしている選手は外し、いま国内でプレーしているJリーガーも含めて選出させてもらいました。めちゃめちゃ難しかったです。

 フォーメーションは3-4-3です。3バックは自分がプレーしていたのでイメージが湧きやすいですし、攻撃的なサッカーを展開するならこのシステムだなと。自分が監督になった時に、このメンバーを率いることができたらめちゃめちゃ楽しいだろうなという思いで選びました。

 ポイントは攻撃的だということです。自分が選手の時も攻撃が大好きでしたし、これから監督を目指していくなかでも攻撃的なサッカーを展開したいと思っています。僕のモットーはGKから攻撃がスタートする、DF陣が攻撃の司令塔になれるというもの。本当は森脇良太も入れようと思いましたが、記事を見たみなさんから「お前は入らないだろ」と苦情が来ると思って、ビビって自分は除けました(笑)。

GK 西川周作浦和レッズ

 迷いはなく、GKはすんなり決まりました。すべてにおいて完璧です。GKとしてゴールを守ることも一流ですし、西川周作選手と言えばキックの精度もあると思います。

「周作、ここにくれ!」と言ったら全く動かなくてもそこにボールが送られてくるので、キックの質はすごいと感じていました。

 僕たちが前からプレッシングに行って背後にボールを蹴られた時でも、西川選手はDFの後ろの広大なスペースを幅広くカバーしてくれるので、DFのメンタルにとってもすごく大きな助けになりました。

 人間性もすばらしいです。「俺が後ろにいるから大丈夫だよ。思いきってプレーしろよ」と、味方を前向きにできるマインドを持っています。そういう言葉を掛けられるとより信頼関係も生まれますし、自分も思いきってチャレンジできますよね。

【3バックはやはり攻撃的】

3バック左 槙野智章(元サンフレッチェ広島、浦和レッズほか)

 後ろから攻撃参加できるプレーヤーの基準として選びました。マキはゴールも奪えるし、ドリブルで後ろから相手を剥がしていくこともできるプレーヤーなので、チームに欠かせないと思っています。高校生の時から一緒にプレーしていましたが、守備では抜かれているシーンを全く見たことがないくらい、1対1の能力はすごかったです。チームを盛り上げるムードメーカーとしても外せません。

 年齢は僕のほうが一つ上ですが、僕のことを同級生か後輩に思っているくらい距離が近い。でも、いい人間関係を築けています。僕もマキがいると安心するので、彼の存在はチームの中で大きいです。

3バック中央 森重真人(FC東京

(田中マルクス)闘莉王さんと迷いましたが、槙野も攻撃が好きでガンガン上がりますし、闘莉王さんを入れると3バックがみんな上がってDFラインに人がいなくなる可能性もあるので(笑)、トータル的なバランスで森重選手を選びました。1対1の能力が抜群に高いですし、空中戦にも強い。槙野同様、1対1で抜かれている場面をほぼ見たことがないので、Jリーグを代表するトップクラスのDFだと思います。

 攻撃ではボールを持ち運べますし、後方から鋭いパスを前線に供給できます。僕が理想としているのは後ろからリスクを冒したパスを出せることで、自分のイメージと森重選手がまさにリンクしています。体も強いんです。おそらく多くのFWが「抜けた」と思っても腕だけで抑えられて「前に行けない」というシーンが多くあったと思います。

3バック右 塩谷司(サンフレッチェ広島)

 1対1の能力も感じますし攻撃力も高くて、タイミングを見て後ろからボールを持ち運べるのが塩谷選手のよさですね。さらにシュートの威力がすごい。衝撃的だったのは、川崎(フロンターレ)戦かな。ペナルティーエリアの近くで広島がフリーキックを獲得して、シオがボールをセットしてシュートを打ったんですけど、GKの立っている同サイドに弾丸キャノンを打って、GKはもちろん取れませんでした。そのシーンを見た時に何という化け物だと感じました。

 また、遠くを見られるのも塩谷選手のいいところです。だいたいDFはボランチや同サイドのウイングを見がちですが、塩谷選手は逆サイドや最前線のFWまで見て、相手DFにとって何が一番怖いかをわかっている。8月16日のガンバ大阪戦でも中村草太選手にピンポイントでボールを送っていましたけど、あのパスを出せるのが塩谷選手です。

【対戦相手として本当に嫌でした】

ボランチ 遠藤保仁(元ガンバ大阪、ジュビロ磐田ほか)

 見えているところが異次元です。また、見えていたとしてもそこにピンポイントでボールを送ることはなかなかできないけど、それができるのがヤットさんです。例えばアウト回転を掛けたり、バックスピンを掛けてFWがたどり着くための空間を作るとか、抜群にうまかったですね。僕が監督になったら欠かせない選手です。少ないタッチ数でプレーしたい理想を持っているので、ヤットさんは特別な存在になります。

 怖がらずにボールを受けられるのもチームの安心感になります。ヤットさんがパスコースに顔を出してくれることでDFも安心して預けられますし、相手がコースを締めた時にはDFは自分で持ち運ぶこともできる。多くの選手の選択肢を広げてくれるんです。僕がヤットさんについて語るのは恐れ多いですけど(笑)、一緒に長くプレーしてみたかったという思いはあります。

ボランチ 中村憲剛(元川崎フロンターレ

 憲剛さんも驚きでした。

何がすごいかと言ったら、憲剛さんは味方のFWを見ていなくて僕はDFでその相手をマークしているので、「ボールは出てこないな、大丈夫だな」と違う選手にコーチングしていた時にボールが出てきたりするんです。「いつ見てたの!?」みたいな。そういう感覚になった選手はなかなかいないですね。

 対戦相手として本当に嫌でした。特に嫌だと感じていたのは、背後へのボールですね。ピンポイントで落ちてくるか、クリアできるボールでも120パーセントの力でやらないとクリアできないコースに出してくる。DFとしては120パーセントの力でのクリアを繰り返せば、90分戦うなかでボディーブローのように体力が削られるので、試合終盤にそれをやられた時には「勘弁してください、憲剛さん」という感覚になっていました。

 ボランチにこのおふたりを選んだのは、ヤットさんがどちらかと言えば後ろをオーガナイズしてボールを引き出しながら、憲剛さんはより前で絡んでいくということで。

右ウイングバック 駒野友一(元サンフレッチェ広島、ジュビロ磐田ほか)

 クロスの精度がピカイチですね。駒野さんを抜くクロッサーを僕は見たことがない。運動量も多いし、攻撃にも関われて得点も奪える。守備でも1対1で抜かれるシーンをほとんど見たことがない。

攻撃的な3バックにするうえでサイドの1対1は非常に重要になってくるという意味でも、駒野さんを選ばせてもらいました。

 駒野さんは、高い位置に行った時に個人でも仕掛けて突破してクロスをあげられる選手ですが、チームとしての動きやコンビネーションもできる。一度でいいので、駒野さんと同じ右サイドで組みたかったと思っています。コマちゃんは「お前とはいいよ」って言われると思いますけど(笑)。

左ウイングバック 長友佑都(FC東京)

 僕と同い年で現役バリバリ、日本代表でもある長友佑都選手を選びました。僕と同じ39歳であれだけ走れて闘えるのは本当にすごいと感じます。プレーヤーとしても、人としてもすべてを兼ね備えている、スーパー・スーパープレイヤーです。

 プレー面では特に、左サイドを上下動して制圧できる運動量が一番の魅力だと思っています。攻撃にも絡んでいけて、クロスもピンポイントであげられるよさがありますし、DFとしても1対1のバトルで気持ちを出して闘うのはすばらしいところだと感じています。

 彼はエネルギーを体中で表現できるので、チームに大きなエネルギーを与えられます。味方を鼓舞することによって莫大なパワーを引き出せる。槙野同様、長友選手は僕の最強ベストイレブンでは外せない選手です。

【1トップは別格だったあの選手】

右シャドー 柏木陽介(元サンフレッチェ広島、浦和レッズほか)

 まずシャドーの2枚を選んだ基準がありまして、攻める方向から見て右は左利きの選手、左には右利きの選手を置きたいと。コンビネーションができやすいのでそのように選びました。

 陽介は「走るファンタジスタ」と言われるくらい走れる選手なので、2列目から相手の背後に飛び出してプレーできますし、後ろが停滞していたら中盤に下りてパサーとしてチームのつなぎ役もできます。

 パスも出せる、シュートも打てるというところで、いまの選手にもなかなかいないと思うくらいすべてのクオリティが高い選手です。また、彼のよさはワンタッチでプレーできること。ボールが来る前に状況をしっかり把握しているので、ワンタッチでコンビネーションを引き出したり、ワンタッチでスルーパスを出したり、ワンタッチで決定的なシーンを作れます。相手にとって守りづらいプレーをできるのが陽介です。

左シャドー 小野伸二(元浦和レッズ、清水エスパルスほか)

 伸二さんの全盛期に対戦したことは残念ながらありませんが、伸二さんのトリッキーなプレー、想像を超えるプレーはシャドーで見てみたい思いで選びました。動けて、パスも出せて、シュートも打てて、陽介同様、危険なシーンを多く作れるのが特長だと思います。

 伸二さんは対応が難しい浮いているくさびのパスとかをDFが入れたとしても、いとも簡単にプレーしちゃうんじゃないかなと。こちらのミスをミスじゃなくしてくれるところはすごさですよね。陽介同様、ボールが来る前に状況判断ができるので、ワンタッチのコンビネーションは持ってこいなんじゃないかと。選手も予測できない、見に来ているお客さんも予測できないシーンをたくさん見せてくれていましたよね。

1トップ 興梠慎三(元鹿島アントラーズ、浦和レッズほか)

 僕はこの選手しかいないと思いました。慎三は別格でした。スピードもあって、バネもあって、シュートセンスもあって、ポストプレーもできて、パスも出せる。サッカー選手に必要な全ての要素を持っているFWは彼しかいないと思っています。

 浦和レッズで慎三と初めて一緒にプレーしましたが、僕の幅も広がりました。くさびのパスを打つ時にどれだけ狭い局面でも無理やり通せば、慎三が収めてくれてビッグチャンスになる。とんでもないパスを送ったとしても慎三なら収めてくれる。そういう意味でプレーの幅を広げてもらいました。

 得点能力もすごいですし、シュートのバリエーションも豊富。慎三ほどのバリエーションを持っているストライカーはなかなかいないと思います。ゴール前の落ち着きはすごいです。

 他のスポーツもすごいし、ジュースをどちらが奢るかを決めるじゃんけんもめちゃめちゃ強い。ご飯に行った時に「たまには男気じゃんけんやろうよ」って、勝ったほうが奢ることになると、だいたい負けるんですよ。めちゃめちゃ勝負強いですね。

森脇良太のJリーグ最強ベストイレブン「外せない」「対戦相手として本当に嫌だった」選手たち
森脇良太氏が選んだJリーグ最強ベストイレブン
>>後編「森脇良太が選ぶ対戦して嫌だったFWトップ10」につづく

森脇良太 
もりわき・りょうた/1986年4月6日生まれ。広島県福山市出身。サンフレッチェ広島ユースから2005年にトップチームに昇格。途中、愛媛FCへ1シーズンのレンタルを経て、広島では2012年までプレー。2013~19年は浦和レッズでプレー。以降、京都サンガF.C.、愛媛FCでプレーし、2024シーズンを最後に現役引退。攻撃的なセンターバック、サイドバックとして活躍。明るいキャラクターのムードメーカーで人気を博した。現在は「愛媛FCポジティブエナジャイザー」として活動するほか、指導者、解説者としても活躍中。

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